能登半島地震から4週間が経った。体の不自由な入所者も多く、避難には相当な労力を要する高齢者施設。被災後の断水に、拡大する感染症…綱渡りの運営から元通りの日常を目指し、模索する日々が続いている。
水は底を尽きる寸前 緊急事態に

能登半島地震で震度5強に見舞われた、氷見市にある高齢者施設「アルカディア氷見」。
85人が入所している。
発災から4日後の1月5日に取材したとき、建物の一部はひび割れ、隙間があいているところがあった。


アルカディア氷見 看護師長 永森敏子さん:
「足、かなり危ないですよ。これは危険なので、裸で入るにはかなり危険です。利用者様の安全考えたら、やはりここで入浴して頂くのはちょっと危険かな、やめたいと思います」
地震による損傷は入所者の部屋にもみられ、入所者はそれぞれの部屋に入れず、ホールに集まって生活をしていた。

入所者:
「我慢しとらんならん」
「風呂入りたいと思って願っております」
アルカディア氷見 看護師長 永森敏子さん:
「これは緊急事態だと思います。ストレスがたまったら免疫力落ちるんです。そこを私たちが一番心配しているところで、一気に病気が悪化したりということが考えられるので、そこに不安があります」

断水が続く中、水は地震から3日後に始まった給水が頼りに。
施設で確保していた3日分の水は底を尽きる寸前。綱渡りの運営だった。
この取材の翌日、施設で新型コロナの陽性者が確認され、その後、入所者6人、職員3人が感染した。
アルカディア氷見 看護師長 永森敏子さん:
「職員のストレスと疲労困憊のところにコロナが入ったということで、震災プラスコロナの対策で、みんな疲れている。精神的にも肉体的にも参っているいうことが私的にも不安でした」
輪島市から孫を頼り2次避難
感染症の拡大が落ち着いた1月18日。
施設には、石川県から身を寄せる人の姿があった。

石川県輪島市の自宅で被災した、常林坊清さん。軽度の認知症を患っている。
この施設で理学療法士として働く孫の紘也さんを頼って、2次避難してきた。
清さんは輪島市で被災した後、自宅の隣にある鉄骨の車庫に近所の人と身を寄せ合っていたという。
アルカディア氷見 理学療法士 常林坊紘也さん:
「向こうにいたときはイスに座りっぱなし。足とかもパンパンだったのでエコノミー症候群とか心配だったんですけど、ここに連れてきてよかった。なかなか復旧が進まない中でできるだけ早く復旧して元通りの町に戻ってほしい」

地震から3週間近くが経ち、タイルの破片が散乱していた風呂場では、中止していた入浴を再開した。
タイルの破片が落ちる危険はぬぐえなかったが、これ以上、入所者のストレスをためるわけにはいかないと、やむを得ず判断した。
元に戻って良いケアを提供したい

1月23日。
アルカディア氷見では、今回の地震を今後の災害対応に活かそうと、会議が開かれ、水の備蓄を増やすなど、備えを強化することにした。

アルカディア氷見 介護主任 瀬口純子さん:
「備蓄があるようで、色々なところにものが分散してとりにいくのが大変だったり、実際起きたからこそ、今後に活かせることはたくさんある」
あの日から4週間。
元通りの日常を目指し、模索する日々が続いている。
アルカディア氷見 看護師長 永森敏子さん:
「まだまだ(復旧は)先のことなんだろうなという不安はあります。ただいつかは絶対にまたもとに戻りたい、戻ってみなさんに良いケアを提供したいと考えております」
(富山テレビ)