政府は25日、能登半島地震の被災地支援パッケージをとりまとめ、観光支援の「北陸応援割」が盛り込まれた。地震で打撃を受けた富山県の観光地から期待の声があがる一方、SNSで富山の冬の味覚「氷見寒ぶり」が話題に。傷んだ観光地を想う支援の輪が広がっている。

3億円以上の大打撃

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北陸の観光地に大きな被害をもたらした能登半島地震。

発生から3週間以上が経つが、比較的被害が少なかった富山県の観光地も観光客が激減している。

年間30万人の観光客が訪れる県内最大の温泉街、宇奈月温泉の老舗旅館「延楽」もそのひとつだ。

宇奈月温泉かたかご会会長 延楽 濱田昌子女将
宇奈月温泉かたかご会会長 延楽 濱田昌子女将

延楽 濱田昌子女将:
「たちまち(予約が)消えていった。本来1月は(業績が)よいはずだった。地震だけは思いもかけなかった。温泉、水、電気、ガスも通常通り営業している。宇奈月にぜひお越しいただければ」

宇奈月温泉の旅館では、1月22日までに約6500人のキャンセルが発生。

延楽の大浴場
延楽の大浴場

延楽では地震による大きな被害はなく、温泉も問題なく湧き出しているが、キャンセルや延期の連絡が相次ぎ、25日までの3日間、休業を余儀なくされた。

地震発生後、被災地への観光を控えようとする傾向が強まり、富山県内のホテル・旅館全体の損失額は3億円以上にのぼると見られる。

こうした状況の中、政府が打ち出したのが、観光需要を喚起するため、1泊2万円を上限として旅行代金を割り引く「北陸応援割」だ。

期間はゴールデンウィークまでの3月、4月にかけて、対象は富山、石川、福井、新潟の4県となっている。

この難局に専門家が指摘するのが、3月の北陸新幹線敦賀延伸を見据えた取り組みだ。

富山国際大学・観光専攻 大谷友男准教授
富山国際大学・観光専攻 大谷友男准教授

富山国際大学・観光専攻 大谷友男准教授:
「(全国的に)石川の復興を応援しようという動きがあるが、福井・富山も新幹線で簡単に行き来できるようになる。広域観光として応援のため、旅行する人を取り込むことが大事」

‟食べて”被災地を応援

一方、被災から立ち上がり、動き出した観光地がある。

ひみ番屋街
ひみ番屋街

地震から3週間ほどが経ち、ほとんどの店が営業を再開した「ひみ番屋街」

買い物で復興支援しようと主に県内や金沢近郊の客が訪れている。現在、通信販売などの発送が中心となっている鮮魚店では、申込み客から、温かい言葉が届いていた。

ひみ水産 徳前康宏さん
ひみ水産 徳前康宏さん

ひみ水産 徳前康宏さん:
「(買った人から)『頑張ってください』みたいな一言が添えてある。全国から応援してもらってる気がしてうれしい」

氷見といえば、寒ブリ。

年末から豊漁が続き、書き入れ時と意気込む中で地震が起きた。

観光客が激減し、需要が減少したことから大幅に値下がりし、漁業関係者が苦しんでいることが伝えられると、氷見の新鮮なブリを食べて応援しようと、漁港近くの食堂に訪れた客がSNSにブリ料理の写真を投稿し始めた。

県内在住の男性が投稿した画像には、丼からこぼれんばかりの新鮮なブリが魅力的と、25日までに81万回以上のアクセスがあり、投稿を見て足を運んだ人もいた。

魚市場食堂の店員
魚市場食堂の店員

魚市場食堂 店員:
「びっくりしました。予想外というか、皆さんに応援していただいているなという実感があります」

地震を乗り越え、動き出した観光地。

様々な形で、復興支援の動きが広がっている。

(富山テレビ)