◆ラグビーW杯・フランス大会 1次リーグD組 日本12-34イングランド(17日・ニース)

日本代表は、1次リーグ戦の第2戦、前回大会準優勝の強豪イングランドを相手に奮闘。12対34と悔しい敗戦となったが、結果以上にJAPANラグビーを示すことができ、次戦に向けて自信と課題が明確になった。

地力の差を見せつけたイングランド

イングランドは、スクラムやモールなど重量を活かしたプレーで優位に立ち、ゲームを支配しようとしたものの、日本は準備してきたスクラムで完全に封鎖。恐れていたキックでも、相手が嫌がるディフェンス、ダブルタックルで相手の反則を何度も誘った。日本は、9対13と4点ビハインドで前半を折り返した。

後半序盤、ラグビーの神様はどちらに微笑むかわからなかった。

しかし、後半16分、イングランドの攻撃。ボールが相手選手に当たって前に落ち、日本代表は“ノックオン”の反則を疑い、足を止める。イングランド代表のキャプテンだけは、最後までプレイしてトライ。その後TMO(レフリーによるビデオ判定)が行われた。

ボールは頭に当たっていた。

ラグビーのルール上、頭部に当たっていれば、ボールを前に落としていてもノックオンにならない。結果、日本代表は思わぬ形でトライを奪われた。

予期せぬトライ。日本代表はセルフジャッジで足を止めてしまったのだ。このプレイが、ターニングポイントとなった。

その後、日本代表も反撃に出たが、惜しくもあと一歩のところでトライまで行けず、終始ディフェンスに。アタックしている時間(ボール支配率)は34%にしか満たなかった。

会場で取材中の筆者
会場で取材中の筆者
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試合終了後のミックスゾーンでは、ボールが頭部に当たったイングランド選手に話を聞くことができた。

『俺のあのヘディングが試合の流れを変えた。俺はこの4年間このヘディングを準備してきたんだ。練習通りのヘディングだった』

ラグビーの神様がたまたま味方したプレイを、必然だと主張したジョー・マーラー選手(33)。

確固たる自信。
緊迫した試合では、これが試合の明暗を分けるのだろうかーー。

次戦へ明確になった課題

こうした中でも、日本代表は強豪イングランド相手にJAPANラグビーが通用することを証明した。

重量級のスクラムに対応できたこと、ディフェンスで相手のミスを誘えたことは、日本にとって大きな自信になったに違いない。そして大きな収穫は、課題が明確になったこと。いかにアタックする時間(ボール支配率)を増やすか、そしてトライチャンスで取り切れるか。

試合終了後、セミシ・マシレワ選手(31)が負傷のため離脱し、山中亮平選手(35)の追加招集が決まった。前回のW杯で5試合すべてに出場したベテランは、W杯登録メンバーから外されていた。W杯に対する思いが人一番強く、ムードメーカー山中選手のチーム合流は、チームを確実に支えるだろう。

次戦は9月28日、負けられないサモア戦。

プレッシャーは大きいが、JAPANラグビーの確固たる自信を胸に、ラグビーの神様を味方につけたい。

冨田真紀子
冨田真紀子

七転び八起き。いた時よりも美しく。
千葉県浦安市出身。早稲田大学国際教養学部卒。14年フジテレビ入社。
ラグビー女子日本代表として、13年セブンスワールドカップ、16年リオ五輪、17年ワールドカップ出場。現在南仏ポー拠点。フランス1部リーグ Lons Section Paloise Rugby Féminin 所属。