アメリカ大統領選挙(2024年11月)の候補者レースが、日本時間の16日から共和党のアイオワ州党員集会で幕を開ける。世論調査では、共和党内の支持率は前大統領のトランプ氏が独走中だ。

政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた、アイオワ州での各種世論調査の平均(1月5日~12日)では、トランプ氏が52%と過半数を超える支持を集めており、勝利は確実視されている。
一方で加熱する2位争いで注目を集めているのは、女性初の大統領を目指す元国連大使のヘイリー氏の存在だ。当初、支持率は低迷していたが、小規模の集会を重ね、いまやトランプ氏の有力対抗馬とみられていたフロリダ州知事のデサンティス氏と拮抗する支持を得るまでとなった。さらにトランプ氏への批判票も取り込んでいる。

下馬評通りにトランプ氏が圧勝するのか。それとも、トランプ氏に一矢報いるような展開が生まれるのか。党員集会当日は氷点下30度近い極寒になると予想もされる中、熱い戦いに全米の注目が集まっている。
共和党・アイオワ州の党員集会とは?
大統領選挙での共和党・民主党内の候補者レースでは、それぞれの指名候補を選ぶ「予備選挙」と「党員集会」という2つのイベントが重要になる。
「予備選挙」は州政府によって運営され、有権者が投票所に赴き無記名の投票を行う。一般的な投票のイメージだ。全ての有権者が投票権を持つ場合もあれば、政党に登録した有権者だけの場合もある。

一方、「党員集会」は政党が主催して行うもので、各候補者の陣営が演説し、直前まで投票を呼びかけることができる。開催時間が指定され、拘束時間も発生するため、党員集会の参加者はより熱心な有権者が多く、予備選に比べて参加人数は少なく、数人という場所もある。
候補者を絞り込む過程で「予備選挙」か「党員集会」か、いずれの方法を選ぶかはそれぞれの州に任されている。
今回の共和党のアイオワ州党員集会は、州内にある教会や学校など1600カ所を超える場所で行われる。参加できるのは、登録済みの共和党員のみだ。ただ、有効な身分証明書や、公共料金の請求書といった居住証明書があれば、他の政党から共和党に党員登録を変更可能だ。また、選挙日(2024年11月5日)までに18歳になる17歳も党員集会に参加して投票ができる。

投票結果は各党員集会の会場で、オンラインで入力され、アイオワ州の共和党のウェブサイトで公開される。最終的な票の確定には数日かかるものの、開始から数時間後には勝者がほぼ確定する見通しだ。
トランプ圧勝?「新星」不発…「女性」候補急浮上?
共和党の指名候補選びを巡っては、予想外の事態が次々と起きている。
トランプ氏は2020年の大統領選挙でバイデン氏に敗北した後も、一貫して共和党内で高い支持率を保持してきた。専門家からは「トランプ人気に陰り」「起訴されれば状況が変わる」との分析もあったが、起訴されればされるほど、支持が上昇するという予想外の結果となった。

また、当初はトランプ氏の対抗馬として、フロリダ州知事のデサンティス氏が有力視され、「共和党の新星」「「保守界の寵児」とも言われていたが、選挙戦を通じてアドリブ力の低さや、トランプ氏との対決姿勢を回避する姿勢が不評を買い、支持が失速した。

一方で、注目を集めているのは、トランプ政権時代に国連大使を務め、女性初の大統領を目指すヘイリー氏だ。ヘイリー氏は1972年生まれの51歳で、2人の子どもの母親でもある。去年2月に大統領選挙に出馬表明をした際の演説では、バイデン大統領(81歳)、トランプ前大統領(77歳)の年齢を指摘して若返りを訴え「75歳以上の政治家には認知能力の検査を義務付けるべきだ」と発言して物議も醸した。
高学歴で穏健な保守層の支持が高いとされ、アイオワ州では農業関係の票の掘りおこしを狙う。最近はトランプ氏への明確な批判も厭わないことで、共和党内の反トランプ支持層に浸透もしている。

現地13日に発表された、NBC News/Mediacomのアイオワ州での世論調査では、トランプ48%に対して、ヘイリー氏が20%とデサンティス氏(16%)を抑えて2位に浮上した。仮にヘイリー氏が今回の党員投票でもデサンティス氏に勝利して2位に躍り出れば、ヘイリー氏としてはトランプ氏への有力な対抗馬になる可能性がある。

逆にデサンティス氏は早期の撤退が濃厚になるとの見方が強い。一部世論調査では、現職のバイデン大統領に対抗する共和党の大統領候補が、トランプ氏であるよりも、ヘイリー氏の方が中間層の支持を取り込むことができ、勝利する可能性が高いとの結果も出ている。
“氷点下30度”極寒の決戦
アイオワ州にはこの週末に冬の嵐が直撃していて、これが選挙戦に影響するとの見方も出ている。現地では大雪と強風の警報も出されて、選挙当日には氷点下30度近くまで最低気温が低下するという記録的な寒さとなる予報も出ている。取材を連日続けていても、朝や夕方以降には最低気温は連日、氷点下20度を下回っていて、10分も外に出ていられない状況だ。

大雪によって道路事情も悪化し、最後の訴えを精力的に行う候補者のイベントは中止が相次ぎ、急きょオンラインや、電話などで支持を呼びかける事態となっている。州の中心部から離れた、農村部などに支持者が多いトランプ氏にとっては、冬の嵐によって有権者の出足が鈍ることで、思わぬ逆風になるという指摘も出ている。

注目の党員集会は、日本時間の16日午前10時(現地15日午後7時)から始まり、数時間後には勝者が決まる見通しだ。
(FNNワシントン支局 中西孝介)