ロシアで反体制指導者ナワリヌイ氏の死後、彼の「告別式」会場が見つからず、準備が難航している。
葬儀会社からは「協力禁止」の通達があるなど、当局による妨害が疑われる。
また、ナワリヌイ氏の弁護士が一時拘束されるなど、反体制派への圧力が強まっている。
告別式会場が見つからず
ロシアの刑務所で死亡した反体制指導者ナワリヌイ氏の広報担当者は27日、「告別式」の会場を探しているものの、見つからないと明かした。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/a/700mw/img_7a83aa7b0be3b33cdc038eba79a7155d237261.jpg)
ナワリヌイ氏の陣営によると、今週末までに実施するとしていた「告別式」の会場を探しているものの、葬儀会社から「協力を禁じられている」と告げられるなどしていて、準備が難航しているという。
抗議活動の拡大を警戒し、当局が妨害している可能性もある。
こうした中、ロシアメディアはナワリヌイ氏の遺体の引き渡しに同行した弁護士のワシリー・ドゥブコフ氏が、ロシア当局に一時拘束されたと報じた。
ドゥブコフ氏は釈放されたあと、ロシアメディアの取材に応じ、「弁護士活動の妨害と考えている」と非難している。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/4/700mw/img_944416d1f807e226c35cbc69da1e963d322610.jpg)
ここからはフジテレビ・立石修取材センター室長がお伝えする。
ナワリヌイ氏の死後、その周辺では今もなお、締めつけともとれる状況が続いている。
ナワリヌイ氏の周辺では、さまざまなことが起きており、ロシア当局の関与も濃厚とみられている。
その実態を見ていく。
まず、いまだナワリヌイ氏の告別式会場が見つかっていないという問題だ。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/8/700mw/img_38c40ae8b4633e47dc4329cc3569f55e382033.jpg)
妻のユリアさんは、24日に公開した動画で「人間的な方法で夫の葬儀を行いたい」と強く訴えていた。
ナワリヌイ氏の支持者らによると、公営・民間かかわらず、ほとんどすべての葬儀所で断られていて、ナワリヌイの名前を出しただけで断られるところもあるという。
ロシア各地では、市民らが献花台などを作っているのだが、当局が献花台の花を撤去する姿も見られる。
さらに、集まってきた支持者などを警察や当局が強制的に排除している様子も見られ、告別式も同様に、当局から圧力がかかっている可能性は十分あると思われる。
人権団体幹部が実刑判決
さらに、反プーチンの姿勢をとる人々への締めつけも強まっている。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/2/700mw/img_52e41efee2c128132509b8f37547b17c316648.jpg)
27日、政権批判を繰り返してきたロシアの活動家で、ノーベル平和賞を受賞した人権団体幹部のオレグ・オルロフ氏に実刑判決が下された。
その際にモスクワの裁判所で撮影された映像では、布で半分顔を隠した黒服の警察官らが、オルロフ氏に手錠をかけていた。
隣にいる奥さんとみられる女性が、不安そうな表情で見守っている。
その後、物々しい雰囲気でオルロフ氏が連行されていった。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/3/700mw/img_93feef1f3ec0ee498a630d12598a53d2373149.jpg)
もともとオルロフ氏は、ウクライナ戦争を批判して「ロシア軍の信用を傷つけた」として逮捕され、罰金刑を受けていた。
しかし、検察側が「量刑が軽すぎる」と申し立てると再審が命じられ、その結果「懲役2年半の実刑判決」が下された。
実はオルロフ氏は、ナワリヌイ氏が死亡した翌日も抗議活動を行い、「彼の死は自分たちすべての死だ」と、ナワリヌイ氏を支持するメッセージを送っていた。
こういった背景がある中で、ロシア当局から厳しい判決が下された。
どの刑務所に送られるかはわかっていないが、ナワリヌイ氏も獄中死しているため、オルロフ氏の今後も懸念される。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/3/700mw/img_e3feb9113179fc89c8febd44fe057d52465479.jpg)
反プーチンの急先鋒だったナワリヌイ氏は死亡し、政権批判すると即逮捕。そして実刑につながる状態。
ロシアでの言論の自由はさらに厳しい状況だ。
プーチン政権は、メディアの「表現の自由」にも強い規制をかけている。
ナワリヌイ氏が亡くなったあと、モスクワに編集部を置く「ソベセドニク」という新聞は、ナワリヌイ氏を表紙に使い、「しかし希望はある」とのタイトルで2ページの特集を組んでいた。
発行部数は約5万部だ。
しかし、オレグ・ロルドゥギン編集長によると、モスクワ市内の新聞販売店に並べられた直後に、ほぼすべてのソベセドニク紙が、ロシア当局に押収されたという。
ロルドゥギン編集長は、「いかなる法的根拠もない」と強く反発している。
政治犯の粛清に着手するおそれ
── これらの動きは、3月の大統領選をにらんで、言論統制を厳しくしているということなのだろうか?
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/0/8/700mw/img_08aa1172315a61be2902b1e28773cda0330009.jpg)
その点に関して、26日にスイス・ジュネーブで行われた国連の人権理事会で、気になる発言があった。
反プーチン派で、2023年もノーベル平和賞の候補として名前が上がった政治活動家、スベトラーナ・チハノフスカヤさんが、理事会後の取材で「ナワリヌイ氏の死によって、ほかの政治犯の殺害にも青信号、つまりゴーサインが出ているとみるべき」と話している。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/3/c/700mw/img_3c6905a8281b067539132a028043156e358572.jpg)
つまり、反プーチンの象徴が死んだことで、単なる選挙対策を超えて、これからプーチン氏側が次々と政治犯の粛清に着手するおそれを指摘している。
ナワリヌイ氏の妻であるユリアさんの所在については、詳細は明らかにされていないが、ロシアの監視の対象になっていると考えられる。
おそらく西側諸国で警護の対象になっていると思われるが、家族や支持者を含め、警備や警戒が必要な状況だ。
スウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)加入など、世界的にロシアへの圧力が強まっている。
生前、ナワリヌイ氏が「彼らが私を殺すと決めたならば、それは私たちが強いということ」と述べていた。
今は押さえつけられているが、これらの動きが大きなうねりとなる可能性がある。
(「イット!」 2月28日放送より)