京都府の北部、綾部市の銭湯「一の湯(いちのゆ)」。常連客でにぎわう綾部市で唯一の銭湯だったが、6月末をもって閉じることになった。
長年常連客に愛される銭湯
番台に立つのは、長尾ひとみさん(68)。常連客から「おかあちゃん」と呼ばれている。
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常連客:
お母さんの顔を見に。こじんまりしていい雰囲気ですよね
たまにしか来ないのにいつも愛想良く接してくれる。すごく居心地の良い銭湯でした
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店の奥の窯で風呂を沸かすのは、夫の長尾輝雄さん(67)。
長尾輝雄さん:
きょうはまだ涼しい方ですけどね。これが夏になったら地獄です
毎日、風呂の温度が下がらないよう、見守っている。
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「一の湯」は、1951年にひとみさんの父・甚之烝(じんのじょう)さんが創業。井戸水を沸かした風呂で利用者を温めてきた。
父から受け継いだ後も、40年以上店を続けてきた2人。
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長尾ひとみさん:
2人で仕事をやり始めてからは、ほとんど一緒にご飯を食べたことない。昼の間に昼ご飯を作りながら夜の分も作って
長尾輝雄さん:
どうしても親父の意向として、最後まで一軒は綾部市に残さないかんのやと言っていたので、親孝行したと思ってやってきました
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老朽化が進み…多額の修繕費用かかるため畳むことに
しかし、「お客さん第一」で続けてきた店も老朽化が進んでいた。
長尾輝雄さん:
修理は無理ですね、取り替えるしか…500万ないし600万はかかってくると思います
多額の修繕費がかかることから店を畳むことに…
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お客さんを温め続けて72年…店のいたるところに長年の営業の名残がある。脱衣場を掃除しているひとみさん。
長尾ひとみさん:
これ(マッサージ機)72年前です。ここに(硬貨投入口)10円入れてもらったらちゃんと動きます
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閉店を知った常連客がお花をもって「母の代からお世話になってありがとうございました。悲しいけどほんの気持ちだけ」とあいさつにきた。
常連客:
ここに来たら僕らの友達もおったし、怒られたこともありますしね。ばしゃばしゃやって、お湯掛け合いして「ちょっと静かに入ってな!」って(怒られた)
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別の常連客:
朝からここに来るまで一言もしゃべらない。一人暮らしだから。ここに来てやっとどこの誰か分からない人と裸のお付き合いで快く話せる。そういう場所になっていた。コミュニケーションをとれる
先代から受け継いだ大事な地域の役割。最後の日までまっとうする。
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いつもと変わらず迎えた“最期の日”
最終日、2人はいつも通り、風呂を沸かして開店の準備をする。
Q.最後の日ですけどどうですか?
長尾さん夫婦:
ほぼ実感がないよね
そうそう
毎日のことなので実感はないよね。とりあえずいつもより掃除を念入りに
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大勢の利用客が、次々と訪れる。
常連客たち:
寂しい、ほんまに寂しいよ…お父ちゃんとよく来ていたから、子どもの時に
何もないんやけど、ここにしかないものがある
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長尾ひとみさん:
お風呂関係なしでこういう場って絶対必要やなって思いますね。ほんとお客さんにはありがとうで感謝でいっぱいです
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地域を温め続けた銭湯が愛されながら幕を閉じた。
(取材:関西テレビ報道センター 犬伏凜太郎)