現状に迷いがあったり、転職を考えていたりすると「自分がやりたいこと」を探してしまいがちだ。

真っすぐに「やりたいこと」が見つかる人もいれば、なかなか見つからない人もいる。

『自分らしく働くための39のヒント Live My Life』(KADOKAWA)の著者であり、株式会社Warisで共同代表の田中美和さんは、20年以上、自分らしい働き方の実現を支援してきた。

「やりたいことがない」と悩んだとき、自分の半径5メートルを見渡すと、その芽が見つかるかもしれない。なぜ半径5メートルなのか、その理由と田中さん自身の経験を一部抜粋・再編集して紹介する。

一度手放したい「好きを仕事に」思考

「自分のやりたいことがよくわからないんですよね…」

年齢を問わずよく聞く声です。

働き方や仕事について考え始めるときに、一度ぜひ見つめなおしていただきたいことがあります。

それは、
「自分のやりたいこと=自分の好きなこと」
「“好きを仕事に”が一番」
こうした考え方にしばられていないか、ということです。

人は意外と自分のことをわかっているようでわかっていない(画像:イメージ)
人は意外と自分のことをわかっているようでわかっていない(画像:イメージ)
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「好きなこと」「やりたいこと」が最初から見つかっている人は決して多くはありません。

「好きで始めたけれど続かなかった」ということもありますし、逆に「なんとなく始めてみたら思いのほか自分に合っていた」という場合もあります。

人って案外自分のことはわかっているようでわかっていないものです。

今の状況を変えたい、でも自分の好きなものがわからなくて最初の一歩が踏み出せない…。そんな人は、自分の半径5メートルくらいからぜひ見渡してみましょう。ちょっと広すぎますかね(笑)。

身近+少し遠くをぐるっと見渡してみる

意図としては、家族や友人、会社の同僚といった物理的な距離だけではなく、「自分と同世代の人たち」「介護や育児など自分と同じ悩みを抱えている人たち」のように、心理的な距離も含めてやや広めに遠くまで目を向けて考えてみていただきたいということなんです。

広めの範囲であらためて周囲を見渡してみて、ちょっとでも「自分自身が力になれそうなこと」「解決したいお困りごと」はありませんか。そこから発想を広げてみるのも手です。

実際、私自身が会社員を辞めてフリーランスになったのは、「女性が生き生き働き続けられる社会をつくりたい」と思ったのがきっかけでした。当時の私は雑誌の記者をしていたので、毎日のように働く女性たちを取材していました。

「子どもを産んだらキャリアはあきらめないといけないの?」
「今の会社で働き続けて自分はどうなるの?」

悩んだり、迷ったりしている女性たちが本当に数多くいらっしゃいました。

私が記者として取材をしていた2000年代のはじめの頃は「働き方改革」という言葉が生まれる前のことでした。

今や珍しくなくなった短時間勤務制度ひとつとっても制度として義務化されたのは2010年のことです。実はまだ20年もたっていないんですよね。

もちろん女性活躍推進法などもなく、女性たちは今以上に迷いや不安のなかにいました。

自分自身、当時は独身で子どももいなかったのですが、取材した女性たちの不安や迷いにはとても共感しましたし、なんとか解放したいと思いました。それが会社の起業につながっています。

もともと決して「起業したい」とか「会社をつくりたい」と思っていたわけでもないので、不思議ですよね。それもまた人生。

みなさんも身近なところに加えて、少し遠くまで鳥になった気分でぐるっと見渡してみると「やりたいこと」の芽が見つかるかもしれません。

『自分らしく働くための39のヒント Live My Life』(KADOKAWA)

田中美和
株式会社Waris共同代表。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 理事、国家資格キャリアコンサルタント

田中美和
田中美和

株式会社Waris共同代表。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 理事、国家資格キャリアコンサルタント
慶応大学法学部政治学科卒業後、日経BPで編集記者として働く女性向け情報誌「日経ウーマン」を担当。取材・調査を通じて接した働く女性の声はのべ3万人以上。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく独立し、2013年、多様な生き方・働き方を実現する人材サービス企業Warisを創業し共同代表に(現在、ベネッセグループ入り)。フリーランス女性と企業との仕事のマッチングやリスキリングによる女性の就労支援に取り組む。最近では女性役員紹介事業を通じて意思決定層の多様性推進にも尽力している