高齢化社会となり増えている病気の一つが「認知症」だ。2025年には65歳以上の5人に1人がこの病気になるという推計もある。一方、加齢に伴う物忘れもあり、その判断は難しい。専門医に認知症と物忘れの違いを聞くとともに、最新の治療法、予防の方法を聞いた。

年々増加する患者数

「物忘れ、買い忘れはめったにない。買いたいものは頭の中に残っている」。そう話すのは、福井市に住む92歳の男性。この男性には認知症がある。

この記事の画像(9枚)

本人に病気の自覚はないが、家族は「お父さんが物忘れはしないと毅然(きぜん)と言っていたが、結構物忘れはたくさんある。何度も何度も伝えているが、やっぱり忘れてしまって、同じものを買いに行ってしまう。心配なことが色々とある」と話す。

国の調査によると、2012年の認知症患者数は約462万人。65歳以上の高齢者に占める割合は7人に1人だった。ただ、高齢者の増加や長寿化のため患者数は年々増加。2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると見込まれている。

認知症の専門家、福井大学病院の濱野忠則准教授はこの病気の原因について次のように説明する。

濱野忠則准教授:
一度正常に発達した認知機能が、後天的な脳の障害によって持続的に低下。日常生活や社会生活に支障をきたすような状態をいいます

認知機能の低下にはもう一つ、加齢による物忘れがある。認知症との違いは「日常生活に支障があるかどうか」。新しい出来事を覚えられなかったり、自覚がなかったりする場合は認知症に当てはまる。

最も多いのがアルツハイマー型認知症で、患者の5~6割を占めるといわれる。中等度以上になると、家族らのサポートが必要になる。

新薬「レカマネブ」

国内では9月、アルツハイマー病の新薬が初めて承認された。新薬「レカマネブ」は病気の原因物質を取り除くことで進行を遅らせる効果が期待される。

従来の薬では投与の対象が中等度以上だったが、新薬では軽度と、その前段階の軽度認知障害が対象になる。2023年内の使用開始を見込んでいる。

濱野忠則准教授:
18カ月投与することによって、偽薬を投与したグループと比べ、進行が6カ月遅くなるという結果が示された。短いと思われるかもしれないが、もし18年投与したら6年進行が遅くなる。そう考えるとかなり顕著な効果と言えるかもしれない

認知症を予防するために

ただ、早い段階で認知症に気がつくのは難しい。次のような症状が出れば、認知症が疑われる。

・同じことを何回も聞く
・日付がわからない
・自分で電話番号を調べて電話をしない
・預貯金の出し入れをしない

濱野忠則准教授:
認知症には生活習慣病が関係しているといわれている。高血圧、糖尿病、脂質異常症などは中年期のうちに治療しておくことが大事。また、運動も非常に重要だということが分かってきている

予防につながる運動量の目安は1日3,000歩から5,000歩。毎日、新聞を読んだり、緑黄色野菜を中心に食事を取ったりすることも効果的だという。

濱野忠則准教授:
もし症状があれば、家族がなるべく早く病院に連れて行くといい。もし認知症になっても心安らかに患者さんが過ごせるように、周囲が気を配ることが大事かと思う

(福井テレビ)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(9枚)
福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。