静岡県議会・総務委員会では、10月4日から川勝知事が提出した給与の減額に関わる条例案について集中審査した。こうした中、最大会派の自民改革会議は附帯決議を付した上で賛成する見通しとなった。

すべての始まりは“コシヒカリ発言”

静岡県の川勝平太 知事をめぐっては、2021年の選挙応援で口にした“コシヒカリ発言”をきっかけに県議会から辞職を勧告された際、「年末の手当・ボーナスとか12月の俸給は全額、県民に返す」と公言しながらも実行せず、この問題に端を発して2023年の7月定例会では県政史上50年ぶりに不信任決議案が提出される事態に発展した。

すべての始まりは”コシヒカリ発言”から(2021年10月)
すべての始まりは”コシヒカリ発言”から(2021年10月)
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これを受け、川勝知事は9月定例会に当初返上するとしていた約446万円と同額に相当する2023年12月分の給与とボーナス、それに11月分の給与の一部を減額する条例案を提出している。

条例案の提案理由を述べる川勝知事(9月21日)
条例案の提案理由を述べる川勝知事(9月21日)

ただ、川勝知事が説明した提案理由は「知事の職にある限り、辞職勧告を突き付けられている身であることに変わりない」「議員とのコミュニケーションを十分に図りながら、公人・知事としての職責を果たすとの思いで県政運営に取り組む」というもので、最大会派の自民改革会議・増田享大 代表が「知事の反省の思いがすごく増したという感じは受け取れなかった」と評したほか、第3会派の公明党県議団・蓮池章平 団長は「全体的によくわからなかった」とコメントし、無所属の桜井勝郎 議員も「とにかく説明が不十分」と厳しい見方を示した。

川勝知事の発言に“変化”?

その後に行われた質問戦で、川勝知事は6月定例会で「給与を返上するための提案に向けて様々な努力や調整をした」「提案したいとの思いは変わっていない」「条例案を審議いただける環境に変わったと認識した」などと発言したことで、自民改革会議を中心に「議会に責任を転嫁した」と非難する声があがり不信任決議案が提出されるに至ったことを意識してか「1年半ほど放っておいたのは主観的な判断として、この案を出しても通らない、通らないような条例案を出しても意味がないと勝手に思っていた」などと述べた。

静岡県庁 本館
静岡県庁 本館

しかし、自民改革会議は「説明が不十分」として川勝知事に総務委員会への出席を求める考えを明らかにする。

8年ぶりとなる常任委員会への知事召致

こうした中、10月4日に始まった総務委員会で西原明美 委員長は「条例案については知事自身の政治活動における不適切発言に対して自らペナルティとして提出されたものであることから、説明者として知事に出席を求める」ことを提案し、知事を召致した上で集中審査が行われた。

総務委員会に召致された川勝知事(10月4日)
総務委員会に召致された川勝知事(10月4日)

川勝知事は「私の主観的な判断で出していなかった。責任はすべて私にある」と改めて自らの非を認めたが、どういう根拠で“446万円”を算出したのか問われると「比較の基準はない。この年の失態はこの年の内にしっかりと果たすということで12月分の給与とボーナスを返上するとした」と述べた。

一方で「この金額で妥当だと今でも思っているのか?」という問いには「偶然、(辞職勧告の)時期が年末であり、日本は“年改まると気持ちも改まる”ということで、金額ではなく知事心得5箇条を自らに課した」と答えるなど、質問と答弁がかみ合わない場面も多かった。

県議会・総務委員会(10月4日)
県議会・総務委員会(10月4日)

このため西原委員長から注意・指摘を受ける場面が何度かあり、委員の中からは「議会との意見をまとめられない人がどうやって対外的に意見とまとめられるのか不安」と突き放すかのような意見もあがった。

終了後、川勝知事は「私のするべきことは集中審査で委員の質問に丁寧に真摯に誠実に答えること。それをしてきた」と胸を張ったが、西原委員長は「理解がお互いに擦り合ってないというか、(答弁が質問に)沿っていないところがある」と真逆の見解を示した。

攻め手を欠いた最大会派 

とはいえ、集中審査で自民改革会議に所属する委員が川勝知事を“攻めきれなかった”のも事実だ。委員会終了後の会派控室には“敗戦ムード”が漂い、この時点で「反対」または「知事に条例案の取り下げを迫る」という道は閉ざされた。

残された選択肢は「原案に賛成」「附帯決議を付けて原案に賛成」「原案に反対した上で修正案を提出し賛成」の3つ。

自民改革会議の役員会(10月5日)
自民改革会議の役員会(10月5日)

翌5日朝に役員会を開いた自民改革会議は、判断を代表・副代表・政調会長の三役に一任することにした。

三役一任…会派内に残ったのは禍根だけ

そして正午過ぎ。所属議員が集められ、三役から伝えられたのは「附帯決議を付けて賛成」する方針だ。ただ、議員の中には給与やボーナスについて「〇円を減じた額とする」となっている条例案の文言を、「知事の意思で減じることが出来る」旨に差し替えた修正案の提出を求める声が少なからずあり、三役の方針に異を唱える意見も出たが受け付けられなかった。

自民改革会議所属議員への報告(10月5日)
自民改革会議所属議員への報告(10月5日)

関係者によると、附帯決議には「議会が求めているのは、あくまでも辞職」「あくまでも知事が自発的に減額する」という趣旨の内容が盛り込まれる見通しだ。

以前、野党のある幹部は「自民党は10ある事柄のうち、1つでも一致すればまとまれる。野党は1つでも異なれば分裂する」と自嘲気味に話していた。だからこそ、今回も不満を抱えつつも自民改革会議から採決を退席するような議員は出ないだろう。自民改革会議は議会の過半数を握るため、附帯決議の付いた知事給与減額条例案が原案通り可決されるのは間違いない。

本来、会派一丸となって条例案の不備や川勝知事の姿勢について追及するはずだった自民改革会議。だが、9月定例会の閉会を前に会派に残ったのは禍根だけとなった。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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