寒い季節に食べたくなる果物といえば、こたつの相棒にもなる「ミカン」だ。

特定のカルチャーをより深く味わう「沼から来た。」では今回、「ミカン」の沼にハマった専門家がその底知れない魅力をたっぷり紹介。

通常より1カ月長く木の上で完熟させるこだわりミカンや、まるで和三盆!?のようなまろやかな甘みを追求した絶品ミカン。

さらに、「実は誤解かも!?」と新しい発見が生まれる、おいしいミカンの見分け方を紹介していく。

あなたも“ミカン沼”にハマってみませんか。

“ミカン博士”が解説

オススメを紹介してくれる“ミカン沼の住人”は、豊洲市場ドットコムの青果バイヤーの赤羽冬彦さん。

1日20個以上ミカンを食べる日もあり、食べた品種は100種類以上あるという。

豊洲市場ドットコムの青果バイヤー 赤羽冬彦さん
豊洲市場ドットコムの青果バイヤー 赤羽冬彦さん
この記事の画像(18枚)

「ミカンを触るだけでおいしいミカンが分かる」という赤羽さん。

ミカンといえば、だいたい9月から3月までと食べられる期間が長いが、11月から12月にかけての今の時期のミカンが甘さと酸味のバランスが良く、美味しいミカンが豊富だという。

「特に今年は雨が少なく晴天率が高かったので、味の濃いミカンが多い傾向にあります」

ミカン博士オススメ!全国のミカン

和歌山県の「有田みかん」や、愛媛県の「愛媛みかん」など、さまざまなブランドミカンがあるが、 これらは「温州(うんしゅう)ミカン」と呼ばれる。

その「温州ミカン」の中でも、完熟の時期によって大きく4つの種類に分けられ、今の時期は「早生温州(わせうんしゅう)」がメインだ。

温州ミカンの種類 画像:豊洲市場ドットコム
温州ミカンの種類 画像:豊洲市場ドットコム

皮はオレンジ色で甘さと酸味のバランスが良く、ミカンのおいしさを実感できる「早生温州」は今が“最盛期”だという。

「ミカンは作り手の個性が出やすい果物なので、同じ温州ミカンでも、産地や農家さんで味や食感が違います。店頭で販売されるミカンは、品種名ではなく『ブランド名』が表記されているものが多いんです」

ミカン博士オススメ1.愛媛「日の丸みかん」

愛媛県の「日の丸みかん」は初出荷の価格が高いと、その年の全国のミカンの単価が上がるともいわれ、贈答用でも人気のミカンだ。

愛媛県JAにしうわ「日の丸みかん ゴールド千両」5キロ 5900円
愛媛県JAにしうわ「日の丸みかん ゴールド千両」5キロ 5900円

「むきやすさ」「甘味」「酸味」「水分」「内皮のうすさ」など、それぞれの要素のバランスがよく、ミカンらしい酸味とスッキリとした甘さで、赤羽さんいわく“王道のミカン”だという。

「愛媛県のミカン畑は、70%が急斜面で水はけの良い段々畑。海もあるので太陽と海の反射光、石垣の反射光と3つの太陽があり、それがすごくミカンの糖度を高めてくれるんです」

次に“ミカン博士”がオススメするのが、同じ愛媛の「紅まどんな」だ。

愛媛県 かんきつ「紅まどんな」3キロ 5980円~
愛媛県 かんきつ「紅まどんな」3キロ 5980円~

温州ミカンではなく、オレンジやデコポンなどの仲間の“かんきつ類”だが、12月に出荷ピークを迎える今、大人気のかんきつ「紅まどんな」。

「温州ミカンとはまた違った味わいでトロンと、とろけるゼリーのような果肉で、皮もすごく薄く、食べた瞬間に果汁と香りが広がります」

愛媛県 かんきつ「紅まどんな」3キロ 5980円~
愛媛県 かんきつ「紅まどんな」3キロ 5980円~

美味しい食べ方については「紅まどんなはカットして食べると、果肉の質が味わえます。手でむかないでカットして食べる方がおいしく食べていただけるのでオススメです」と赤羽さん。

ミカン博士オススメ3. 長崎「味っ子みかん」

“ミカン博士”3つ目のオススメは、糖度が13度もあるという「味っ子みかん」だ。

長崎県 JAながさき西海「味っ子みかん」5キロ 4200円~
長崎県 JAながさき西海「味っ子みかん」5キロ 4200円~

長崎県は今年、雨が少ないためより果実が引き締まり、味が凝縮して糖度が高いものが多いという。

「口に入れた瞬間、ジュワっとあふれるジューシーさが素晴らしい。『日の丸みかん』より内皮が少し厚めですがその分、弾けるような果汁が楽しめます」

長崎県は平地の畑が多いため、白いシートをかけるマルチシート栽培がほとんど。

シートで水分量を管理することによって旨みがギュッと凝縮した、コクのある甘いミカンを作ることができるという。

続いては、実は3種類があるというミカンのむき方を紹介していく。

あなたは何むき?ミカンのむき方

ミカンを食べる際、どのようなむき方をしているだろうか。

赤羽さんいわく、そのむき方は3種類あるという。

「南極むき」…ヘタがない方からむく
「北極むき」…ヘタからむく
「有田むき(和歌山むき)」…皮ごと4つに割ってから、むく

「北極むき」はスジが剥がれやすいようだが、赤羽さんは「スジに栄養があるのは本当です。なので、あまり取らないで食べた方が体には良いと思います」と話す。

また「有田むき(和歌山むき)」は手をあまり汚さずに食べられるため、和歌山の農家はほとんど「有田むき」でミカンをむいて食べているという。

SNSで話題のミカンのむき方

農林水産省がSNSで発信したことで、話題となったむき方。

ヘタ部分とその反対側を丸くむいて、皮を開いていくと、ベルト状に房が並ぶその名も「いもむしむき」。「子どもが喜ぶ!」と、大反響だったという。

ちなみに、むく前に皮をもんでいる人もいるだろう。

「もむという行為は酸味が飛ぶというふうに言われていますが、本当かどうか分からないところもあります。実際あまりもみすぎると味がぼけておいしくなくなる可能性もあるので、あまりもみすぎない方がいいかもしれません」と赤羽さん。

続いては、実は誤解しているかもしれない、おいしいミカンの選び方を紹介していく。

「傷のついているミカンは甘い!?」

大分県・岸田果樹園の「薄皮みかん」。

「他と比べて傷があり見劣りする…」と思ってしまいがちだが、実はこれがおいしさのポイントだという。

大分県 岸田果樹園「薄皮みかん」3.5キロ 2700円
大分県 岸田果樹園「薄皮みかん」3.5キロ 2700円

「ミカンの傷が付く理由は、木の先端に実ったミカンは下に実ったミカンより大きく揺れ、枝がぶつかり傷が付いてしまう。ただ先端になっているミカンは日光がたくさん当たるところで、糖度が高くなるミカンになる可能性が高いです」

大分県 岸田果樹園「薄皮みかん」3.5キロ 2700円
大分県 岸田果樹園「薄皮みかん」3.5キロ 2700円

さらに本来は10月末頃に収穫されるミカンを20~30日ほど長く木の上で完熟させてから収穫するため、ミカンの味の濃いという。

また、このミカンに限らず傷がついているミカンはおいしい可能性が高いと赤羽さんは言う。

「もちろん全部に当てはまるわけではないですが、傷は決してマイナスではなく、味で言ったらプラスの方が高い。店頭で見かけたらぜひ買ってみて欲しいです」

最後は、オススメの保存法と“ミカン博士”オススメのミカン残り2つを紹介していく。

涼しい場所で通気よく保存

ミカンは湿気を嫌うため「涼しい場所で箱を開け、通気のいい状態で保存する」のがオススメだという。

「袋のミカンは、出してカゴなどに置く方が良いです。段ボールの開封は、底から開けるのがオススメです。箱の底にあるミカンは、輸送中に、圧力がかかり上にある傷む可能性が高いので、なるべく底から開けて、下にあったミカンから、先に食べるのが良いと思います」

ちなみに、酸味が強すぎて酸っぱすぎるミカンは、暖かい部屋に1~2日置いておくと、酸味が抜けやすいので、食べやすくなるという。

また、基本は常温保存のミカンだが、冷蔵庫に入れる場合はビニールなどから出して、新聞紙などで包んで冷蔵庫で保存すると、長くおいしいミカンを楽しむことができるという。

ミカン博士オススメ4.三重「ゆら早生みかん」

皮がボコボコしている「ゆら早生みかん」。

傷と同様、店頭にあったら避けてしまいがちかもしれないが、むしろ、そのボコボコを見つけたらラッキーな、おいしいミカンだという。

三重県 北東農園「ゆら早生みかん」約2.7キロ 3200円
三重県 北東農園「ゆら早生みかん」約2.7キロ 3200円

「ミカンの木は水分を絞ってストレスをかけると甘いミカンになりやすく、皮の水分が少ないとボコボコしてくる。なので、このボコボコした皮は美味しいミカンのサインなのです」

三重県 北東農園「ゆら早生みかん」約2.7キロ 3200円
三重県 北東農園「ゆら早生みかん」約2.7キロ 3200円

今回紹介してくれたのは、北東農園の「ゆら早生みかん」。

赤羽さんは「北東農園さんのミカンも、1カ月近く木の上で熟成させ、ストレスをかけて育てており、ボコボコが目立つ。今年は特に出来が良くて、とけるような果肉と甘さが際立っています」と話した。

ミカン博士オススメ5.和歌山「俊菓」

和歌山県の「俊菓」は、表面につく白い粉が気になる。

しかし、これは農薬やワックスなどではなく、運動場などに白線を引く時に使われている「石灰」なのだという。

和歌山県 シトラスファーム俊菓「俊菓」2.5キロ 2800円
和歌山県 シトラスファーム俊菓「俊菓」2.5キロ 2800円

「ミカンは皮と実が離れると十分な栄養が行き渡らずおいしくない。それを防ぐために石灰を木にまいているんです。石灰をつけることで、皮が浮くことを防止してくれます」

和歌山県 シトラスファーム俊菓「俊菓」2.5キロ 2800円
和歌山県 シトラスファーム俊菓「俊菓」2.5キロ 2800円

ミカン産地の多くで石灰作業は行われているといい、石灰をまくことでおいしさや栄養も高まるという。

「特にこの『俊菓』は、手間も時間もかかるこの石灰作業を丁寧に行っていて、農家さんが和三盆のような余韻が残る上品な甘さを追求したミカンなんです」

まだまだ底が知れない“ミカン沼”。今後もどんな新しいミカンが出てくるのか、目が離せない。

(ノンストップ!『沼から来た。』より 2023年11月29日放送)