2023年、5万1000人が訪れた「奥能登国際芸術祭」。石川・珠洲市に置かれた常設作品も地震の被害を受ける中、芸術祭に参加したアーティストたちが今、できることを模索している。
地震の爪痕残る珠洲市
最果ての地、珠洲で2017年から定期的に開催されている「奥能登国際芸術祭」。
3回目となった2023年は、14の国と地域から過去最多となる59組のアーティストが参加し、奥能登の魅力を引き出す様々なアートが訪れた人を楽しませた。
しかし、1月1日に発生した地震や津波により、珠洲市では住宅や道路に甚大な被害が出ている。
2023年秋の芸術祭終了後に常設された作品も例外ではなく、24の常設展示のうち13作品に破損などの被害が確認された。スズ・シアター・ミュージアムのある大谷地区では地面が崩れ、芸術祭の作品が数十メートル下に落ちてしまっていた。
こうした中、芸術祭に参加したアーティストたちが今、できることを模索している。
東京拠点のアーティストも支援
2023年の芸術祭に参加したアーティストの一人、弓指寛治さん。
東京を拠点に活動している弓指さんは、「個人的に寄付をしても大した金額にならない。なにかできることがないかなって考えたときに、珠洲で2023年に発表した作品を販売して、売り上げの一部を寄付するっていう形にできるんじゃないかと」と話す。
弓指さんは、珠洲で生まれ満蒙開拓団として満州に渡った南方寳作(なんぽうほうさく)さんの物語を作品にした「プレイス・ビヨンド」や、珠洲の人々から思い出を聞き取り、描いたイラストを地元の人がランチョンマットにした作品も作った。
2023年9月のインタビューで、弓指さんは「最初は(オファーの)メールをいただいた時に、珠洲って漢字さえ読めなかった。検索するところから始まって、初めて芸術祭を通して自分の行ったことがなかった地域とつながりを持てるようになる。これが芸術祭のいいところだと思う」と語っていた。
弓指さんは今、芸術祭の作品をオンラインで販売し、売り上げの一部を珠洲市に寄付しようという取り組みを行っている。
芸術家・弓指寛治さん:
被災地になった場所に想像力を働かすことができるかって、訪れたことがあるかで変わると思うんです。芸術祭に行ったことで、なにかしたいって思うようになるのは自然な流れだと思う。よそ者だからできることがあると思うので、そういうことをやりたい
人と人とのつながりが力に
人口減少が進む珠洲市を活気づけようと始まった「奥能登国際芸術祭」。
地元のボランティア:
とてもすてきな街並みもありますので、そこもご堪能してください
アーティストだけではなく、地元の人がいてこその芸術祭となっていた。
地元のボランティア:
なにか自分たちもしたいという思いがあった。私たちがサポーターとして支援することが、市の事業を血の通ったものにしていくのかな
作品づくりにも珠洲の人々が深く関わっている。金沢市を拠点に活動する家具デザイナーの原嶋亮輔さんは、珠洲の人々が使っていた古道具や農具を提供してもらい、作品にした。
原嶋さんは、「(作品に使われている)“そり”は芸術祭の会場になった若山地区っていう村の方々の蔵から出していただいた」「芸術祭の時も、地域一丸となって会場を盛り上げてくれて、(展示会場の)掃除をしたりとか、掃除のあとにみんなで炊き出しをしてご飯を食べたりとか、僕の一つの帰る場所としてできた場所だなって」などと語った。
原嶋さんも金沢市内で開いている展覧会の売り上げを一部寄付するほか、オンラインで販売する商品からも売り上げの一部を寄付しようと考えている。
デザイナー・原嶋亮輔さん:
一過性のものじゃなくて、いろいろな形で発信し続けることが大事だと思うので、自分のライフワークの一環として、こういう関わり方を続けていけたらな
1万5000人足らずの最果ての街に5万1000人もの人が訪れた「奥能登国際芸術祭」。芸術祭による人と人とのつながりが、復興への背中を押す力となるかもしれない。
(石川テレビ)