京都大学医学部附属病院は4日、難病に苦しむ10歳未満の男児に対して、父親と母親から肺を、祖父から肝臓を移植する「生体肺肝同時移植手術」を世界で初めて実施し、成功したと発表した。
患者は関東地区に住む10歳未満の男児で、皮膚、粘膜、神経系、肺、肝臓など全身の臓器の異常などをともなう先天性疾患である「先天性角化不全症」の患者だという。
臓器提供者は40歳代の父と母、60歳代の祖父で、父は右肺の一部、母や左肺の一部、祖父は肝臓の一部を提供した。
2023年11月に実施された手術は、3人のドナーと1人の患者の、合わせて4つの手術室を使うもので、最初に生体肺移植を行い、続いて生体肝移植を実施したという。
呼吸器外科、肝胆膵・移植外科及び小児外科に加えて心臓血管外科、麻酔科、手術部、臨床工学技士など約30名のスタッフが協力し、18時間11分で無事終了。術後の管理も乗り切り、酸素療法なしで歩行できるまでになり、男児は3月1日、退院したという。
臓器を提供した親族3人も、すでに社会復帰している。
男児の両親は、「今回は息子の肺肝同時生体移植をご提案くださり、本当にありがとうございました。当初はもう打つ手がないものと絶望的な気持ちでしたが、京大病院にも様々なリスクがある中で、今回の提案をしてくださったことが私たち家族にとっては唯一の希望でした。京大病院の医師の皆様のおかげで手術が無事成功に終わり、その後の治療もICUや小児病棟の皆様の献身的なサポートで順調に回復することができました。改めて皆様に感謝申し上げます。最後に、今回の移植の例を機に、これまで移植を諦めるしかなく、何もできないもどかしさや絶望感を抱えている患者さんや親族の方の一筋の光になれば嬉しいと考えております。本当にありがとうございました」とコメントしている。
(写真は退院する男児と両親 提供:京都大学医学部附属病院)