訪米中のウクライナのゼレンスキー大統領は21日、ホワイトハウスを訪問しアメリカのバイデン大統領との首脳会談に臨む。
バイデン大統領はこれに先立つ19日、国連総会の演説で「侵略に立ち向かう」と述べて、ウクライナへの揺るぎない支援をあらためて表明した。
ただ、去年12月にゼレンスキー氏がホワイトハウスを訪問し、その後の議会演説では万雷の拍手で迎えられた当時と比べて、アメリカ国内のウクライナ支援に対する風当たりは厳しくなっている。
ゼレンスキー氏は今回、バイデン大統領や議会幹部らとの会談で何を訴えるのか。
バイデン大統領「侵略に立ち向かわなければならない」
9月19日、国連総会の演説に臨んだバイデン大統領はロシアによる軍事侵攻を強く非難し、「ロシアが平和の代償として求めているのは、ウクライナの屈服、ウクライナの領土、ウクライナの子どもたちだ」と指摘した。

そのうえでバイデン氏は、「ウクライナが切り刻まれるのを許せば、どの国の独立も守られるのか?答えはノーだ!」と訴え、「明日の侵略者を抑止するため、われわれはきょう、このむき出しの侵略に立ち向かわなければならない」と述べ、ウクライナへの支援は揺るぎないとの考えを表明した。
アメリカ国内で広がる「ウクライナ離れ」
一方でアメリカ国内からは、“支援疲れ”とも表される現象が顕著になってきている。
CNNニュースの8月の世論調査では、「議会はウクライナ支援のための追加資金を承認すべきではない」と55%の人が回答した。
さらに、51%が「ウクライナに十分な支援をした」と答え、「もっと支援すべきだ」の48%を上回った。
野党・共和党の支持者では、「追加の資金援助を控えるべきだ」との回答が71%にのぼる。

世論を背景に、共和党の大統領候補の1人で過激な発言で支持を集めているラマスワミ氏は、ウクライナ支援の取りやめを公言している。
さらに、ゼレンスキー氏が自国の選挙を実施するためにアメリカに追加資金を要求したことを「選挙ゆすり野郎」とこき下ろし、「アメリカに対する新たなレベルの恐喝だ」と痛烈に批判した。
「ウクライナはアメリカの51番目の州ではない」
連邦議会では急進的な動きも起きている。
共和党が過半数を占める下院では7月、70人の下院議員がウクライナへのすべての援助を打ち切る法案に賛成票を投じた。
法案は否決されたが、想像以上にウクライナ支援を懐疑的に思う議員が増えているとの見方を裏づけた。
さらにマッカーシー下院議長もこれまでに、ウクライナ支援は「白紙委任するつもりはない」と発言し、見直しも含めた支援内容の精査にあたる考えを示している。

現在、バイデン政権はウクライナの安全保障などの支援として、240億ドル(約3兆5000億円)を含んだ、約400億ドル(約5兆9000億円)の追加予算について議会に承認を求めているが、猛反発を受けている。
共和党・最強硬派の「フリーダム・コーカス」の1人、ビッグス議員は「新たなウクライナ支援を支持するつもりはない」と明言。
トランプ前大統領に近いグリーン議員も「ウクライナはアメリカの51番目の州ではない。国防総省の使命はアメリカを守り、戦争を防ぐことだ。」と述べて、バイデン政権の対応を批判した。
以前から、一部の共和党強硬派がウクライナ支援について強く反対してきたが、少しずつ穏健派の中にも反対派が増え始めている。

さらに、これまでにアメリカは800億ドル(約11兆円)近い支援を行ってきたが、ウクライナ国内では汚職や不正も相次いでいる。
防衛相や高官が解任されたことも汚職や不正が背景にあるとみられていて、支援金の活用方法に疑問の声も挙がっている。
また追加予算では、軍事支援が国内の災害救援資金などと一緒に計上されていることにも、違和感を持って論じられていて、国内政策を優先しろとの声を勢いづけている。
専門家「ウクライナは長期戦になる」
こうした中で、専門家は警鐘を鳴らす。
カーネギー国際平和財団のマイケル・コフマン氏は9月4日に発表した論文で、西側諸国に「長期戦に備える」よう訴えた。
アメリカの一部で巻き起こっている戦線の膠着への批判については、「西側諸国はもっと早く手を打てるはずだった」と指摘し、必要な軍事支援に躊躇してきたことが要因だと分析。
各国がウクライナ兵士の訓練や欧米の航空戦力の採用への移行、それに伴う組織改革に向けて早期に支援を行うべきだとの考えを示した。

さらにコフマン氏は「ウクライナの前途は欧米諸国の支援にかかっている」と強調し、「西側諸国は、これが長期戦になるという事実を明確に認識する必要がある」として、ウクライナ支援の見直しを一蹴し、各国政府に対して支援への決意を促した。
ゼレンスキー氏「ウクライナ敗北なら第3次世界大戦」
ゼレンスキー氏は、17日に放送されたCBSテレビのインタビューで「プーチンを止めたいのか、それとも世界大戦を始めたいのか、世界が決めなければならない」と述べ、ウクライナが敗北すれば第3次世界大戦に至ると警告した。またアメリカの支援に感謝を示す一方で、支援の継続に消極的な意見を念頭に「われわれはこの戦争で死んでいるのだ」と訴えた。

アメリカが支援を中止すれば、ウクライナがロシアからの侵攻を防ぐことは、ほとんどの専門家が不可能だと答えるだろう。
一方で分断が進むアメリカ国内では、「ゼロサムゲーム」の様相にもなっている。
野党・共和党も、多数派はウクライナ支援の継続を支持しているが、今後の情勢は不透明だ。
バイデン政権は議会に対して丁寧な説明が求められており、議会側も誤った情報などに巻き込まれずに冷静な対処が必要となるだろう。

ゼレンスキー氏は今回、ワシントンで何を訴えるのか。アメリカ世論の心を動かすことができるのか。今、まさに正念場を迎えている。
(FNNワシントン支局 中西孝介)