待ちに待った成功に鹿児島が沸いた。3度の延期を乗り越え打ち上げられたH2Aロケット47号機。現地はもちろん、鹿児島県内各地で捉えられた打ち上げの映像から感動を振り返る。

多くの人が見守る中、まっすぐに宇宙へ

H2Aロケット47号機は2023年9月7日午前8時42分11秒、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。

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ロケットは快晴の青空をまっすぐに宇宙へと進み、打ち上げから約1分半後、本体両脇についている「SRB-A」と呼ばれる補助ロケットを分離。その光景は、肉眼ではっきり確認できた。

射場に近い種子島の展望公園では、ロケットが打ち上げられたその瞬間、訪れた100人を超える見学者から一斉に歓声が上がった。晴天とあって、訪れた人たちはカメラやスマホを構え、ロケットの航跡をいつまでも追いかけていた。

宇宙飛行士のような服を身にまとった見学者も
宇宙飛行士のような服を身にまとった見学者も

「何回見てもすごい」と笑顔で語る人や、まるで宇宙飛行士のようにJAXAやNASAのワッペンがついた服をまとった見学者は「打ち上がるときのごう音がものすごくて、体にも響くし、その後のロケットからの煙がすごくきれいだった」と話した。

今回のロケット打ち上げ、鹿児島テレビに各地で撮影された映像が寄せられた。

種子島から約200km離れた鹿児島県北部の出水市で撮影された映像には、ロケットが弧を描くように宇宙へ向かって飛んでいく様子が鮮明に捉えられていた。

出水市で撮影された映像
出水市で撮影された映像

ほかにも、鹿児島市や霧島市福山町から、青空にロケットが残した白い雲がはっきりと確認できた。

霧島市福山町で撮影された映像
霧島市福山町で撮影された映像

鹿児島市の繁華街にある複合商業施設「センテラス天文館」ではパブリックビューイングが行われ、仕事に向かう人や修学旅行生など多くの人が立ち止まり、大画面に映し出された打ち上げを見守った。

パブリックビューイングでも多くの人が見守った
パブリックビューイングでも多くの人が見守った

打ち上げられたロケットの映像に拍手をする人、中には「泣きそうでした、感動してしまって」と目を潤ませる人もいた。

3度の打ち上げ延期「緊張感やプレッシャーを感じながら…」

ロケットは打ち上げから約14分後、X線で天体を観測する衛星「XRISM」を分離。

「XRISMの軌道への投入を確認しました」。宇宙センターの記者室にアナウンスが流れ、職員が静かに拍手した。

さらに打ち上げから約47分後、月面探査機「SLIM」が予定の軌道に投入されると、モニターを見ていた三菱重工やJAXAの担当者は一斉に笑顔となり、成功を喜び合った。

H2Aロケットは、これで41機連続の打ち上げ成功だ。

H2Aロケット47号機は当初、2023年5月に打ち上げられる計画だった。しかしその2カ月前の3月、H3ロケット初号機が第2弾エンジンに着火せず、打ち上げに失敗。H2Aロケットも共通の部品を使用していたことから8月に変更され、打ち上げ日が決まってからも悪天候で3回も打ち上げが延期されていた。

打ち上げ成功を受け、記者会見した三菱重工の徳永建打上執行責任者は「H3失敗から初めての打ち上げということで、非常に緊張感やプレッシャーを感じながらやってきた。無事成功できて、本当にホッとしている」と冷静な表情ながらも喜びを語った。

「最終的なゴールは月に着陸」

今回搭載された無人探査機「SLIM」は、成功すれば日本初となる月への着陸をミッションとしている。今後、自力で月の周回軌道に入り、2024年1月以降に月への着陸を目指す。

このミッションのJAXA・坂井真一郎SLIMプロジェクトマネージャは「最終的なゴールは38万km先にある月に着陸するというところ。我々にとって本当にやらなければいけないことはこれから始まると考えている。今度はこちらが頑張る番」と気を引き締めた。

H3初号機の失敗。その前の2022年10月にはイプシロン6号機の打ち上げにも失敗した日本の主力ロケット。成功を重ねてきたH2Aロケットも50号機での運用終了が決まっている。残すところあと3機だ。

H2AロケットのようにH3ロケットも成功を重ね、日本の宇宙産業を担ってくれることを期待したい。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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