この夏、長野市保健所では子猫の保護が増加した。ケージ不足も心配されたが、保健所の呼びかけもあって引き取りが相次いだ。新しい家族と暮らしはじめた子猫は最初、警戒心が強かったが、今ではツンデレの性格も見えてきたという。
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警戒心はまだ強め…
リラックスしてうとうと、生後4カ月ほどのメス「あんじゅ」。
長野市の萬場さんの家に来て5日目―。
警戒心はまだ強めだ。
家族みんなで「あんじゅ、あんじゅ」と優しく声をかけ、なでてあげている。
妻の瞳さんは、「私たちの顔もわかってきて、ちょっと気を許してくれてるかな」と話す。

あんじゅは、元・保護猫。長野市保健所から引き取ったばかりだ。
その、きっかけは、「NBSみんなの信州」で放送した特集。
この夏、熱中症のような症状で保護される子猫が相次いだ。
長野市動物愛護センターの笠原美絵さんは、「猛暑で外に置いておくと衰弱が進んでしまう。やむなく収容している」と話していた。

猛暑の影響…保護猫が増加
2022年の7月・8月は24匹だったが、放送した8月17日の時点で既に44匹…。
保護した子猫は体力を回復させて譲渡できるようになるまで1カ月半から2カ月、保健所で飼育する。
さらに最近は、コロナ禍の行動制限がなくなって、外出や旅行の機会が増えたことや「おうち時間」が減ってペットに「癒やし」を求めなくなったためか、譲渡も進まず、保健所は譲渡会への参加を呼びかけていた。
長野市動物愛護センターの笠原さんは、「保健所に長期間滞在するようになり、その影響から猫が非常にたまっている状況。このままの状況が続くと、ケージが足りなくなったり、一つのケージにたくさんの猫を入れなければならないので、収容の環境が非常に悪くなってしまう」と、懸念していた。

家に到着後、固まってしまい…
この「特集」を見て、萬場仁さんは、「かわいいって思った。映ってる子たちがみんなかわいくて。譲渡会に行ってみる」と家族に話したという。
かねてから猫を飼いたいと考えていた萬場さん一家は、早速、譲渡会に訪れた。
気に入ったのはきれいな毛並みときりっとした目が印象に残った、メスの子猫。
民家で餌付けされた外飼いの猫から生まれたということで、人には慣れていなかった。

長野市動物愛護センターの笠原さんは、「一般的には手を出したら寄ってくるようなアピール上手な猫からもらわれていく。あんじゅは触れるけど、手を出すと2、3歩、後ずさりしてしまう猫だった」と話す。
それでも萬場さん一家は引き取ることにした。

家に到着した直後、あんじゅは置き物のように固まって全く動かなかったという。
おもちゃを出しても遊ばず…。
長野市動物愛護センターの笠原さんは、「ケージなど用意して自分だけのスペースを与えてあげる。(家に慣れるまで)しばらくの間はそうっとしておいてあげて」とアドバイスした。

家に来て5日 安心できる場所に
家に来てから5日―。
眺めの良い窓際に置かれたケージの中は、すっかり安心できる場所になっていた。
名前は「あんじゅ」に決定。高校生の長女・心さんが考えた。フランス語で「天使」という意味で「天使のようにかわいいから」名付けたという。

「食べてくれるかな。あんじゅ、ごはん。あ、食べた食べた」
「エサやり」担当は小学5年生の大和さん。
「朝あげて、学校から帰ってきておやつ、夜ご飯も。最初と食べ方が全然違います。今はあまり警戒しないで食べてくれるのでうれしい」と笑顔で話す。

この日、ちょっとした冒険があった。
ケージの上に初めて上った。
最近になって「ツンデレ」な性格もみえてきた。
「なでて、気持ちよさそうにしていても、ちょっとたつと『もういい』って」、こんな態度をとるようになってきたという。
妻の瞳さんは、「家族に迎えて良かった。1人娘ができたような感じ」、大和さんは、「あんじゅには、ずっと楽しく過ごしてほしい」と、満面の笑みで話した。

9月も暑く…減らない保護猫
放送後、長野市保健所では萬場さん一家のような譲渡の希望者が増え、これまでに31匹が新たな家族のもとへ引き取られたという。
ただ9月も暑い日が続いたことから、猫の出産シーズンが長引き、保護する子猫が相次ぎ、10月2日時点の収容は36匹にのぼるという。
飼い主との別離や飼育放棄など、さまざまな事情で保護される猫たち。病気やけがなどハンディキャップのある猫も少なくない。

保健所は引き続き新たな飼い主を探している。
長野市動物愛護センターの笠原さんは、「一生懸命世話をしていますが、本当の飼い主ではありません。ここはいろんな人が出入りしていて、猫たちが真に安心しているかというとそうではない。自分の責任で面倒をみる、そういう方の家に連れ帰ってもらって、毎日面倒をみてもらえる状況で初めて、猫も安心して暮らせる」と、保護猫の引き取りを呼びかけている。

(長野放送)