イスラエルのネタニヤフ首相は、イスラム組織ハマスとの戦闘を続ける考えを21日に改めて表明し、人質の解放と引き換えに戦争終結を求める、ハマスの要求を完全に拒否した。ガザ地区では、イスラエル軍の攻撃が続き、死者数が2万5105人に上っている。

ガザ市民を拘束し虐待か

ネタニヤフ首相は21日に声明を発表し、人質の解放と引き換えに戦争終結を求めるハマスの要求を「完全に拒否する」と表明した。

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その上で「完全な勝利だけが、ハマスの壊滅と人質全員の帰還を確実にする」として、戦闘を続ける考えを改めて強調した。

ガザ地区では、21日も南部のハンユニスなどでイスラエル軍による攻撃が相次ぎ、ガザの保健当局は、これまでの死者が2万5105人に上ったと発表した。

ガザ地区での犠牲者の数は、ますます増えている。そうした中、国連の人権担当者が、イスラエル軍がガザ地区住民の数千人を拘束、虐待に近い扱いも行われている可能性があると告発した。

これまでイスラエル側は、投降してきたハマスの戦闘員だとし、ガザ地区内で男性を拘束する映像を公開してきた。中には、下着姿で目隠しをされた状態で座らされている姿もあった。ただ、中にはジャーナリストが拘束された例もあり、多くの民間人が含まれていると指摘されている。

イスラエル軍は、取り調べでハマスと関係がないとわかれば釈放しているとしてきたが、国連から新たにこんな証言が出てきた。

ガザ地区の国連人権担当の代表を務めるアジス・ソンガイ氏が、イスラエル軍に拘束されていた複数のガザ市民と面会した際、拘束中に暴力が振るわれるなど、虐待行為があったとの証言があったという。

ソンガイ氏は「彼らは囚人服やオムツをはいて収容所から出てきた。しかし明らかに彼らはショックを受け、震えている人もいた」と話している。

実際に拘束されていた人たちの解放後の映像を見ると、中には背中に多くの傷跡がある人もいた。拘束された市民の数は正確にはわからないものの、国連は数千人に上る可能性もあるとしていて、ソンガイ氏は「イスラエルは、拘束者全員を国際人権法に準拠して扱う義務がある」と指摘している。

ハマスはゲリラ戦で抵抗

イスラエル軍が、多くの市民を拘束をする理由はどこにあるのか。

イスラエル軍は、ハマスを相手に優位に戦いを進めていることを強調しているが、焦りもあるかもしれない。

アメリカの情報機関は「ハマスはまだ何カ月も戦える」と分析している。これはウォールストリート・ジャーナルが報じたもので、アメリカの情報機関によると最大3万人とされるハマス戦闘員のうち、イスラエルの攻撃で殺害されたのは20%〜30%で、まだ70%以上の兵力が残っているとしている。

また、1万1000人のハマス戦闘員が攻撃により負傷しているが、そのほとんどが戦線復帰可能と報じている。

イスラエルは3カ月以上猛烈な攻撃を行っているが、イスラエルが主張するよりもハマスのダメージは小さく、回復力もあると指摘している。

ハマスが公開した映像には、場所は不明だが、民間人のような格好をしたハマスの戦闘員が次々とロケット弾を手作業で打ち込んでいく様子が記録されている。普通は、耳を爆音から守るヘッドホンのようなものをつけるが、彼らは自分の手で耳を一生懸命ふさいでいた。足元は素足にサンダルで、武器さえなければ普通の人にもみえる。

こういった、こまごまとした待ち伏せ攻撃の積み重ねが、強大なイスラエル軍にダメージを与えている。

イスラエル軍は圧倒的な軍事力で、空爆や戦車などによる破壊力はあるものの、町を占拠する際には接近戦に苦しめられているようだ。

イスラエル軍が公開した映像では、複数のイスラエル軍の兵士が建物の捜索を続けているが、突然、建物の影から単独でハマスの戦闘員が現れ、至近距離での銃撃戦に巻き込まれていた。こうしたゲリラ戦による抵抗が各所で続き、イスラエル軍も戦闘により195人の兵士が死亡、約5000人以上が負傷しているとみられている。

ウォールストリート・ジャーナルは、ハマスが依然、何カ月も戦える武器弾薬を所持しているとしている。そのため、戦闘が長期化、泥沼化する恐れも懸念されている。

アメリカの情報機関は、ハマスの目的は勝つことではなく生き残ること、存続していくことだとしており、息の長い戦いになるのではないかと指摘している。
(「イット!」 1月22日放送より)

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