2023年は「卯年」で十二支の相場格言は「跳ねる」。うさぎがぴょんぴょん跳ねるように株式相場が跳躍する年と言われている。
ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化など地政学リスクが高まる中、アメリカの長期金利の上昇やそれに伴う円安に翻弄されながらも、2023年の日経平均株価はまさに「跳ねた」1年だった。2024年の株式市場はどうなるのか行方を占う。

2万5000円台後半でスタートした2023年の平均株価。5月には訪日外国人の増加や、新型コロナの5類移行による経済回復などで3万円の大台を突破した。
アメリカの長期金利の上昇で日米の金利差を意識した円安の追い風も吹き、7月3日には3万3753円33銭の年初来高値をつけ、バブル崩壊以降33年ぶりに最高値を更新した。
年後半は、市場の関心がアメリカの追加利上げの有無から、利下げの時期やペースに移り、平均株価は3万3000円を挟む取引が続いた。
大納会の終値は3万3464円17銭となり、1989年以来34年ぶりの高水準となった。年間の上昇率は28%で、安倍政権の経済政策アベノミクスが始まった2013年以来の大きさとなった。

どうなる?2024年株式相場 証券会社の予想は
2024年は「辰年」。相場格言では「卯跳ね、辰巳天井」といわれ、卯年が跳ねた後の辰年と巳年は高値をつけるとされる。
格言通り、龍が空高く舞うように飛躍の1年となるのだろうか。
大手証券会社に2024年末の平均株価の予想を聞いてみた。
野村證券は、「来年の春闘でデフレ脱却への期待が再び高まる」こと、また、「値上げカルチャーの浸透による利益率改善効果で企業は増益トレンドを維持する」とみて、24年末の平均株価を3万8000円と予想。
SMBC日興証券は、日本株が上昇しやすい状況が続くとみて3万8500円と予想。
アメリカが金融政策を緩和方向へシフトし、利下げが行われると企業の設備投資増加への期待が高まり、日本株にも追い風となるなどとして24年後半には4万円の大台に到達する可能性もあるとみている。
最も高い予想をしているのは大和証券。
「来年の春闘での高い賃上げの実現」や、「アメリカの数回の予防的利下げを見込み本格的にハト派転換をマーケットが好感し始める」ことなどから3万9000円と予想。12月には4万円台を試す場面もあり得るという。
バブル経済の絶頂期1989年の大納会でつけた、平均株価史上最高値の3万8915円87銭を更新できるかが焦点となりそうだ。
兜町界隈から平均株価の強気な数字が並ぶ中、マーケットでは2024年から新しい制度が始まる。「新NISA」のスタートだ。

新NISAスタートまで1カ月を切った12月の木曜日の夜。東京駅近くにあるみずほ銀行では、日中は待合室として使われているスペースが「NISAカフェ」に変身。
用意された席は仕事帰りとみられる30代から50代の人々で埋まり、ペンを手に熱心に耳を傾ける姿が見られた。

みずほ銀行によると、年末に向けてNISAカフェを訪れる人の数は増え続けているという。
仕事帰りに大手町の会社から駆けつけた50代の男性は「せっかく枠が多くなるので、商品についてしっかりと勉強したい」と訪れた理由を述べた。
NISAとは?
NISAは、個人投資家を対象に、株式や投資信託などに投資して得た利益を一定の範囲内で非課税にするという制度。1人1口座のみ開設することができる。
これまでの制度では、「一般NISA」で年間の投資額120万円を上限に最長で5年間、「つみたてNISA」で年間40万円が最長で20年間、非課税となっている。

2024年1月から始まる「新NISA」では、「一般NISA」は「成長投資枠」に、「つみたてNISA」は「つみたて投資枠」に名前を変える。
非課税となる投資額の上限は「成長投資枠」で年間240万円に、「つみたて投資枠」で年間120万円に拡大され、非課税となる期間は無期限となる。
「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の併用もできるようになり、非課税保有限度額は1800万円に増額されるなど制度は大きく様変わりする。
ネット証券で盛り上がる顧客獲得競争
新NISAのスタートに向け、顧客獲得競争が激化しているのがネット証券だ。
ネット証券大手のSBI証券は2023年8月から10月までの3ヵ月間で45万4723口座増やし、楽天証券は、2023年6月末時点で約449万だった口座数が、11月末時点で500万口座を突破した。
日米株や投資信託などの売買手数料の無料化や、ポイントサービスなどを強みに、新規開設の口座数を大きく伸ばしていて、その半分以上が30代以下の若い世代だという。

さらに、キャッシュレス決済アプリを運営するPayPayが新NISAに参入する。
2023年10月から新NISAの口座開設申し込みを始めたところ、2ヵ月足らずで10万件を超える申し込みがあったという。
6000万人を超えるアプリ登録者を基盤に、どこまで口座開設者数を増やすのか注目される。

政権が掲げる「資産所得倍増プラン」の目玉政策の一つである新NISA。
制度の拡充により、家計で眠る貯蓄を投資に促し、個人資産の形成や、さらには日本の株式市場に資金を流入させ経済成長につなげることが狙いだ。
今後5年間でNISAの口座数を3400万口座に、投資額を56兆円に倍増する目標を掲げている。
個人による投資はどのくらい行われているのか
日銀が発表した資金循環統計を見てみると、2023年9月時点の個人の金融資産は2121兆円で、このうち株式等が273兆円、投資信託が101兆円となり、いずれも過去最高を更新した。
日銀は株価の上昇に加えて、新NISAのスタートに向け投資への関心が高まっていることも過去最高となった要因とみている。
ただ、個人の金融資産の割合を見てみると、現金・預金が52.5%、株式等が12.9%、投資信託が4.8%となり、半分以上を現金・預金が占める状態が続いていて、さらなる投資への流れをどのように作るのか課題が残る。
貯蓄から投資を加速させるために必要な要素
この記事を書くにあたり、自身のNISA口座のサイトを久しぶりに開いてみた。
深く理解もせずに細々と続けてきたが、資産が少しずつ増えているのを確認し胸をほっとなで下ろした。

日本証券業協会の森田会長は「金融経済教育、国民の7%しか受けたことない比率を3割4割5割に引き上げたい」と述べ、金融教育の必要性を指摘している。
2022年度から高校での金融教育が義務化されたが、働く世代の学ぶ機会は十分とは言えない。
また、知識を身につけると同時に、資産形成につなげるにはリスクがあることも忘れてはいけない。
投資先や時期によっては元本割れのリスクもある。
2024年1月から投資額が拡充されるのを機に、これまで以上にしっかりと理解を深めて運用することが求められている。