岸田首相は12日、将棋で史上初の8大タイトル独占を果たした藤井聡太八冠に内閣総理大臣顕彰を授与する方針を表明した。
内閣総理大臣顕彰の第一号は1966年
内閣総理大臣顕彰とは1966年に佐藤栄作内閣の閣議決定に基づき設けられた表彰で、「国家、社会に貢献し顕著な功績のあったもの」を顕彰するものとされている。
表彰の対象は次の6つに該当して「特に顕著な功績があり、全国民の模範と認められるもの、その他内閣総理大臣が表彰することを適当と認めるもの」とされている。
1、国の重要施策の遂行に貢献したもの
2、災害の防止及び災害救助に貢献したもの
3、道義の高揚に貢献したもの
4、学術及び文化の振興に貢献したもの
5、社会の福祉増進に貢献したもの
6、公共的な事業の完成に貢献したもの
内閣総理大臣顕彰はこれまでに30回贈呈されている。
第1号は1966年で、ハンセン病の治療に尽力し「日本のシュバイツァー」と呼ばれた宮崎松記氏、稲の品種改良に尽力した岡田正憲氏ら計4人に贈られた。
その後は、よど号ハイジャック事件で冷静に対応した機長・CAと、人質の身代わりになった山村運輸政務次官、目撃した強盗犯を追跡し殺害された大学生、青函トンネルを完成させた日本鉄道建設公団、全日空機ハイジャック事件で死亡した機長らが受賞している。
スポーツ・文化の分野の第1号としては、1968年にメキシコ五輪で3大会連続金メダルを獲得した男子体操チーム、2大会連続金メダルに輝いた重量挙げの三宅義信氏らに贈られた。
その後はハンマー投げでアジア大会5連覇の室伏重信氏、世界自転車スプリントで10連覇の中野浩一氏、ゴルフ米ツアーで賞金女王となった岡本綾子氏、Jリーグの発展に貢献したジーコ氏、大相撲で幕内在位100場所を達成した魁皇関、インディ500に優勝した佐藤琢磨氏、ゴルフのマスターズで日本人初優勝を遂げた松山英樹氏らに贈られた。
将棋界では、羽生善治氏が初の七冠制覇を達成した際に贈られ、囲碁の井山裕太氏も七冠制覇の際に授与されている。両者はその後、羽生氏が永世七冠、井山氏が2度目の七冠制覇を達成した後に国民栄誉賞を授与された。
国民栄誉賞の方が“格上”
なお国民栄誉賞は「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があり、内閣総理大臣が目的に照らして表彰することを適当と認めるもの」が対象で、国民の感情や総理大臣の主観がやや色濃く打ち出されている。
この2つの賞の価値が話題になったのが、高橋尚子氏が女子マラソンで初の金メダル、田村亮子氏が柔道で3大会連続メダルにして自身初の金メダルを獲得した2000年のシドニー五輪の際だ。この時は、高橋尚子氏が日本女子陸上初の金メダルだったことなどが勘案され、高橋氏に国民栄誉賞、田村氏に内閣総理大臣顕彰が贈られ、国民栄誉賞の方が格上という位置づけが明確になった。
藤井八冠も今後、前人未踏の永世八冠を達成するなどした際には、国民栄誉賞の授与が検討されることになりそうだ。