誰でも自分の“推し本”をコメントつきで紹介できるブックカフェのような空間。各地でそんな“サードプレイス”的なスペースが増えているが、広島市では大学内に本を通して人と人とが出会えるコミュニティとして、「図書空間2.0」と名付けられたスペースがある。

小学生から大学教授までが“推し本”紹介

「図書空間2.0」と名づけられたこちらの場所。広島市の叡啓大学の中だが、誰でも入ることができるオープンスペース。

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30cm四方の棚に様々な人のおすすめの本「推し本」が並ぶ。誰でも棚主として本を紹介することができ、本は自由に読むことができるが、持ち出すことはできない。

西山穂乃加アナウンサー:
テレビ新広島「ライク!」の金曜コメンテーター、叡啓大学・保井先生のボックスを見つけました

西山穂乃加アナウンサー
西山穂乃加アナウンサー

西山アナウンサー:
「対話」に関するする本が多く並んでいます。こんなに本を出されていたことをここに来て初めて知りました

西山アナウンサー:
こちらは小学生ですね。大人だけでなく、お子さんの本も並んでいますが、どんな本を選ぶかは年代によっても違うので、小学生の目線に触れられるのもすごくいいですよね。魅力的な絵本が並んでいます

西山アナウンサー:
この方はサウナサークルを運営されている方、中はやっぱりサウナですね

西山アナウンサー:
こうやって選んだ本を見るだけで、お会いしたことないのに親近感がわいてきますし、それぞれの個性が、話す以上にわかるような気もしますね

「推し本」により新たな本との出会いがあるだけでなく、棚主さんとの出会いも感じる空間。
QRコードを読み込むと、棚主さんがどんな人かも分かる。

これまでありそうで、なかったコミュニティ空間を仕掛けたのは長谷川忠宏さん。その意図は…

本を媒介に人と人とが助け合えるコミュニティに

図書空間をつくった 長谷川忠宏さん:
まったく利害関係のない付き合いを作っていきたい。暖かい、柔らかいコミュニティが僕はほしいと思った、というのが理由の一つですね

母子家庭で育ち、人に頼るのが苦手だったと語る長谷川さん。気軽に話を聞いてもらえ、人とつながれる場所があればよかった…。その経験が、自分が子供を授かったことで行動に変わったという。

長谷川忠宏さん:
周りを上手に頼って、みんなでよりよく生きていくことって、自分が親になって、すごく大事だなって思ったんですね。助けてほしい時に、助けてくれるような人って、どんどん今減ってきていると思っていて、人と人とがコミュニティで助けあえるような場を作りたいというのがきっかけでした

そのツールとして、長谷川さんが見出したのが本だった。
Q:なぜ本にフォーカスされたんですか?
長谷川忠宏さん:
本ってメディアの中で自由度がすごくある。その人のもっている興味、関心の種みたいなものが、ここにぎゅっと集約されているんじゃないかなって

この図書空間の企画を社会課題解決の取り組みとして広島県にプレゼンし、事業支援金を獲得、これを運営資金にして、2022年10月に実証事業としてスタートした。叡啓大学が場所を無償で提供している。

地域住民と大学の接点に

Q:大学としてよかった点は?
叡啓大学事務部 亀本健介事務次長:
地域の皆様と大学の接点として設置した施設なので、より多くの地域の方に利用していただくのに、大変いい機会をいただいたと思います。

利用者は…
叡啓大学生:
ここにきて、絵本とか懐かしいものを見つけたり、自分の思い出を思い返すタイミングにもなるのかなって思いました。幼稚園の子が、お母さんと一緒に、帰りにここ来て遊んでいたりして、私たちも出入りするときに、その子たちとも一緒に盛り上がる場所にもなっている

叡啓大学生:
ここで知り合った子もいますし、本を読むのが好きなのでいいなと思いますね

ワークショップでコミュニティの輪が広がる

長谷川さんは、この空間を生かし、様々なワークショップも開催。

棚主さんの集まり「棚主会」なども企画し、緩やかな人のつながりの場を広げていて、こんなコラボも実現。

長谷川忠宏さん:
この棚主さんがピラティス(エクササイズ)をやっていて、もっといろんな場所でやりたいという希望があった。

長谷川忠宏さん:
そこに、こちらの棚主さん、妙覚寺のお坊さんを紹介して、「お寺でピラティス」という棚主同士のコラボが出来上がった

お寺でのピラティス教室は、定期的に開催されていて、図書空間をきっかけに、リアルな人のつながりが生まれている。

図書空間の正式名称は「図書空間2.0」そこに込められた思いとは…
長谷川忠宏さん:
ここにふらっと来た人同士で、こんな本があるんだね…と会話が起こっていく。図書館とか書店が1.0だったら、会話を通して2.0にアップグレードできたらいいよねっていうところに人の意思とか気持ちとかが介在するような場所づくりをしていきたい

リアルな空間で、あらゆる世代の人が緩くつながる…ありそうでなかった“サードプレイス”的なコミュニティ空間のニーズは高まっているようだ。今後は、この空間を他の場所にも増やすと共に、広島市内の様々な場所に出張していくなどの展開も模索している。

(テレビ新広島)

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