前節の第40節では熊本相手に先制しながらも、逆転負けを喫した清水エスパルス。3位・ジュビロ磐田、そして4位・東京Vとの勝ち点差は1まで詰められたが、一方で残り2試合を連勝すれば自動昇格圏の座は揺るがない。
シーズン大詰め 連勝でJ1昇格へ
町田が優勝を手にしたことでJ1自動昇格の枠は残り1つとなる中、エスパルス、ジュビロ、東京Vの争いが熾烈さを増している。
残り3節となった第40節では、エスパルスが熊本に敗れたことで順位の入れ替わりが現実味を帯びたが、ジュビロと東京Vとの直接対決は共に譲らず1対1のドローとなったため、勝ち点差こそ縮まったものの、エスパルスは2位をキープした。
以前「徳を積むことが必要」と話した秋葉忠宏 監督。善行をしたからといって必ずしも勝利に直結するというものではないが、己を律することは普段の練習の真摯な姿勢へとつながっている。だからこそ、負けられない戦いを落としたにも関わらず2位の座を死守できた幸運を素直に喜び次節に臨む。無論、残り2試合を連勝で締めれば文句なしのJ1昇格だ。
そのために指揮官が打ち出したのは“凡事徹底”。シーズンも大詰めとなる中、新しいことにチャレンジするのではなく、これまでやってきたことを愚直に続けることの重要性を選手たちに伝えた。
また、勝利は自分たちだけで噛みしめるものではなく、チームを支えてくれる多くのサポーターやファミリーと分かち合うものであるということも再認識させた。
思い返せば今シーズンのエスパルスは開幕から7試合連続で勝利がなかった。ただ、指揮官が秋葉監督へと代わり、15試合連続で黒星知らずというチーム記録を作るなど、2位まではい上がってきた。チームが成長していることは誰の目にも明らかだ。ただ、だからこそ慢心や先入観は禁物で、当たり前のことを丁寧に徹底するよう呼びかけた。
次節はホーム最終戦。満員が予想されるアイスタで大宮の撃破を目指す。
秋葉監督「プロとしての自覚を再認識」

-熊本戦で敗戦も2位を維持できた
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
このチャンスをしっかりつかまないといけない。熊本戦は前半の途中までいい調子で、先制点を奪えたが、終了間際から全く集中力に欠けた。コーナーキックでの失点に続いて、その後の失点のシーンでも信じられないミスが出た。
「熊本も大したことない」「ホームで先制したから負けっこない」というデータを鵜呑みにして、慢心して緩みが出た。ハーフタイムに雷を落とすべきだった。だが、サッカーではミスがつきもの。その後に粘った守備を出来なかったというのが反省点。
そうしたことから今週は「凡事徹底」、当たり前のことを当たり前に厳しくやり続けることに取り組んだ。こんな状況でも我々はまだ2位にいられる。トレーニングへの心構えや私生活での取り組みを含め選手と共有した。
今さら奇抜なことや突飛なことをすることもなく、今までやってきた当たり前のことをしっかりやろうと思う。そしてそれを継続して行こうと。
-今日のミーティングでは何を
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
試合のVTRを共有した。その中で自分たちが勝つ目的について、自分のためや仲間のためととらえるのは基本だが、試合に負けてロッカールームに入っても、サポーターからは自分たちを応援してくれる「リバイブ」の歌声が響いていた。
今週は鈴与の全社員の方々がユニフォームを着て仕事をしてくれていると聞いた。いろんな人々がチームを支えてくれている。いろんな人々の願いや思いを背負っている。何のために戦うか。勝利の意味をもう一度考え、応援してくれる人とともに成長する、自分たちの存在意義、プロとしての自覚を再認識した。
勝たなければならない理由がたくさんあるほど、成し遂げた時の達成感はとんでもなく上がると思う。そうして喜びを分かち合う。夢を与え続ける。それがクラブの希望となりシンボルとなる。
苦しかろうが何があろうが最後まで戦う理由になる。ここで応えられなければプロのフットボーラーではない。そんな思いを共有した。そして、あのピッチに立てる選ばれた選手しか、それを具現化して表現することができないことも。あと2試合、その責任を果たそうと。
また、オフ明けはクラブハウスの清掃から始めよう、と。それで勝てるとは思っていないが、人間力を磨くのは大事なこと。ピッチ内外での振る舞いを含めて、人として成長する要素も継続して行きたい。
-熊本戦はチームの教訓となるか
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
この順位にいるからこそ、そう言っていられる。それはこれまで上位対決で勝ってこられたからこその結果。そこはしっかりと自信にして、その上で熊本戦の敗戦を教訓として、このままではダメなので、ダメなものは正すべき。
あの試合、たまたま2年前に死んだ父親の命日で、「そんなに甘くないぞ」「やるべきことがあるだろう」というメッセージだと受け止めている。皆さんの思いに応えるために、自信と集中力を持って、最後の最後まで戦う執念・執着を持って、どれだけ超アグレッシブに、超攻撃的にできるか。死にもの狂いであと2試合、凡事徹底して、悔いなく必ず結果を出したいと思う。
-大宮戦に向けた対策は
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
大宮はクロス攻撃が多いので守備対策の練習をした。熊本戦であったセットプレーから失点も含めて。横からのボールに対する守備では良い対応をしていた。
カウンター・クロス・セットプレーの三大得点パターンは重要。いつもと少しテイストを変えてやった。最初は攻守同数でやっていたが、選手の意見で攻撃を多くした。「それでも守れる」という守備側の選手からの考えで、自分たちで改善し難易度の高い練習にトライするという意欲を含めて頼もしいかぎり。
中山選手「力尽きるまで走る」

清水エスパルス・中山克広 選手:
先制点を取った時は、右側の大外(原選手)がフリーになると、中に入るおとりの動きをしていたら、乾選手からのパスが触られそうな角度だったので、とっさに足を出してターンして前を向き、冷静に「空いてる」とコースが見えたので気持ちで打てた。
他にも惜しいチャンスはあった。今チャンスが多く来ているし、乗っているところもある。守備も攻撃もたくさん関わっている。そうできる理由は「みんなと目が合うこと」。そこはコンビネーションにつながっている。自分の“常に狙っている意思”が、仲間に通じる場面が増えている。
勝ち点1リードの2位というポジションは、より一層チームが引き締まった感じ。負けてもチャンスをもらっている、と。
練習でも集中力がすごく上がっていて決まっているシュートが多かった。今の得点はキャリアハイ(8点)で自信につながっている。前回の試合も誰よりも走るという自覚があり、前半から飛ばしていたことがGPSの計測からもわかった。
選手の層も厚いので、力尽きるまでチームのために走るというのは意識している。大宮戦は先制できればより相手も焦ってどんどん前からきて、背後が空いてきてプレーできると思うので頑張りたい。
サンタナ選手「自分たちの結果次第」

清水エスパルス・チアゴ サンタナ選手:
また難しい試合になる。相手もいい状態、結果を出さなければならない。だが、ホームで2位としてやれる。落ち着いて集中できれば勝利に近づけるのではないかと思う。
今週は熊本戦でのミスを修正している。自分たちは細かいところで上手くできなかった。チームに貢献し、もし得点で貢献できればいいと思う。攻撃もそうだが、守備の貢献も大事。何よりも勝利すること、ゴールすることが大事。
残り2試合なので自分たちの結果次第。ジュビロ、東京Vを気にせず、自分たちのことだけを考えて試合に臨みたい。
吉田選手「隙を与えないように」

清水エスパルス・吉田豊 選手:
大宮の情報はスカウトチームから入っている。チーム内の距離感とかは選手間の問題で、先週と変わらず練習に落とし込まれている。その対応の中で制限を付けた練習をしたが、ルールについて、考えた選手から実践に即した提案がいろいろあったがポジティブにできている。みんな大人で、言い方を考え伝えている。最後は鈴木義 主将やボランチの選手がまとめてくれた。
こうした状況について初体験、経験のある選手、緊張している選手もいれば力に変えられる選手もいる。チームの総体として経験値ある選手が多く「楽しみとしている」選手が多くまとまっていると思う。ただ、中には試合前に吐き気を生じる選手もいる。
プレーオフを含めてあと1カ月。2試合しかこのチームでやれる期間はない。それをしっかり過ごしたい。
今日のミーティングで大宮は崩す戦略はなく、長いボールを入れることが多いのでラインコントローグしないと。ただ、その後のこぼれ球はポイント。そこで全員守備、全員攻撃をできるようにしないと。大きく蹴って背後を狙う大宮のストロングポイントで、リスク管理するために攻撃陣も戻って守備に加わることが重要。
熊本戦、先制点を取った後にネガティブな感じになるのはセットプレーでゲームが途切れた時。空声でもいいから士気を高め味方を鼓舞する、意識を奮い立たせる行動が必要。
残り2試合、簡単ではないが攻守ともに意識を高めるのが大事。そこを出来れば。今の清水だったら大丈夫だと思う。
でも熊本のようにチャンスを与えてしまったら、再び勢いを戻すのは大変。1点を取ったら相手をねじ伏せる。そうした隙を与えてしまわないようにすべき。次の試合、支えてくれるサポーターのもとで出来ればきっと負けない。
山原選手「J1で戦える希望を」

清水エスパルス・山原怜音 選手:
凡事徹底として、クラブハウスの掃除はみんなでやった。意味合いはいろいろある。もう一度、チームとしてやってきたことを隙なく見つめ直すこと。
個人としては、練習の準備やメンタリティ―などを抜け目なくやっていくということと受け止めている。
熊本戦は負けてしまったが、前半はゴール前に迫るいいサッカーができていた。ネガティブだけでなく、体現できているところもあった。自分たちのいい感覚で進められている時に、ちょっとしたことをルーズにしてこういう結果になった。抜け目なくリスク管理できていれば、自分たちのゲームにすることができた。そこをきちっとやるのが凡事徹底の意味の1つだと思っている。
大宮はこの1カ月でかなり自信を持っている。直近での成績はあの順位にいるチームではない。負け、引き分けで降格が決まる。去年の自分たちと同じ立場。死に物狂いでやってくると思う。
今シーズンはあっという間。4カ月間のケガもあった。「もうホーム最終節か」という感じ。1年間支えてくれたサポーターに対して良いサッカーをして、勝って、J1で戦える希望を感じて、笑顔で帰れるようしなくてはいけない。
(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)