めったに公には顔を出さない、長崎・佐世保市出身の美術作家、アジサカコウジさん。長崎市で作品展が開かれ、アジサカさんの作品に魅せられたフリーライターが、秘密に包まれたその姿に迫った。
佐世保市出身作家の作品展開催 その魅力は…
2023年9月、長崎市船大工町に2023年春オープンしたギャラリー「063(まろみ)FACTORY」で、佐世保市出身の美術作家・アジサカコウジさんの作品展が開かれた(9月2日~24日)。

アジサカコウジさんは、大学を卒業後パリに渡り、独学で絵を描き始めた。帰国後はイラストレーターとして活動をはじめ、一時はベルギーで創作活動にあたったこともあったが、今は福岡を拠点にしている。

063FACTORY・久米 保オーナー:
まず引き込まれますよね。絵の中にストーリーがある。うまくいえないが、感覚的に引き込まれる部分がある

作品展の初日には、絵に魅せられた、フリーライターで編集者の藤本明宏さんのトークイベントも行われ、アジサカさんの魅力を語った。
フリーライター・藤本明宏さん:
アジサカさんの作品は、観ていてこれは素敵だなと思う。目に留まる、足が止まる絵だったというのが大前提。絵描きの人って、イメージとして固い感じとか話しかけづらいとか、自分の考えを強く持っているというイメージがあった。

フリーライター・藤本明宏さん:
(アジサカさんは)気さくに話してくれて、いい意味で意外性があった。人間性、どんな人なんだろうと興味がわいた

藤本さんは、個展で初めてアジサカさんの作品にふれた時、絵の中の女性の視線に射抜かれたように立ちすくんだという。様々なアクリル画の女性が、誰もが無表情に自分を見つめ、心を全て見透かされたようになった。

藤本さんは「アジサカさんを知りたい」とインタビューを申し込み、何度も通った。
フリーライター・藤本明宏さん:
アジサカさんの言葉には普遍性がある。絵を描くことだけではなく仕事や生活、子育て、何かを頑張って取り組んでいたり、日々続けている人には絶対響く言葉があると思うので、(読む人に)アジサカさんのインタビューを伝えたい

アジサカさんの絵に魅せられ…作品とインタビューを本に
公には顔を出さず、ベールに包まれているアジサカさん。この日も、トークイベントに本人の姿はなかった。

アジサカさんの絵に魅せられた藤本さんは、このほど作品とインタビューを本にまとめた。

おれなんかの描く人物ってさ、基本的に無表情っちゃん。
でもさ、無表情って、見方を変えりゃあ、あらゆる感情、喜怒哀楽が混じっとるってことやん。
だけんが人によってはうれしそうに見えるし、反対に悲しそうにも、何かに怒っているようにも見えたりする。そういう顔が自分は“いい顔”って思うんよ。
「そぞろに描く」より
著者の質問などは一切なく、インタビューで話した言葉を再構成していて、読み手は、あたかも自分自身がアジサカさんから語りかけられているかのような感覚を覚える。

表舞台には登場しないこと、新たな発見や不思議な感覚を抱かせる語り、そして数々の作品。
そこには、人を惹きつける魅力を持つ“覆面アーティスト”を知るヒントが隠されているかもしれない。
(テレビ長崎)