コロナ禍でリモートワークが広がり、地方移住への考え方に変化が見られた。だが、移住に関心があっても、なかなか踏み切れない人が多いのでは。そんな人たちの水先案内人として、広島県には移住コーディネーターという役割の人たちがいる。話を聞くと、移住の前に地域と関わりを持つすべがあることがわかった。

広島は2年連続流出人口ワースト1位

10月29日、東京・千代田区で開かれた広島県主催の移住フェア。

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会場では、広島の18の市と町や職業紹介会社などがブースを出し、移住に関心のある人たちの相談に応じた。

神奈川在住の来場者:
尾道など海側を旅して、海がきれいだったんで、これを毎日見れたらいいなと思い、移住を考えた。

東京在住の来場者:
(広島の魅力は)キャラが濃い人が多い。そこに人間味、温かみを感じる。

広島県は新たに県内に転入する人より県外に転出する人の数が全国で最も多く、2021,2022年と2年連続ワースト1位だ。そんな事情もあり、県は移住者の呼び込みに力を入れる。

その効果は、こんなところにあらわれている。東京のふるさと回帰支援センターと共催の移住セミナーの参加者数は2年連続で1位だ。

会場内での移住セミナー
会場内での移住セミナー

今回の移住フェアも大規模に行われ、広島県特有のシステムである移住コーディネーター、つまり先輩移住者らによる移住のノウハウのセミナーも開かれた。

移住希望者の水先案内人「移住コーディネーター」

移住コーディネーターのシステムを説明すると、県や東京のふるさと回帰支援センターに来た移住相談は、いったん広島県内の各地域に12人いる移住コーディネーターに回される。
移住コーディネーターは、希望者の要望、事情を勘案して、移住が適当かどうかをアドバイス。移住が適当となれば、その人にあった地域、キーマンを紹介するといった流れ。

この時点で、移住しなくても広島と関わりのある仕事を東京など今住んでいる場所からリモートで行うという選択をする人もいるそうだ。

尾道市出身で、2011年にUターン、現在は横浜、尾道の2拠点でwebデザインなどの会社を営む酒井裕次さん、県から移住コーディネーターを委託されている。

移住コーディネーター 酒井裕次さん:
移住が必ずしも目的ではなく、あくまで手段。東京にいながらも地方に関わるすべはある。例えば、地域の企業が首都圏に進出する際のサポートとか。あるいは観光のプロモーションとか。

2拠点居住となると、やはり経済的にある程度余裕がないと実現が難しそうだが、リモートワークの広がりで、今住んでいる場所で、地域との関わりをもった仕事をすることができるようになった。

副業で地域の仕事をリモートで行い「関係人口」に

「関係人口」という言葉がある。その地域に住んではいないが、何らかの関わりを持つ人のことで、仕事などで定期的に訪れるケースから、観光で訪れ、リピーターになるケース、また、ふるさと納税で定期的に寄付をするケースも入る。

移住に関心を持ったら、まずは、その地域との何らかの関わりを持ち、関係人口の一人になったうえで、関わりを重ね、移住に結び付くパターンも多いそうだ。

移住コーディネーター 酒井裕次さん:
今住んでいるところで積み上げた実績をすべて捨てて移住し、またゼロから始める必要はない。その実績と築き上げた人間関係をそのまま残したまま、移住先で新たな関係を築くことができるように、移住コーディネーターが自分たちの経験を活かしてサポートする。

コロナ禍以降、リモートワークや副業を認める企業が増えた。フリーランスではなく、企業に勤める人でも、移住せずに、関心のある地域に関わる仕事をできる環境が整いつつある。
移住の前に「関係人口」としての一歩は、思ったよりもハードルが低いかもしれない。

(テレビ新広島)

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