10月に入り、小学校は運動会シーズン到来。少子化が進む愛媛・大洲市の河辺小学校では、子どもたちと地域が合同で運動会を開催し、ふるさとへの思いと絆を深めた。
運動会の主役は3人の子どもたち
大洲市の中心部から車で約40分。山あいの町にある河辺小学校で10月1日に恒例の運動会が行われた。
この記事の画像(17枚)場内アナウンス:
スタートしました!熾烈(しれつ)なきょうだい争いがデッドヒートを繰り広げております!
かけっこで1対1の真剣勝負を繰り広げるのは、河辺小学校6年生の梅木菜々子さん、そして菜々子さんの弟で4年生の創哉さん。
実はこの運動会、菜々子さんと創哉さん、そして2人の妹の雫ちゃん(4)の3人のきょうだいのために町を挙げて行われたのだ。
現在、河辺小学校に通う児童は菜々子さんと弟の創哉さん2人だけ。2人に「河辺小学校の好きなところ」を聞いてみた。
梅木菜々子さん:
人数が少ないのもあって一対一で授業ができる。先生と仲良くなれる
弟・創哉さん:
人数が少ないからこそ地域の人と交流することができる
地域で唯一の小学校の河辺小学校。34年前の平成元年には70人の児童がいたが、2000年代中ごろから子どもの数が減り続け、小学校単体で運動会を開催することが難しくなった。
河辺小・長谷晃徳校長:
子どもと先生と地域の人に関わってもらわないと運動会もできません。地域の人も楽しんでもらえるように子どもと一緒に作り上げられたら
地域の人に「元気な姿を見せたい」
2015年から始まった地域参加型の合同運動会。この日は菜々子さんと創哉さんの妹の雫ちゃんも参加して、本番に向けた練習を行う。
きょうだい3人は先生と一緒にパフォーマンスの練習やプログラムの流れを確認した。
運動会に向けて、児童2人にどんな姿を見せたいか聞いてみると…。
弟・創哉さん:
(運動会で)久々に河辺に帰ってきた人もいるから、自分が元気に走って元気な姿を見せて安心してもらいたい
梅木菜々子さん:
全力でやり切る姿を見せたい。小学校最後の運動会になるので、やっぱり本音は格好いいところ見せたいな。多分、家族も出ると思います
弟・創哉さん:
わざわざ店を休んで来てくれるので、これはもう頑張らなくちゃと思いますね
約150人による“町を二分する戦い”
そして迎えた運動会当日。
地域の人たちが続々と河辺小学校に集結。2023年は菜々子さんら3人のきょうだいのために、なんと約150人が参加した。
姉の菜々子さん率いる白チームと、弟の創哉さん率いる赤チーム。まさに“町を二分する”戦いだ。
梅木菜々子さん:
絶対勝つぞ!おー!
弟・創哉さん:
優勝するぞ!おー!
オープニングを飾った「かけっこ」は菜々子さんと創哉さんの一対一の真剣勝負。
抜いて抜かれて、接戦を制したのは…菜々子さん!「お姉ちゃん」の意地を見せた。
続いての競技は「車輪転がし」。
棒で車輪を押し進める一見シンプルな種目だが、実際にやってみるとなかなか難しいようで…。苦戦しながら進める人の姿もあった。
続いてパラバルーンを使ったパフォーマンスでは、子どもたちや先生が河辺小学校で生まれ育った「ツバメ」に扮し「家族の絆」を表現。
ひときわ体の小さな雫ちゃんは、大きなパラバルーンに身体を持っていかれそうになるが…。
妹・雫ちゃん:
ジャンプして(頑張った)!
弟・創哉さん:
頑張って耐えることができたそうです
3きょうだいの力を合わせた演技に、会場は温かい拍手に包まれた。
続いては、借り物競争。
お題を叫ぶ女性:
小学生2人!
名前を呼ばれて走り出す創哉さんと菜々子さん。3人で手をつなぎゴールした。
地域が一体となる“特別な運動会”
参加した地域の人に話を聞くと…。
参加した女性:
疲れました。子どもたちと一緒に走って楽しかったです。何十年かぶりに思い出しました
参加した男性:
やっぱり盛り上げないといかんよね。子どもたちが人数少ないじゃないですか。我々ができることはさせていただいて、地域を盛り上げようと
参加した女性:
地域も高齢化なんですけど、一生懸命支えていく感じ
運動会には菜々子さんらきょうだいの両親も参加した。
母・香代子さん:
こんなにたくさんの人が運動会に来たいと思って来ていただいているのがすごく伝わるので本当にうれしい。(子どもたちが)自分の役割を地域、学校の中で分かってやっているのが立派だなと思います
梅木菜々子さん:
一番はやりきったっていう感じ。たくさん来ていただいて、温かい声援を送ってもらってすごくうれしかったし、やっぱり河辺は地域一体で運動会ができて幸せだなと思いました
かつてのにぎわいを取り戻したような河辺小学校の特別な「運動会」。
校庭に響く地域のエールが、子どもたちのふるさとへの思いを育んでいる。
(テレビ愛媛)