自民党の林芳正前外相は19日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜午前7時30分)に出演し、中国が沖縄県の尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)内に設置した海上ブイについて、日本側が撤去することに言及した。

林氏は「国際法には『やってはいけない』とも『やっていい』とも書いてない。それぐらいの姿勢で臨むことが大事だ」と主張した。

一方、米政府高官によると、15日に行われた米中首脳会談で、習近平国家主席がバイデン大統領に対し「米国では2027年から2035年の間に中国が(台湾に対する)軍事作戦を計画しているとの報道があるが、そんな計画はない」と伝えた。このことについて林氏は「驚いた。(習氏は)『武力使用のオプションを排除しない』と今までずっと言ってきた。(中国)国内で整合性を取れるのかを注目していきたい」と述べた。

習氏の発言について、林氏は急成長を続けてきた中国経済の減速を念頭に「若干いま足元が大変なので、あまりことを構えるという時代ではなくなってきたというひとつの表れかもしれない」との見方を示し、米国との関係改善をもくろむ中国が台湾問題での鎮静化を図っているとの見方を示した。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
日中首脳会談では戦略的互恵関係を再確認した。これは個々の懸案で対立しても共通利益の追及を優先するという考え方。福島第一原発の処理水放出問題については、専門家同士で科学的な議論を行っていくとした。岸田首相は日本産水産物の禁輸措置の即時撤廃などを要求した。

林芳正氏(前外相):
専門家同士で議論をすることは、処理水を放出する前から、われわれはずっと中国側に持ちかけていた。向こうは「いや、いや」ということだった。今回そこに中国が寄ってきたのは非常に大きな一歩だ。国際機関というのはおそらくIAEA(国際原子力機関)のことだと思うが、オプションとしてはあり得る。しっかり専門家同士で話すことがポイントだ。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
今回の日中首脳会談は予定より20分オーバーした。日中それぞれ関係改善をしたいという思惑もあったのだと思うが、会談の成果をどう見ているか。

小川淳也氏(立憲民主党 前政調会長):
残念ながら具体的で即効性のある成果は乏しかった。対面、顔を合わせてコミュニケーションをとることは継続的にやるべきで、日中首脳が果たすべき最低限の役割、責任だ。そんなに短兵急な成果を求めずに継続的に顔を合わせて話すことを求めたい。

橋下徹氏(番組コメンテーター・弁護士・元大阪府知事):
処理水の問題については中国に決定権を渡すというのはおかしな話になるが、国際機関主導で専門家に入ってもらうということであれば、次に何か懸案事項が日中間で生じた時に同じようなことを言える。中国サイドに何か日本が懸念する問題が生じた場合には、中国の専門家だけで議論するのではなく日本の専門家も入れてくれということも言える。これはきちんとしたフェアなルールとしてまとめたらいいと思う。

小川氏:
WTO(世界貿易機関)に提訴するという正当な道筋もある。かつてレアアースの禁輸で勝訴した経験もある。これは科学的なアプローチというよりは、中国の政治的な圧力であり、かつて、例えば、オーストラリアがコロナウイルスの起源を調査しろと言った時に中国は牛肉やワインの禁輸に踏み切った。中国の反体制活動家がノーベル平和賞を受けたらノルウェー・サーモンの禁輸に踏み切った。それと同列だ。挙げたこぶしをどうやって下ろしてもらうか、政治的にそのプロセスをお手伝いするというぐらいの話だと受け止めた方がいい。

松山キャスター:
中国のメンツをどう保つかという部分も外交の一つ。

小川氏:
だと思う。相互利益をきちんと確保するということだ。

橋下氏:
やはり言うべきこと、やるべきことはやってほしい。例えば、(中国による沖縄県・尖閣諸島周辺の)排他的経済水域内への海上ブイの設置。いきなりこれを撤去しろという声もあるが、法律上の問題などいろいろあるから、なんでもかんでも威勢よくやればいいとは思わない。少なくとも日本も中国側にブイを設置するなどすればいい。(日本も)設置して向こうが撤去するのならこっちも撤去するなど、何かアクションがほしい。それはできないのか。

林氏:
国際法上いろんな論点があるのは国会でも議論になっている。船舶の航行や漁業を中心に考えなければいけない。いろいろなオプションの中でこちら(日本)が撤去するのも含めてしっかり検討したらいいと思う。

松山キャスター:
それは中国側に通知をせずに日本の判断でブイの撤去を着々と進めるということか。

林氏:
国際法には「やっちゃいけない」とも書いてないし、「やっていい」とも書いてない。それくらいの姿勢で臨むことが大事だ。

橋下氏:
撤去がいきなりできないのなら、日本だって向こう側に設置ぐらいやったらいい。

梅津キャスター:
米中首脳会談で議論が平行線をたどったのが台湾問題。バイデン大統領が「中国は台湾に対する戦略を考え直す必要がある」と指摘したのに対し、習主席は「米国では2027年から2035年の間に中国が軍事作戦を計画しているとの報道があるが、そんな計画はない」と発言した。さらに米国が台湾への武器支援をやめるよう要求したという。

松山キャスター:
今回の米中首脳会談で習主席は「米国では2027年から2035年の間に中国が軍事作戦を計画しているという報道があるが、そんな計画はない」ということを自ら語ったという。あえてこういうことを言った習主席の意図をどう見るか。
            
林氏:
これはちょっと私も驚いた。(習氏は)「武力使用のオプションを排除しない」と今までずっと言ってきた。こうやってはっきり「計画はない」と言ったのはそれなりに周りで言われていること意識をしているのだろう。「武力行使のオプションを放棄しない」との発言と(中国)国内でどう整合性を取れるのか注目していきたい。

松山キャスター:
米国を刺激しないために、いったん台湾問題で鎮静化を図ろうという意図だということもあるか。

林氏:
(中国は)若干いま足元が大変なので、あまりことを構えるという時代ではなくなってきたというひとつの表れかもしれない。

日曜報道THE PRIME
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