中国では、使われなくなった電気自動車(EV)の大量放置が相次ぐ事態となっている。拡大する“EV墓場”の背景にあるとされるのは、中国の特殊な交通事情だった。
EV普及が進んだ理由はナンバープレート?
中国東部・浙江省の杭州市で8月に投稿された映像。広大な敷地を埋め尽くすように、白い車がずらりと並ぶ。車の屋根にまで雑草が生い茂り、埋もれている車もある。これらはすべて電気自動車だ。
この記事の画像(15枚)電気自動車=EVが大量に打ち捨てられた状況から“EV墓場”と呼ばれ、その様子が中国のSNSに相次いで投稿される事態となっている。
重慶市で2022年3月に撮影された動画では、屋根が水色で統一されたEVが敷地を埋め尽くし、なかにはボンネットが開いたままの車もあった。ドアにはカーシェア会社のパンダのマークが確認できる。
こうした“EV墓場”は、なぜ拡大しているのか。背景にあるとされるのは、中国の特殊な交通事情だ。
敷地に放置されている車のナンバープレートは、EVが付ける「グリーンナンバー」。ガソリン車の場合は「ブルーナンバー」が付けられ、それぞれ色によって区別されている。
中国の大都市では、渋滞緩和などのためナンバープレートの数が制限されていて、ガソリン車の場合は、車を購入する前にナンバープレートを高額で落札する必要がある。しかし、EVなどのグリーンナンバーはこの制限を受けないため購入しやすく、普及が進んだのだ。
2400社近くのカーシェア会社が廃業
専門家が指摘するのは、カーシェア会社の急増だ。
経済産業研究所 コンサルティングフェロー 藤和彦さん:
電気自動車の貸し出しから始めているリース会社が、最初はシェアを伸ばして売り上げがよかったが、途中で過当競争になってしまった。競争に負けた企業が電気自動車を持て余して、勝手に放置してしまったということのようです。
中国ではカーシェアの競争が激化し、2023年4月までに2400社近くが廃業。そのため、使われなくなった車が“EV墓場”行きとなり、大量放置が相次ぐ事態に陥ったとみられる。
“EV墓場”と同様に、中国では電動自転車が大量に放置された“シェアサイクルの墓場”も問題となっている。
2019年9月に撮影された映像では、車体の色ごとに大量の電動自転車がずらりと並んでいる。シェアサイクルが爆発的に普及する中、供給過多が起きたことによるものとみられている。
中国では今後も行き場を失った車が相次ぐ恐れがあり、EVの墓場が各地に出現する可能性があるとみられている。
(「イット!」9月26日放送より)