不出馬表明の前日、安倍×岸田会談はあったのか?
この記事の画像(4枚)7月24日、秋の自民党総裁選に出馬するか明言を避けてきた、自民党の岸田政調会長が正式に出馬見送りを表明、安倍首相の三選を支持する考えを示した。
この会見において、私をはじめとする総理番記者にとって気になる発言があった。
それは、岸田氏が「安倍総理ときのう(23日)直接お会いしてお話しした」と明言したことだ。
しかし、日々の安倍首相の動静を追っている総理番記者は、前日に安倍首相が岸田氏と会ったことは把握できていなかった。さらに翌25日、菅官房長官が記者会見で「会ったことはない」と、安倍首相と岸田氏の面会を否定した。
では、岸田氏が嘘をついたのかというと、そのようにも思えない。真相について可能性を考えてみる。
首相動静に浮かぶ「空白の2時間」
岸田氏の会見前日(23日)の安倍首相の動静を振り返ると、一つ「空白の時間」がある。
安倍首相は、官邸に出邸する前の午前9時半過ぎに、歯の治療のためとして、かかりつけの病院を訪れた。
しかし、病院から出たのはそれから約2時間後だった。時間に追われる首相の歯の治療が2時間もかかるのだろうか。番記者は、安倍首相がどこかの建物に入るまでは確認できるが、中で何をやっているかまでは確認することはできない。
仮に、岸田氏が病院内で待っていた、あるいは裏口から入るなどしていれば、面会の事実は把握できない。
病院で過ごした空白の2時間。ここで、安倍首相と岸田氏の「極秘会談」は行われていたのだろうか。岸田氏もその後多くを語っておらず、今も真相は藪の中だ。
公邸でも極秘会合?そのからくりは…
こうした安倍首相との面会があったのか、なかったのかが謎という一件が、実は、総裁選をめぐって他にもあった。
7月25日の夕方、首相官邸の横に建つ首相公邸に、安倍首相の地元・山口県の県議団が訪れた。その後、首相も公邸に入ったので、県議らと会談するものと思われた。
総理番の記者は、官邸と違い公邸での取材は基本的に許可がないと行うことができないので、安倍首相の周辺に公邸での面会予定を確かめた。しかし「予定はない」との回答だった。さらに山口県議たちも公邸を見学しただけだとして安倍首相との面会を否定した。そのため、翌日の新聞の「首相動静」では、首相は公邸で誰とも会っていないとされた。
しかしその後、実際は安倍首相と山口県議団は会食していて、出席者にはかん口令が敷かれていたことがわかった。
赤坂自民亭のトラウマか?
ではなぜ、首相と山口県議団との会合を“極秘扱い”にしたのか。
安倍首相は今、岸田氏の出馬見送りを尻目に、総裁選に向けて、国会議員や地方議員との会合を頻繁に開き、準備を着々と進めている。
しかし、7月5日の夜、西日本を襲った豪雨の中、自民党の議員と飲んでいた「赤坂自民亭」の会合について批判を受けたことが、いまだに尾を引いている。
それ以降、安倍首相は公務が終わった後の夜に政治家や財界人らと会食する通称「夜日程」を基本的に控えているのだ。しかし、その代わりに、公務の合間の日中に、多くの地方議員が公邸を訪れ、安倍首相と会食をしている。7月24日には熊本県議団が、25日には愛知県議団が昼時に公邸を訪れ、安倍首相と昼食をともにした。
会食後に県議らは、口をそろえて「総裁選の話はなかった」と話しているが、総裁選とは関係ない昼食会を装いながら、三選への準備を着々と進めているのが現実だ 。
こうした中、山口県議団とは夜に公邸で会うこととなったため、批判を受けるリスクを減らすためにも、あえて極秘会合扱いにする判断をしたものとみられる。
安倍首相の面会をめぐり巻き起こった2つの怪騒動。総裁選が近づく中、こうした騒動が今後も起こるのだろうか。
(政治部・総理番記者 梅田雄一郎)