避難所で起きた毎日のことをSNSで発信する大学生がいる。タイトルは「避難所のリアル」。そこに込めた思いを聞いた。
始めたきっかけは“震災経験者の言葉”
「避難所生活26日目。物資を片付ける棚作成!支援物資綺麗に片付きました」
「夜の避難所の様子です…夜間もずっとストーブがたかれていて、とても暖かいです。ちなみに、灯油はこの量が2日で無くなってしまいます」

石川・七尾市の田鶴浜体育館で父親と母親で避難生活を送っている北陸大学の4年生の中村斗星(とし)さんは、避難所の様子をTikTokやインスタグラムといったSNSで発信している。

中村斗星さん:
最初はストーブとか設置されなくて寒い日が続いたんですけど、今ではストーブを3つつけていただいて、暖かく快適に過ごしています

中村さんの家は元日の地震で外壁が崩れ、家族全員が避難。地震から2カ月近くたった今も避難所生活を続けていて、帰るめどはたっていない。そんな中村さんが発信を始めたきっかけは、こんな会話からだった。

中村斗星さん:
支援者の中で実際に阪神淡路大震災を経験した方がいて、本当に苦しい時に思ったような支援が受けられなかったと聞いた
29年前の1月に起きた阪神淡路大震災。兵庫県を中心に死者6,434人、全壊した住宅は10万4,000棟余りと甚大な被害をもたらした。しかし数カ月が経過すると、メディアが震災を取り上げる機会が減ったという。

その話を聞いた中村さんは、“能登に関心を持ち続けてほしい”と、ほぼ毎日発信することを決めた。より多くの人に現状を知ってもらうために「避難所のリアル」を伝え続けている。
コミュニケーションや言葉選びを大切に
「地震で転がっていたお地蔵様を誰かが直してくれ、笠(かさ)がかけられていた」という話を避難所で聞いた中村さんは、SNSへの投稿のために田鶴浜地区の中心部を訪れた。

近所の住民は「こういうのをしてくれて、気持ちが落ち着いた」と振り返る。住民との対話を大切にする中村さん、そこには中村さんなりの考えがあった。

中村斗星さん:
自分の思っていることと他人が思っていることはギャップがあると思っているので、そこをできるだけ縮めたいから、より多くの意見を聞きたい
避難所となっている体育館に戻った中村さんは、さっそく投稿の準備を進める。

中村斗星さん:
TikTokで「寂しい」みたいな表現をしたんですよ。人が減って寂しいって。それに対して「復興に進んでるのに寂しいっていうのはおかしいんじゃない?」みたいなコメントがあった。言葉の選び方には敏感になっていますね

「田鶴浜から県外に出て行っている学生とかも多いと思う。そういう方にも届いたら。自分も田鶴浜を守りたいって思う人が増えたら」、そんな思いも込めて投稿した。
「震災への関心は今も少しずつ減っている」
避難所の人たちも中村さんの活動を応援している。

避難所運営を手伝う金沢武士団・原島敬之アドバイザー:
避難所がどんなことをしているかをいろんな人に知ってもらうきっかけになるので、大変助かっています

同じ避難所で生活を送る人:
みんなからボランティアと勘違いされるくらい動いてくれるんで、いろいろやってくれている。避難所では「こういうことをやっていますよ」というのを一番伝えたいというのがあるので
能登半島地震の発生から、まもなく2カ月。能登を忘れてほしくないと思って活動しているが、「震災への関心は、今も少しずつ減っているのは感じ取れる部分はある」と話す。

中村斗星さん:
本当に困ったときに、支援をいただけるようなプラットフォームにならなくてはいけないのかな
大学生が発信する「被災者のリアル」。全国に支援の輪を呼びかけている。
(石川テレビ)