「アマチン」の愛称で親しまれた天野鎮雄さんが2023年11月5日の夜、亡くなった。87年の俳優人生をたどった。

名古屋にまっとうな新劇を残していきたいと「劇座」を創設

2021年10月に行われた、最後の大舞台、シェークスピア作「テンペスト」の稽古風景。座長公演はコロナの荒波を越えた。

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アマチンさんは1936年、名古屋市港区で生まれた。現在の愛知教育大学在学中に役者としてスタートを切り、その後、きら星のごとく名優を出した東京の「文学座」に入所。

そして1985年、「文化不毛の地」といわれていた名古屋で、妻で役者の山田昌さんらと「劇座」を旗揚げした。

幾度となく訪れる劇団存続の危機も、私財をつぎ込みながら公演を続けた。

演劇評論家の安住恭子さん:
ちんさんはすごく意識的に俳優になろうとした人だと思う。名古屋にちゃんとまっとうな新劇を残していきたいということで「劇座」をつくり、純粋に演劇を、面白いものをやっていくということじゃないですか。やっぱり演劇を愛していたんだと思いますね

アマチンさんは放送界でも活躍。深夜ラジオに昼ワイド、テレビの対談番組と人気司会者だった。

2012年、東海テレビ制作の映画「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」では、名優・樹木希林さん、仲代達矢さんを相手に見事な演技でスクリーンを飾った。

また、役者・タレントとしてだけではなく、演劇を志す若手の育成に力を尽くし、数々の賞を受賞。劇座の岡田一彦さんは、18歳から37年間、薫陶を受けてきた。

岡田一彦さん:
僕が役者で悩んでいる、なんかうまく表現できない、その時はそっと横に来て一緒に座って、「岡田君な、君はココが足りないんだよ、ココが足りないんだよ」とかね、いろいろちょこちょことアドバイスをくださるんですよ。「負けるな」とかね。そういう点では優しい人だなと思っていました。でも俳優として“瞬間湯沸かし器”的なところがあって、突然パンッと切れたりするところがあるんですよ。その落差というかね、これが俳優なんだって思いましたけどね。自分たちがこうやって芝居をやっていられるのも天野先生のおかげですし、芝居との向き合い方も教えてくださいましたしね。本当に感謝しかないです

演劇を愛し、俳優を全うした天野鎮雄さん。87年の人生だった。通夜は8日、葬儀は9日、お膝元の名古屋・今池で営まれる。

(東海テレビ)

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