世界三大珍味として知られる高級食材の黒トリュフ。これを人工的に発生させることに国内で初めて成功したと、岐阜県森林研究所が発表した。

そもそもトリュフは、生きた樹木の根に共生する菌根菌と呼ばれる仲間で、マツタケと同様に人工栽培は非常に難しい“きのこ”だという。国内で流通するトリュフはヨーロッパや中国などから輸入されている。
こうした中で岐阜県森林研究所は、国立研究開発法人 森林研究・整備機構「森林総合研究所」と共同で国産トリュフの人工栽培を目指した技術開発に取り組んでおり、2016年から国内産の黒トリュフであるアジアクロセイヨウショウロの菌をコナラの苗木に接種させ、岐阜県内の試験地に植えた。植栽して7年目の今年10月に、地表面にきのこ2個(約50g)を確認。
これらを調べた結果、コナラの苗木に接種したトリュフ菌に由来することがわかり、「国内で初めて人工的に国産黒トリュフを発生させることに成功したことが示された」とした。
なお白トリュフのほうは昨年、森林総合研究所が国産白トリュフである「ホンセイヨウショウロ」の人工的な発生に成功している。
【参考記事:「トリュフ」の人工栽培に国内で初めて成功…海外産と香りは違う?研究者「正直、想定外のことでした」】
白トリュフに続き、黒トリュフも国内で発生させることができたということは喜ばしいことではないだろうか。
しかし7年の期間を費やしたわけだがどんな部分が難しかったのか?成功のポイントは?岐阜県森林研究所の水谷和人主任専門研究員に詳しく話を聞いてみた。
樹木とトリュフの共生関係を保ちながら育てていく難しさ
――トリュフの人工栽培はなぜ難しいの?
トリュフは、生きた樹木と共生しなければきのこを作ることができない「菌根菌」と呼ばれる仲間です。きのこ発生のメカニズムがよくわからないこともありますが、樹木とトリュフの共生関係を保ちながら、両者を一緒に育てていくことに難しさがあると思います。
――なぜ黒トリュフの人工栽培を始めることになった?
平成27(2015)年度から5年間、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所と共同で、高級食材の国産トリュフの人工栽培を目指した技術開発に関する研究を行いました。国内で流通するトリュフは、すべてヨーロッパや中国などから輸入されていたため、国内に自生するトリュフの栽培技術の確立が目的です。
――ちなみに国内で天然物の黒トリュフは見つかっている?
全国各地で見つかっています。現在ではトリュフは20種以上あると報告されています。
研究員「いつ顔を出してくれるか心待ちにしていた」
――7年かかったがどんなところが難しかった?
トリュフの発生に適した条件がわからないことです。また、どんな条件が整えば、きのこが発生するかもわからない事です。
――成功したポイントは?
今回のコナラ苗木の根を黒トリュフを潰した液に浸漬する方法では、土壌に石灰を混ぜる必要があることです。しかし、発生に適した条件や管理方法については、まだ調査が必要です。
――黒トリュフを確認した時はどんな気持ちだった?
苗木を植栽した後、土の中でトリュフの菌が順調に増えているのは、顕微鏡観察で分かっていました。いつきのこが土から顔を出してくれるか心待ちにしていたので、正直にうれしかったのが感想です。

――発見したトリュフはにおいを嗅いだり、食べたりした?
においはトリュフ特有の匂いがありましたが、食べることはできていません。貴重な分析資料であるため、すべて研究用に使用しています。
目標は国内で栽培したものを販売
――岐阜県の森林は黒トリュフの植栽に適した場所?
黒トリュフは日本各地で発生が確認されているので、岐阜県だけが黒トリュフの植栽に適している場所という訳ではないと思います。
――今後の課題は?
今後は、きのこ発生の再現性を確認するとともに、短期間で安定的に発生させる技術開発を進めていきます。
――将来的には、国産の黒トリュフを販売できそう?
今回、試験に使用したトリュフは、中国から食用として日本に輸入されている種類と同じもので、すでに食習慣があります。国産の黒トリュフの栽培技術を確立して国内で栽培したものを販売できるようにすることが目標です。
今後、国産の黒トリュフの栽培技術を確立していくということだ。国産の黒トリュフが販売される日が近い将来訪れるかもしれない。