EBCライブニュース「きょうの俳句」のコーナーでは、視聴者から俳句を募集し紹介している。2023年は前回(6,603句)の約1.3倍、過去最多の8,342句が寄せられた。この中から、年間大賞を発表する。

俳句のバリエーションが増えている

審査したのは、愛媛・松山市出身で、現在東京で活動する若手俳人のトップランナー、神野紗希さん。寄せられた作品全体について話を聞いた。

東京で活動する若手俳人のトップランナー、神野紗希さん
東京で活動する若手俳人のトップランナー、神野紗希さん
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俳人・神野紗希さん:
本当に幅の広い作品が寄せられています。俳句にもいろいろなタイプの俳句があって、伝統的な型や季語や切れなどを大事にしたものから、今の私たちの生活や言葉遣い、現代のいろいろなものを読み込んだものまで、本当にたくさんのタイプの句があり、バリエーションがどんどん増えてきています

祖父母が届けてくれる「甘夏」

「ジュニア大賞」に選ばれたのは、伊予市立伊予小学校3年、洲尾瞭大郎さんの句。

甘夏を しぼってかけた かき氷

洲尾さんに話を聞いた。

どのようなときに詠まれたのか?
どのようなときに詠まれたのか?

伊予市立伊予小学校3年・洲尾瞭大郎さん:
とてもうれしかったです。甘夏をそのままシロップにしてかき氷にかけてみようって時にこの句を思いつきました

受賞のポイントを神野紗希さんに聞いた。

「かける」ではなく「かけた」と過去形を使ったことで…
「かける」ではなく「かけた」と過去形を使ったことで…

俳人・神野紗希さん:
暮らしの中で挑戦してみたこと、オリジナルな体験を詠んだことで、たくさんあるかき氷の句の中でも、他に類を見ない輝くフレッシュな句になっています。「かける」ではなく「かけた」と過去形を使ったことで、今できあがった、さあこれから食べようという瞬間が浮かびます

甘夏は、大洲市長浜でかんきつを栽培する祖父母がよく届けてくれるようで、洲尾瞭大郎さんの周りはかんきつでいっぱいだ。

「その風景を思い浮かべられるような」

俳句を始めたきっかけは「きょうの俳句のコーナー」だという。

伊予市立伊予小学校3年・洲尾瞭大郎さん:
テレビ愛媛のきょうの俳句のコーナーで、1年生の時に、小学生の俳句が募集されていると聞いて、やってみたいって出しました

そして、いま一番頑張っているのが、1年ほど前から始めた「空手」だ。自宅でもお父さんに付き合ってもらい練習に励んでいる。

伊予市立伊予小学校3年・洲尾瞭大郎さん:
空手で3連勝したいです。ミット打ちを頑張ったり、筋トレを頑張りたいです

様々なことに挑戦している洲尾さんは「見た人がその風景を思い浮かべられるような俳句にしたい」と語り、これからも俳句を作っていきたいと話す。

戦争が奪う日常を考え生まれた句

そして「年間大賞」に選ばれたのが、松山市三津浜地区に住む杉野圭志さんの句。

人類に 短き平和 短き夜

「まさか自分の俳句が選ばれるなんてことは夢にも思わなかった」と話す杉野さん。この句について話を聞いた。

作品が「年間大賞」を受賞 杉野圭志さん
作品が「年間大賞」を受賞 杉野圭志さん

杉野圭志さん:
ウクライナとロシアの戦争があって、その情報がすごく身近に感じられる状況で、僕は布団の中で平和にのんきに俳句を詠んでいるわけですよ。戦争が始まってしまうと、日常や生活が一瞬にして奪い去られるかもしれない。不安や恐怖があってこの俳句が生まれたのかなと思います

「短い夜」と「長い闇」の対比

「時代をきっかけに人間を見つめるという、とても大きなテーマに挑戦してくださった句だ」と総評する神野紗希さん。受賞のポイントを解説した。

俳人・神野紗希さん:
夜が短いので、焦燥感やすぐに明けてしまうはかなさなどが「短夜」という季語の本意にあります。その短き夜という言葉に重ねて、リフレインして「短き平和」という言葉を置いた。世界ではたくさん平和ではない国があって、日本の平和は長い平和かというと、もしかするとこれも短い平和なのかもしれない。戦争がまた起こってよいのか、どうするべきか、人間全体に呼びかけている

詠んだ俳句は、妻・祐子さんとのLINEグループに打ち込んでいるという杉野圭志さん。この句はまさに夏の短い夜に浮かんだ句だった。

杉野圭志さん:
朝の4時48分から俳句を考えて打っている。そこから徐々に俳句を作っていく中で、最後にたどり着いたのが「戦争」というのは長い闇なんじゃないかという、短い夜と長い闇の対比ができると思って、短夜と戦争という長き闇を作った後、6時5分に「人類に 短き平和 短き夜」というのができました。ここで一気に短き短きと重ねた方が、俳句としてよりいいんじゃないかと思ったんです

なんと…夫婦で“ダブル受賞”

杉野さんは20年ほど北海道で暮らし、8年前に生まれ育った松山に帰ってきた。そのとき、妻・祐子さんが俳句を始め、賞を取ったことで火が付いた。

杉野圭志さん:
僕は松山出身なんでちょっと悔しいというか、なんかすごく微妙な感情になって。それで妻が俳句のイベントに出るようになって、僕もそれにくっついていくようになった

妻・祐子さんも今回、年間優秀賞を受賞。夫婦でダブル受賞となった。

妻・祐子さん:
夫婦で恥ずかしいような、うれしいような。でも、2人で家の中で盛り上がりました

杉野さんが今考えているのは「四国遍路」だといい、「お遍路を巡って夫婦で俳句を作るのが夢」だと語った。

このほか、松山市長賞、神野紗希賞、優勝賞が決定している。受賞者と受賞作品はテレビ愛媛のホームページに掲載している。

(テレビ愛媛)

テレビ愛媛
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