“令和のコメ騒動”を巡り福岡県内のJA組合長が、小泉進次郎農水相に直談判し、農協の存続や備蓄米の販売期限延長で、新米の価格下落に繋がらないのかなど、生産者の懸念について率直に訴えた。
JA組合長が小泉農水相に直談判
2025年8月20日、農林水産省は、本来、新米の“値崩れ”を防ぐため、8月末までとしていた備蓄米販売の期限について、一転、『期限を延長する』と発表した。

この問題などについて意義を唱えているのが、福岡県のJA直鞍(直方市・宮若市・鞍手町・小竹町)の組合長、堀勝彦さん(83)だ。小泉農水相の元を訪れ、生産者が抱える懸念について“直談判”したのだ。堀組合長と小泉農水相とのやりとりは、以下の通り。

【備蓄米販売の期限延長の影響は?】
▼堀組合長:今までコメ不足で大変でしたね。それが今年は、コメは余るのではないかと。そうなった場合、コメの価格が下がるのではないかと。そうしたら農家、農協に打撃があるのではないかと。その点が非常に皆さん、心配されていて…。大臣は、どう思いますか?

▼小泉農水相:実はきょうも、備蓄米の随意契約の期限が来たんですが、我々の責任で約束通り、まだお引渡しできていない方には、期限を延長してでもコメのお引渡しをしなければならないと。そういったことをお伝えしたんですね。そのことも含めて、新米の価格に影響が出るのではないかと。こういった声が一部あるのは、組合長が仰る通りです。

ただ、これに対しては、新米への影響はないだろうとみているのは、既に 『30 万トン、随意契約の備蓄米を放出します』ということは、元々、世の中にも言ってあることの中で対応しているということもありますし、あとは、最近の価格動向を見ても、堀組合長の所もそうかもしれませんが、だいぶ全国のJAさんの出している『概算金』、これ、高くついてますね。むしろ今、世の中としても、やっぱり新米は、それなりに高いんじゃないかと。こういった状況の中で、今回の延長する備蓄米の扱いは、新米とは全く別のお米ですから、こういったことについては、組合長の心配には、しっかり対応できているんじゃないかなと思っています。

万が一、価格が暴落したらどうするんだ?こういった声に対しては、ずっと今までも国会でも申し上げているんですが、最終的にマーケットが落ち着いた段階で、備蓄米を放出した量を、水準に戻しますと。こういったことも含めてですね、やっていきたいと思いますので、組合長といろいろとお話をさせて頂いて、地元に戻られて JAの組合員さんに、ちゃんと組合員さんの声を『小泉にぶつけてきたぞ』と、そう言って安心して戻って頂けるのではないかなと。
【カメムシ対策に国の補助も】
▼堀組合長:害虫の駆除を本腰にしたら、コメの3割が増産になります。カメムシが凄い。その駆除に力を入れて…。こういう話もある。雑談として聞いて下さい。害虫の駆除の業者は、本腰を入れてないんじゃないかと。本腰入れて害虫がいなくなったらダメだから。だから、そこを強く研究してもらって、減らしてもらったら、コメの量産になる。そうゆうところに力を入れて欲しい。
▼小泉農水相:カメムシ対策の防除は、1 回ですか?
▼堀組合長:2 回にしています。
▼小泉農水相:今回、仮に組合長が懸念しているように、異常な高温でカメムシが、例年以上に出ている中で、いつもは2 回だけど、今回は防除を3回にするよとなると、今回の臨時対策で、3回目の防除をいつもよりも多いということで、国が補助、そういった形の対策はします。
▼堀組合長:ぜひ、お願いします。
▼小泉農水相:こうゆう情報って、皆さんに届いてますか?
▼堀組合長:届いてないと思います。
▼小泉農水相:そうですよね。結果的に今年は、コメの集量をしっかり達成したい。それで米価高騰を止めたい。今までは、カメムシの防除費などの補助はなかったんですが、2 回、3回やっていたとしても。でも今回は、2 回やるとしたら、そこに国が補助すると決めているので、ぜひ、後でチラシか資料を持って帰って下さい。
【JAの幅広い活動に理解を】
▼堀組合長:私は、『JAダイレクト』といって、毎月雑誌(広報誌)に記載している。それと私は、地域貢献に力を入れている。青少年育成や農家に一番大切な水の対策。水をきれいにしながら環境問題に力を入れている。地域貢献は、少年野球教室とか音楽祭とかサッカー教室で子供たちを集めて、そうゆうことも農協はやっています。ただコメだけではない。将来の若い人たちの教育、マナーを育てる。そういったこともやっています。農協は、地域のお年寄りやらを大切にしている。特に、女性問題に力を入れている。うちの JA は女性の管理職が多いです。役員も多い。データまた見せます。コメだけではなく、将来の若い人や、女性、お年寄りを大切にしながらJAは頑張っていますので、頭の隅っこでもいいから置いておいて下さい。
▼小泉農水相:うちの地元は、JA横須賀葉山農協というのですが、そこも夏は地域のために盆踊りをしています。会場は、JAの敷地内。それと、JA横須賀葉山は酪農家が 1 件だけなんですよ。その酪農家で、地域の子供の現場体験、そして、そこはソフトクリームも販売している。美味しいものも提供しながら、日頃の牛乳や乳製品は、こうゆうところでできているんだよって。そういったこともやっているので。 JAさんの役割、地域貢献は、様々な他の民間企業との連携も含めてできることはあるだろうと。そういったことも話しています。
【農協を無くさないで】
▼堀組合長:そこで大事なことは、農協は、それだけ地域貢献、お年取やらに十分に貢献していますからね。ぜひ、農協を無くさないように。

▼小泉農水相:私が農協を無くそうとしてると思っています?結局、僕らが農協をどうこうというよりも、一番大事なのは、農家が農協をどう思うかじゃないですか? 農家から見て、農協があって良かったな、農協のお蔭で収入が上ったなとなれば、 おのずと必要とされるわけですから。

▼堀組合長:それは、ほとんどの農協がその方針でやってますよ。
▼小泉農水相:素晴らしい運営をされている組合はそうなんです。一方で、課題のある面もあるので、それが広く伝わればいいなと思っている。JA直鞍でも、コメが一番の主力商品だが、皆さんで検討して頂きたい1つは、コメの委託と買い取り、両方の選択を農家さんに提供する形を作ってもらいたいということ。今は、全国の中で、60%のコメを取り扱っている農協が、既に委託と買い取りの両方をやっている。 JA鈴鹿の農協で、意見交換した時に、組合員の農家さんから私に対して、『うちの地域は、委託しかない。買い取りもやって頂きたい』と言ってくれた。これを機に、現場でも考えて頂きたい。
▼堀組合長:(同行の農協職員に対して)大臣の言うのとちょっと違いますよね。
▼小泉農水相:委託が全部ですよね?
▼農協職員:いや、うちも全農系の委託販売と直販の比率を上げています。まだ、委託の方が、ウェイトを占めていますが、使命としては、1円でも高く生産者の所得を上げるために頑張る努力は続けていかなければならない。それが、今までのやり方でいいのかというのは、私も変革していかないと、という考えを持っています。ただ、今までの流れがあるから、できていないところがある。相手を見て流通をしていかないといけないところに来たかな、というのはある。
▼小泉農水相:委託と買い取りの話をすると、今までは、委託の流れがメインだが、買い取りと言われても・・・という声が JA から上がる。私の元にも届きます。実際は、全国のJAでコメを扱っているのは、400以上の中の半数以上が委託と買い取りの両方をやっているんですよね。それをいろんなJAにお伝えすると、「あ、そうか」と。委託が主流だから、大臣が買い取りだと言ってたと思うけど、半数以上がやっているとなると違いますよ。
▼堀組合長:地域によって違います。私たち管内では、コメ不足は全然ないです。新米が出ましたから、コメがないというのはありません。そこが、話が違うんですよ。
▼小泉農水相:地域によりますよね?
▼堀組合長:それは、私も苦労していますよ。その時に応じて対策を練らないといけないから。そういうのを分かってもらわないと、と思います。しかし、良かった。
▼小泉農水相:良かった。地域によって、それぞれの面があるというのを受け止めながら、農水相としては全国、どういう状況になっているかというのをきめ細やかに見ながら、やっていきたいと思いますので、暑いですけどお体に気を付けて下さい。
▼堀組合長:農協はね、真剣に考えて、残して下さい。これはお願いします。
▼小泉農水相:残るかどうかというのは、堀組合長のように地元の組合員から必要とされるJAであるかどうかが、全てだと思いますので。そういう農協が広がることを期待しています。
▼堀組合長:我々も努力はしますけど、一番は農水省の指導ですよね。私たちは、農水省の 指導の通りに動くんですよ。

▼小泉農水相:なかなかそんなことないですよ。堀組合長が、農水省の言う通りにやります?

▼堀組合長:やってますよ!(農協職員に)違うかね?
▼農協職員:JAを大型化していかないとならない中で、組織の中の統廃合を含めた中で、率先してここだけじゃ運営が難しいという中で、先頭に立って自己改革を進められているという、行政とは違う面がありますけど。そういう面に対しては、リーダーシップを取られていて、やって頂くことには間違いない。
▼小泉農水相:私の中では、農家の立場になって、農家さんが必要とされるサービスが供給される体制を作らなければ、それが農協なのか、それとも農協じゃないのか、それを選ぶのは、農家の皆さんだろう。

ただ、地域貢献をやられたり、いろんなことを考えられて、選ばれる農協である地域が多いことも事実です。なので、切磋琢磨し合って、結果、農家の皆さんが農協を選ぶ、そして、必要なサービスを受けられるということになったら、それは素晴らしいことだと思います。

▼堀組合長:それは、全中の問題になりますね。
▼小泉農水相:いろんな課題がありますね。だいぶ込み入った話もして、いい感じじゃないですか。農協にとっても農家にとっても、選択肢があるというのは大事じゃないですか?
▼堀組合長:農家が農協を嫌うということはないと思います。他所は知りませんけど。
▼小泉農水相:組合長の所はそうかもしれませんね。残念ながら、そうじゃない所もあります。
▼堀組合長:それなのに、私たちの所に持って来られても困る。
▼小泉農水相:堀組合長と話した通り、コメの政策は、本当に重要な転換点を迎えているので、仕事に専念して、しっかり頑張りたいと思います。

▼堀組合長:転換点を誤まろうとせんといて下さい。
▼小泉農水相:これからもどうぞよろしくお願いいたします。(握手)

会談を終えて最後は握手を交わした2人。農水相への“直談判”を終えた堀組合長は、「思いは伝えた。ただ、噛み合わないところもある」と率直に語り、地元へと戻って行った。
これから本格的な新米の季節を迎える中、日々の生活に直結する“令和の米騒動”は、どのように収束していくのか。増産へと舵を切ったコメを巡る国の政策転換はもとより、抜本的な農業を巡る見直しが不可欠になっている。