「タント」や「ムーヴ」などの人気の軽自動車を手がけるダイハツ工業が、安全性を確認するための衝突試験などで不正をしていたとして、全ての車種の出荷を停止すると発表した。

174件の不正発覚 社長「きちっとなされていると…」

愛車がダイハツの軽自動車「タント」だという男性は、突然の発表に驚きを隠せない。

ダイハツ車の使用者:
あっちゃいけないことだよね。注意して運転しないとまずいな、事故のないように。

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20日午後4時半過ぎから行われた記者会見の冒頭、社長らは7秒間頭を下げて謝罪した。

ダイハツ工業・奥平総一郎社長
ダイハツ工業・奥平総一郎社長

ダイハツ工業・奥平総一郎社長:
今回、認証を軽視していると指摘されても仕方がない不正が行われております。その行為を生み出す環境を作った責任は経営陣にあります。自動車メーカーとして、根幹を揺るがす事態であると大変重く受け止めております。

4月以降、認証試験での不正が相次いで発覚していた
4月以降、認証試験での不正が相次いで発覚していた

ダイハツでは2023年4月以降、認証試験での不正が相次いで発覚した。その後、第三者委員会が調査をしたところ、新たに25の試験項目で合計174の不正行為が行われていたことが明らかになった。

これを受け、出荷が停止されるのはダイハツの全車種。

ダイハツ工業・奥平総一郎社長:
(試験が)きちっとなされているというふうに確認を自分自身はしました。そういうことからも、非常にしっかりしたことをやれているというふうに思ってしまったのが、1つは問題だったかもしれません。

不正行為の原因究明にあたっていた第三者委員会は、会見でこう説明した。

第三者委員会「トヨタに責任はない」

第三者委員会・貝阿彌誠委員長:
トヨタに責任があるということは考えておりません。現場の実情を管理職や経営幹部が把握できなかったのが原因でありますが、これは現場と管理職の断絶という問題があります。

配送業者“不安” 不正はなぜ起きたのか

具体的にはどのような不正があったのか。

公表された報告書にあった不正の1つ
公表された報告書にあった不正の1つ

公表された報告書にあった不正の1つは、ヘッドレストの衝撃試験で、助手席の試験結果を試験成績書に運転席の結果として虚擬記載したというもの。

ダイハツブランドを根底から揺るがす不正問題。ユーザーはどう受け止めているのか。

都内のダイハツ店舗では通常と変わらない営業
都内のダイハツ店舗では通常と変わらない営業

20日午後、都内にあるダイハツの店舗では「年末大感謝フェア開催中」と書かれていて、通常とあまり変わらない営業していた。

軽自動車市場で約3割のシェアを占めるダイハツ。街のいたるところでダイハツ車が走っている。

配送用にダイハツ車を使ってきたという男性は、「試験やってないと思うと怖いところはあります。配送業は安全運転が大事なので、車止まっちゃったりしたら、どうしようもできなくなるのでそこが怖いです。不安です」と語った。

「コスト削減の観点から利用できる試験車両の数に制限のある状況にあった」と指摘
「コスト削減の観点から利用できる試験車両の数に制限のある状況にあった」と指摘

第三者委員会は、報告書の中で不正行為が発生した原因について、「担当者はやむにやまれぬ状況に追い込まれて不正行為に及んだ、ごく普通の従業員である」とした上で「コスト削減の観点から利用できる試験車両の数に制限のある状況にあり、絶対に合格しなければならない、不合格は許されないという、まさに一発勝負の強烈なプレッシャーに晒されながら業務を行っていた」と結論づけた。

専門家は、不正が横行していたダイハツの企業風土についてこう指摘する。

内部調査によると、不正が社風と考えている人が半数だという
内部調査によると、不正が社風と考えている人が半数だという

自動車評論家・国沢光宏氏:
内容も悪質だし、命を預けるものなので、ありえないですね。ダイハツの内部調査の中にも出てきますけど、(不正が)社風って考えている人が半分くらいいるんですね。

国土交通省は21日、大阪にあるダイハツ本社に立ち入り検査に入ると発表している。
(「イット!」12月20日放送より)