結婚や出産、介護などさまざまな事情で職を離れていたり、今後離れるという決断をする人もいるだろう。

株式会社Waris、共同代表の田中美和さんは「働いていない期間も仕事の種をまいている」という。

誰もが自分らしい生き方・働き方を実現できる方法をまとめている著書『自分らしく働くための39のヒント Live My Life』(KADOKAWA)から、主婦や主夫もキャリアであり、この経験を生かすことができることについて、一部抜粋・再編集して紹介する。

育児や介護の経験が生きてくる

「私、今は働いていないので、何も自分にないんですよね」

働き方や仕事をテーマにしたイベントでお話する機会があると、このように参加者から申し訳なさそうに言ってきてくださるときがあります。その多くは女性です。

でも本当にそうでしょうか。

世界最大級のビジネス特化型SNSである「LinkedIn(リンクトイン)」では、「職歴」の欄に介護や育児などによる「キャリアブレイク(一時的に仕事を離れる小休止期間)」を追加することができることをみなさんはご存知ですか。

そこにはこんな説明が書かれているのです。

「従来のキャリアの道筋から離れた場所で得た経験によって、より優れた同僚、アドバイザー、リーダーとなれる場合があります。今のあなたを形成している体験についてシェアしましょう」

仕事をしていないからといって何もしていないわけではないですよね?その瞬間も私たちは毎日の生活を送っています。

離職期間16年の女性も復職

介護や育児に取り組んでいたり、お子さんの学校でPTA活動や地域活動に取り組んでいたり、ご自身やご家族が闘病されていたりする場合もあるかもしれない。

あるいは大小さまざまな学びの講座に参加されている場合もあることでしょう。

私が共同経営する会社では2016年から育児・介護などを理由に離職中の女性たちの再就職支援に取り組んでいて、40代を中心にこれまで200人以上が専業主婦期間を経て再就職を果たしています。

離職期間が長くても復職できないことはない(画像:イメージ)
離職期間が長くても復職できないことはない(画像:イメージ)
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いずれも離職期間10年前後の方々です。私が今までお会いしたなかで再就職された方だと最長16年という方もいらっしゃいました。

その方はご家族の事情で離婚し、2人のお子さんを育てながらコツコツ英語の勉強にも取り組んでいらした、とても勤勉な方でした。

私たちの再就職プログラムにご参加された当初こそ「ドキドキします」と不安そうでいらっしゃいましたが、持ち前の明るさとタフさで前向きに仕事に取り組み、「こんなに素晴らしい方がいらっしゃるなんて!」と企業のご担当者が目を丸くして驚かれていたことが昨日のことのように思い出されます。

人生100時代、働いていない期間があるのも自然

働いていない期間があるからこそ働くことにまっすぐに取り組めて、強い喜びを感じるし、素直に働くことを楽しめることもあるんですよね。

そして、「イチからなんでも吸収していくぞ」という意欲の高さを企業は評価します。

人生100年時代ですし、今は70歳くらいまでは働くことを想定しておいたほうがいい時代です。20歳前後で就職して実に半世紀近く働き続けるわけです。

そう考えると誰であっても長い人生で働いていない期間があるのはごく自然なこと。

男性も女性もそういう離職期間があって、また働く期間があって、長い人生を自分らしく歩んでいけたらいいのではないかと思うのです。

日々の生活の中にも仕事に通じるものは必ずあるのです。

『自分らしく働くための39のヒント Live My Life』(KADOKAWA)

田中美和
株式会社Waris共同代表。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 理事、国家資格キャリアコンサルタント

田中美和
田中美和

株式会社Waris共同代表。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 理事、国家資格キャリアコンサルタント
慶応大学法学部政治学科卒業後、日経BPで編集記者として働く女性向け情報誌「日経ウーマン」を担当。取材・調査を通じて接した働く女性の声はのべ3万人以上。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく独立し、2013年、多様な生き方・働き方を実現する人材サービス企業Warisを創業し共同代表に(現在、ベネッセグループ入り)。フリーランス女性と企業との仕事のマッチングやリスキリングによる女性の就労支援に取り組む。最近では女性役員紹介事業を通じて意思決定層の多様性推進にも尽力している