名古屋市緑区で2023年7月、散歩中の犬が乗用車にはねられて亡くなった。警察はその後、運転手とみられる高齢男性を特定したが、愛犬を突然失った家族の悲しみは癒えない。

今なお愛犬の死を受け入れられず…

家族の中心で抱えられている、愛犬のあさひくん。突然、その状況を一変させる出来事が起きた。

7月28日、名古屋市緑区で撮影された防犯カメラの映像。左手をあげた女の子が、飼い犬と横断歩道を渡ろうとしている。

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次の瞬間、シルバーの車が突っ込んできた。

別の防犯カメラの映像には、衝突した後、何事もなかったかのように走り去っていく車が捉えられていた。

幸い、女の子にケガはなかったが、愛犬・あさひくんは車と接触し、事故から約1時間後に息を引き取った。

現場は見通しの良い片側一車線の道路で、夕方の時間帯は車通りが多いという。横断歩道には歩行者用のボタンが設置されていて、歩行者・車ともに信号が設置されている。

事故の瞬間、近くにいた母親に話を聞いた。

母親:
事故があった直後、この子はずっと「私は手をあげて渡っていた。青信号だった」と繰り返していたんです。ものすごく許せない気持ちもありますね。あの時に止まって降りてきてほしかったとだけ思っています

娘:
あさひくんに会いたいです

今も自宅には、主を失ったケージがそのまま残されている。事故後、そのケージに子供が手紙を置いたのを、母親が見つけた。

<手紙の内容>
「あさひ、てんごくへ行ってもわすれないよ。さん歩が好きで くいしんぼうなあさひが大好きだよ」

一家は愛犬との突然の別れをまだ受け止めきれなかったが、8月8日から家族で活動を始めた。

母親:
何かできることはないかなと思って。事故と同じ夕方5時から6時の時間を狙って、立つようにしています

事故が起きた夕方の時間帯に毎日、手作りの看板を掲げ、SNSにもアップして情報提供を呼びかけた。

娘:
看板をみんな見ているかなと思います。早く見つかってほしいです

事故から3週間近くがたった8月17日、改めて母親に話を聞くと「娘の心には大きな影響が残っている」という。

母親:
今も怖くて横断歩道を渡ることができないんですね。あの道を渡ったすぐ先に保育園がありまして、あの道は本当にずっと通ってきた道なんです。足が震えたみたいで、今は通れないですね

SNSを見た人たちから、多くの反応があった。

親:
SNSを見てから情報を提供してくださる方もいらっしゃいますし、看板を見てからSNSに気付いてくださる方もいらっしゃって、あの看板は知ってもらう大きなきっかけになる。情報提供は数えきれないぐらいですね。SNSの閲覧数だけでも500万近くいくような感じです。ぶつかって逃げていった人の耳に、目に入って、出てきてもらえたら

車の運転手を探す活動を自主的に続け、犯人にたどり着きたいと考えている。

母親:
あまりにも突然のことで、どうしても気持ちの整理がつかないです。娘は「あさひくんは天国で生きているの?」と何度も聞いてきます

そして8月24日、警察から母親のもとに一報があった。

捜査関係者によると、警察は車を運転していたとみられる高齢の男性を特定し、任意で事情を聴いているという。調べに対して男性は「覚えていない」としているが、「悪いと思っている」など反省の言葉も述べているという。

母親:
犯人が捕まっても、心の中で解決にはならないです。娘は昨日も「あさひに会いたい。ロボットになってもいいから会いたい」と言っていました。とにかく十分に気を付けてもらいたいです。運転している時に周りを見てもらいたいと思います

全てのドライバーに安全運転を心がけてほしい。愛犬を失った家族の思いだ。

警察は事故を申告しなかった道交法違反の疑いで調べを進め、今後、書類送検する方針だ。

(東海テレビ)

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