J1昇格争いも佳境に入った前節(第39節)、清水エスパルスはいわきを相手に7対1と大勝した。一方で首位を走る町田は勝利によって今季2位以内が確定。つまりJ1に自動昇格できるのは残り1枠しかない。

指揮官はライバルの動向を気にせず

前節、いわきに完勝し2位をキープしたエスパルス。ただ東京Vとジュビロも勝利したため、両チームとの勝ち点差は2で変わらない。唯一変わったのは、得失点差の関係でジュビロと東京Vの順位が入れ替わったくらいだ。

ただ、秋葉忠宏 監督はライバルの動きを気にしない。なぜなら残る3試合を「3連勝すれば自分たちの力で自動昇格できる」からであり、目の前にある1試合1試合にフォーカスすることを重要視している。

その意味で、いわき戦の7対1というスコア、さらに途中出場の選手が多くの得点に関わった結果に自信を持っていて、「ハイレベルで公正なポジション争いが行われている証明」と胸を張る。

その上で「まず一戦必勝で勝つ。圧倒的な力を見せて勝つということ」としつつ「それができない時には、我慢強くしたたかに勝負強く勝つ」と話す。

第40節でホームに迎えるのは熊本。指揮を執る大木武 監督はボールと人が動く王道のフットボールを信念とする指導者で、奇をてらったロングキックや穴熊的守備網を敷く発想はまずないだろう。

試合はやってみなければわからないものの、スペクタクルな展開が予想される。一方で、背負う目標の高さが両チームで異なっているのは確かだ。

1年でJ1復帰へ。多くのサポーター・ファミリーが見守るアイスタで、エスパルスの選手が目標への意識をしっかり持って戦うことを期待したい。

秋葉監督「他力に頼る必要が全くない」

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-いわき戦を振り返って
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
点数差ほど圧勝していたかというと1失点したこと、立ち上がりの入り方、カウンター対応に関して誰が出ていくのか、改善しなければならないと思った。

攻撃面は先にいつ点が入るか。うちは早い時間に来ればこの試合のようになるが、熊本さんは前半にパワーがあるチーム。そういったところは注意しておかないと。次節はホームのサポーター・ファミリーがいる空気の中で闘えるのはいい。

-途中出場の選手が輝くゲームとなった
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
もう嬉しい。トレーニングから見せている選手を使っている。我々の見る目も正しいと安心できたし、パフォーマンスの良い選手を連れて行っている。

ハイレベルで正しい競争をしていることが証明されると思う。本人たちも自分の価値を再確認したし、「スタートから使えよ」という野心も感じる。チームを活性化させるいいポイントになった。  

-北川航也の良さは
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
動き出しが1回で終わらず、2回・3回とできるところ。背後に出るところ。スペースランが良くなっているし、プラスしてポストプレーもしっかりと体を入れながら、北爪へのアシストはボールを隠して最短最速で相手の急所にパスを出していた。

敵を背負いながら周りの味方が見えている。「調子がいいんだな」と感じる。あとは得点が…。3発くらい打っていたが「決めてくれ!」と思った(笑)

地元のメディアが口にしていたが「北川やサンタナがどうしてあんなに走るんだ?」「ユニフォームを汚してスライディングするんだ?」という話を聞いて嬉しくなった。選手にも話したが、1つはアウェイにもかかわらず、サポーター・ファミリーがいることで、そういうプレーができる環境があること。

もう1つ重要なのは本人たちの意識の高さ。攻守において全力でやることを「一流」「本物」と考えていること。また「チームのエンブレムがそうさせている」ということも伝えたい。選手が全力でやることやフットボールを楽しめることが当たり前のエスパルスを、そんなクラブにしていければいいと思う。

-中山の得点は久しぶりだった
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
5カ月ぶり、町田戦以来だった。びっくりした(笑)先週の紅白戦でわかった、自分の良かったところ、裏に走る速さやドリブル突破など、それに加えて中で受けてもプレーできるとか、元々の中山のストロングポイントが整理されて、調子の良さは見極められた。

いい選手の中から「さらに良い選手」から選んでいる。紅白戦の良さがそのまま出たのだと思う。

-これから当たる熊本・水戸は前回戦で苦しんだ相手
清水エスパルス・秋葉忠宏 監督:
対戦はかなり前。今はシチュエーションが違う。町田の2位以上という昇格の座も決まり、スタッフに「おめでとう」の電話を入れた。

もう1つを獲りに行くということで、ジュビロやヴェルディのことも、気にするということ自体が違うという話しをしている。他力に頼る必要が全くない。他のチームに一喜一憂する必要がない。

目の前のゲームに集中するだけ。一戦必勝で勝つ。圧倒的な力を見せて勝つということ。それができない時には、我慢強くしたたかに勝負強く勝とうと。この2つのメンタリティーを持ち合わせよう。下位チームは関係ないと伝えている。

まずは目の前の熊本戦に集中して、いい準備をして試合を迎えたい。そうした機運もチームで高まっている。いわき戦の内容ならまず負けない。だから自分たちにまずフォーカスして、自分たちのやるべきことをやろうと。

この2戦はホームでできる。自分たちが自分たちの力で引き寄せた流れを離さず、より加速させて、サポーター・ファミリーと一部の隙も見せずにやりたいと思う。

北川選手「得点は常に狙っている」

清水エスパルス・北川航也 選手:
久しぶりの試合だったし、楽しかった。自分自身の点も欲しかったが、チームが勝つことが第一だし、追加点を許さないところも大事だったので、その意味で途中から出た選手の頑張りが報われたし、そこの絡めたというのも自分のいいモチベーションになった。

それまでゲームを作ってくれた先発選手のおかげだし、特長のある選手が出ている分、そういったものを活かすのがチームとして必要だと思うので、いい形では入れたと思うし、流れを止めることなくプレーできたのでは。

残り3試合、どの相手も特長あるチームだと思うし、チームごと背負ったものがあると思うし、まず2試合はホームでできるのでアドバンテージを活かし、積極的に攻める必要があると思う。どの試合も簡単ではない。自分たちのできること、もっている力を最大限出せれば、必ず結果はついてくる。J1昇格の喜びをサポーターと分かち合いたい。

大事になるのは先制点だと思う。先に獲られれば難しくなる。後ろかしっかり守ってくれる分、前がどんどん前に行ける状況になっているので、前の選手がいかに得点を決められるかが鍵になってくる。

今シーズンも残り3試合になってしまった。J1昇格という目標を掲げてチームが始動して、残り3試合、自分たち次第で昇格できるところにつけておいて、その1つの助けになれればと思うし、自分のプレーをするとともに、チームの勝利に貢献できるようにしたい。

FWである以上、得点は常に狙っているし、自分はアシストもできる選手なので、そこを出せればと思う。熊本とはJ2時代に2得点挙げているが、その時とはチームも変わっているが、アイスタでのいいイメージを持っている。

白崎選手「目の前に集中するだけ」

清水エスパルス・白崎凌兵 選手:
(いわき戦は)前半にトラップミスで決められないシーンがあり、挽回しようと思っていた。試合の流れで、相手が自分のランニングについてこれていないなと感じていて、カウンターから3列目が飛びやしやすい状況になっていた。なので「来るかな」という感覚はあって、難しい角度だったが冷静に決められた。

得点者が数多く出たのは、ここに来てチームとしていい状態だと思う。サイドバック3人が獲ったということは、攻撃の厚みが出ている証拠だと思う。

(4Bを3Bに途中で変更したことを受けて)シンプルに考えれば後ろが固くなり、攻撃時には枚数が増えるということ。ただそこには「走力」が求められるし、守備の5枚を3枚に変えるので相手より速く走ることによって相手より優位にできるということ。

後半の右サイドは「北爪と中山のラインで行けるな」と感じていて、相手の背後をどんどん使う認識だった。相手がされて嫌なことを後半はできていたと思う。北川の動きもめちゃくちゃ良かった。途中から入ってきた選手の力でチームがパワーアップした、より良くなった、良い循環だと思う。すごくいい勝ち方ができたと思う。1失点は少し怠慢な部分が出たな、と。

ここ数試合で変わったのは背後の動きができたこと。背後を攻めると相手が広がるし、それによってコンビネーションが生きてくる。ずっと足元、足元だったときは幅がなく、背後の動き出しもなく狭くて窮屈だった。背後を取る選手がいると相手は後ろ向きにならなければならない。また、流れを読んで先に動くプレーが形になってきていると思う。

残り3試合というのはあまり意識していない。J2から昇格時の9連勝と比べて、雰囲気は悪くない。「自分たちが勝ち続ければ確実に欲しいものが手に入る」という所にいるので、自分たちの目の前に集中するだけかなと。

前半戦の熊本には苦しめられた。違う結果でもおかしくなかった。スタイルははっきりしている。ボールを動かして、相手を動かして、切り替えが速く、前からプレッシャーに来る。それを変えることなく大木監督が一貫してやってくると思う。

速くプレッシャーに来るなら、背後を取るか、より速く動かすか、やるべきことは見えてくる。相手のパスワークや連動した攻撃には体を張って守るとか、基本的なところ。目の前の敵に負けない、ついていく。そういうことができれば結果は出てくると思う。

中山選手「競い合いが実現している」

清水エスパルス・中山克広 選手:
チームの状況として、交代選手があそこまで得点を獲れるのはすごい。誰がスタメンで出てもおかしくないということで、だからこそスタメンで出ることの責任感と緊張感とか日ごろからある。

秋葉監督が前から言っていた選手同士の競い合いが実現している。めちゃめちゃ厳しい。岸本選手にもヒヤヒヤしている。「克くんを削るからな。俺が出るからな」と冗談を言う(笑)

いわき戦の先制点はGK権田選手が持ったら基本的に走るという風にしているので、あの瞬間もスペースが見えたので、欲しいと思って走っていたので、見てくれているのだなと。相手DF2人がぶつかったラッキーな機会だが、最後のところはもうちょっと冷静にコースを狙えたらなとは思ったが、いい形で入ったので良かった。

山原選手「チームでチャレンジ」

清水エスパルス・山原怜音 選手:
自分の得点になった時は、ボールを奪ってカウンターになるなと予測して、サンタナ選手が持ち出したら左に来る、そこにフリーになった乾選手が待っているなとわかった。

ただサンタナ選手が起点になっている分、誰かが上がらなくてはいけないという感覚はあったし、自分がウイングで出ている以上、厚みを持たせるには走らなければいけないというのがあった。

乾選手が内側で受けたのでインナーラップだなと。最初はクロスを上げようと思っていたが、パスが出た瞬間に打てるなと思ったので打った。角度はなかったが左足で打てた。多分、乾選手からの「シュートを打て」というメッセージがついたパスだった。

点を獲るサイドバックでありたいと目指している個人としての思いと、あの時で4点目が欲しいというチームの状況だったので、うれしかった。高校が福島だったので、そこで今季初得点が獲れたのは大きい。高校の担任も来てくれた。頑張っている姿を見せられた。

相手がリスクをかけて攻撃してくるチームだと、奪った後に出ていくチャンスがある。次の熊本もそういったチームなので同じようにチャンスがある。もう1つはジュビロ戦の後、練習でスプリントを意識づけられて、それが自然に出た。

残り3試合プレッシャーや緊張、不安もある。けれど、この状況でいかに緊張せずに、自信をもってやることが大事なのはわかっている。チャレンジしてミスしたほうが後悔はない。秋葉監督からは「この緊張を楽しめ」と言われている。チームでチャレンジして、いい雰囲気を作っていけば前向きに行ける、それが大切。

原選手「慌てずにやるべき」

清水エスパルス・原輝綺 選手:
(得点は)久々だったんで気持ちよかった。ボールは少し難しいところにこぼれてきたが、上手く体を折りたたんで合わせられた。ああいうことは練習後に同じようなことをやっていて上手くできた。

今シーズンは全チーム初対戦なのでわからないが、相手がガツガツやってくる難しい試合だった。これからもそうしたチームが来るので、上手くいなしつつ、先制点を獲ることが重要だと思う。いわき戦でこのような結果となり、残り3戦に向けたいい経験になった。

熊本は嫌なチーム。ボールも長く持たれる。自分たちは慌てずにやるべき。それができないとJ1には上がれない。今ここで力を付けなければ同じことの繰り返しになる。残り3試合、相手の胸を借りるつもりで臨まなければならない。

カルリーニョス選手「勝利が最優先」

清水エスパルス・カルリーニョス選手:
コンディションは良いし、シーズンの終わりまであと3試合という終盤だが、チームの勝利が最優先。貢献を考えながら勝利にこだわりたいと思っている。

前回の熊本戦は、はっきり覚えているが難しい試合だった。相手は特徴あるサッカーで、ボールを支配することにこだわっていた。得点は最後の最後に入った。粘り強くやった。

今回は自分たちのホーム。最初から最後まで自分たちが支配しないといけない。粘り強くチャンスをモノにすることも重要。できれば前半の早いうちに。上手くいっていることを継続すること。選手全員の力を100%出すこと。

今シーズンは早い時期に監督が代わったが、選手は代わらなかった。秋葉監督がやりたいサッカーをはっきり言って、選手が理解して、ハードワークすることによって結果が出ていると思う。

自分たちの力で昇格できるチャンス、しっかり勝って昇格したい。今年はゴールの近くでプレーできていて、点を獲りたい気持ちも高まっていて結果になっている。シーズン通して維持したい。

(テレビ静岡 報道部スポーツ班・外岡哲)

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