香川・高松市の国の特別名勝、栗林公園にちょっと変わった広場がある。地元の人にもあまり知られていないこの広場が整備された背景には、かつて園内にあった人気スポットの存在があった。
ベンチに座ってくつろぐ2頭のキリン
栗林公園の東門近くにある「キリン広場」。ひと際目を引くのが、その名の通り、広場のベンチに座った2頭のキリンだ。
この記事の画像(9枚)足を組み、身を寄せ合う姿は、まるで人間の親子のようにも見える。このキリンを制作したのは、坂出市の造形作家、岡山富男さん(71)だ。
岡山さんは「庭園で楽しんでくれたらいいが、私の作品で楽しんでもらえたらダブルで楽しめる」と話す。
公園にキリンの作品…一体なぜ?
一体なぜ、栗林公園にキリンの作品があるのだろうか。
公園にいた人に予想してもらうと「キリンが昔いたとか」「家!お偉いさんが泊まる家みたいな」と声が寄せられた。
正解は、現在の駐車場が広がるスペースに、かつて動物園があったから。
今から100年近く前、1930年に開園した「栗林公園動物園」。戦後間もなくキリンやゾウ、ライオンなどの大型動物の輸入に乗り出し、ピーク時には、年間60万人が訪れる人気スポットだった。
香川県民に惜しまれながらも休業に…
しかし、開園から72年を迎えた2002年に転機が訪れる。
栗林公園動物園・香川一水園長(当時):
栗林公園動物園は、本年(2002年)9月30日をもって休業します
来園者の減少などによる経営難を理由に休業を発表。香川県民に惜しまれながら、長い歴史に幕を閉じた。園内に動物園があったという歴史を知ってもらおうと整備されたのが、この「キリン広場」だったのだ。
栗林公園観光事務所・山本知子所長:
ここに動物園があったことすら知らない人たちが増えてきている。そういった歴史を栗林公園の歴史とともに残していきたい。昔、動物園を訪れたという思い出がある人には懐かしんでほしい
栗林公園では今後、作品を入れ替えながら展示を続けていく。キリン広場は、思い出をつなぐ懸け橋となってくれそうだ。
(岡山放送)