宮城県内の県立学校に勤めていた30代の女性教師が、59歳の男性教師からのパワハラを受け自殺した問題で、3月13日、女性教師の両親が初めて記者会見を開いた。「娘は絶望したと思う」涙ながらにそう話す両親は、今も深い悲しみの中にいる。

手紙が無ければ死ななかった…

娘の自殺から3年5カ月が経ち、初めて会見を開いた女性教師の両親。父親は「学校が大好きだった娘は、メモを読んで絶望したと思います。この手紙が無ければ娘は死ななかったと思っています」と言葉を詰まらせた。

会見に臨んだ両親
会見に臨んだ両親
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続けて母親も「なぜこんなことが起こってしまったのだろう。そういう気持ちだけで今まで3年半いました」と、今も深い悲しみの中にいることを打ち明けた。

処分は停職3カ月「娘に問題があるのか…」

県教委は2024年2月、男性教師に対し停職3カ月の懲戒処分を出した。

この処分について県教委は、「県教委が定める懲戒基準や他県の事例を参考にした」と説明するが、父親は「娘に問題があったという捉え方をしないといけないのかなと、遺憾に思っています」と肩を落とす。

今回の会見では、県教委が女性教師の自殺から5カ月後の2021年3月、遺族に対し、「事故報告書の原案」を示していたことも明らかになった。

しかし、その内容は2017年の採用以来、女性教師の性格に関わる欠点の出来事を、書き連ねるものだったという。

女性教師の似顔絵が描かれた学級通信
女性教師の似顔絵が描かれた学級通信

「読んだ時にあぜんというか、声が出なかった」と振り返る父親。「同僚の先生からは勤務経験の少なさを除き、意欲・向上心・学習に対する指導力・事務処理能力など、他の職員と比べても遜色ないものだったと伺っている」と訴えた。

「正直イライラする」明かされた手紙の内容

会見では男性教師が女性教師に出した手紙の一部も公開された。

男性教師が女性教師に出した手紙の一部
男性教師が女性教師に出した手紙の一部

そこには「先生が仕事にいくつも穴を空け、その代わりに私が仕事をしました。そのことに関しても何の礼も謝罪もなく…。(中略)どれだけ私の顔に泥を塗ったら気が済むのですか?」や、「私は先生のことが本当に分かりません。私にはこのような態度をとっておいて他の方には普通に接していることも本当に謎です。正直イライラします」などの記載が。

男性教師が女性教師に出した手紙の一部
男性教師が女性教師に出した手紙の一部

ほかにも「恩知らず」「失礼」「不快」などの言葉が並んだ手紙に、女性が心理的負担を感じたことは想像に難しくないだろう。

遺族「真相究明と再発防止を」

会見の中で遺族は「今求めること」を問われ、「真相の究明と再発防止」を挙げた。

遺族側によると女性教師が勤務していた高校では、複数の教師がパワハラ行為の状況を教頭に伝えていたという。それでも教員たちに「あまり関わるな」などと話したといい、こうした対応が自殺につながったと指摘する。

父親
父親

父親は「再発防止を考える上で、一番大切なことは何があったのか、どんなことが起きたのか真実が明らかになること。なぜ(パワハラ)行為が止められなかったのか。現時点でその事実認定がしっかりなされているとは思えないので、ぜひしっかり事実認定してほしい」と訴えた。

県教委「懲戒基準」に免職追加へ

県教委は遺族の会見の翌日に開かれた定例会で委員に対し、パワハラの懲戒基準に「免職」を加えることを説明した。

県教委の「教職員に対する懲戒処分原案の基準」
県教委の「教職員に対する懲戒処分原案の基準」

免職の基準は「悪質性の高い行為」とし、その例として「指導や注意などを受けたにも関わらず、パワハラ行為を繰り返す場合」、「強度の心的ストレスにより精神疾患に罹患(りかん)させた場合」などを挙げた。

このほかにも県教委は、電話やメールで教職員からの相談を受け付ける「教職員SOS相談窓口」の設置や、教員を対象としたアンケート調査や研修の充実も表明。

「再発防止に向けて組織的な体制を構築する」と話す県教委の今後の対応に注目が集まる。

(仙台放送)

仙台放送
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