福島第一原発の処理水の放出が8月24日午後から始まったが、ブリなどを出荷する三重県尾鷲市の漁港では、すでに風評被害が出ていた。中国では、処理水のことを「核汚染水」と呼んでいるという。現地の状況を特派員に聞いた。
中国に対しては諦めずに科学的根拠を示し説明を…
福島第一原発の処理水は、まずは約7,800トンの処理水を海水で薄めて17日間かけて放出するが、全ての処理水を放出するには30年程度かかるとされている。
心配されているのが、消費者の買い控えなどの風評被害だ。処理水を放出する前から、東海3県にも広がっていた。
三重県尾鷲市でブリの養殖などを手掛ける「尾鷲物産」では、高知や愛媛で育ったブリを生きたまま尾鷲に運び、出荷している。

これまで月に約300kgほどのブリを中国に輸出し、毎月600万円ほどの売上となっていたというが…。
尾鷲物産営業部の中沢祥係長:
今回の処理水の海洋放出にあたって、現地で規制が強化されて、6月末から中国向けの輸出が止まってしまっている状態です。現地では主にお寿司やお刺身といった生食用で使っていただく予定でした。コロナのまん延で3年ほど中断しておりまして、今回再開した矢先に…という状態ですね
まだ処理水放出が始まっていない時から規制強化とは、まさに風評被害だ。

尾鷲物産営業部の中沢祥係長:
科学的根拠がない一方的な非難といいますか。中国以外の国はほとんど理解を示している中で、中国だけこのような対抗措置をしてきて、憤りを感じますね
一貫して「核汚染水」と呼ぶ
中国では、一体何が起きているのか。中国の北京にいる葛西特派員に聞いた。
東海テレビ・北京支局の葛西友久特派員:
中国共産党系の新聞「環球時報」では、福島第一原発の処理水放出に反対するデモの写真を使い、紙面も大きく展開しています。さらに社説では「国際社会は日本に対して無期限で責任を追及できる」とし、「時効のない犯罪だ」と厳しく批判しています
新聞では、日本政府の処理水放出決定を強い言葉で非難していた。中国では、処理水のことは一貫して「核汚染水」と呼ばれている。
葛西記者が7月に北京市内の鮮魚店を取材したときには、日本産の刺し身が1つもなくなっていたという。
中国政府は、なぜか放出が始まる前の7月から日本から輸入する水産物の検査を強化していた。税関での手続きに時間がかかるため、生の魚は腐ってしまい、事実上の輸入禁止状態になっていた。
東海テレビ・北京支局の葛西友久特派員:
北京市内には日本食のお店がたくさんあるんです。ただ、1カ月くらい前から日本産の魚が一切無くなりました。通常、1~2日くらいで検査が終わってお店に届くんですけれども、(検査の強化で)1週間か10日くらいかかってしまうようになり、届いた頃には商品がダメになってしまって廃棄せざるを得ないという状況がありました。それを受けて、輸入業者も日本の輸出業者も、今は魚の貿易をやめているという状況になっています

ーー中国全体の温度感として、誰もが気にしているというわけではない?
東海テレビ・北京支局の葛西友久特派員:
誰もが気にしていることはないと思います。中国政府が処理水の排水については猛反対している状況ですけれども、中国国民に関しては、気にしている人もいれば気にしていない人もいるというかたちで。それは多分日本と同じような状況なんじゃないかなと思います
一方で、こんな場面もあったそうだ。
東海テレビ・北京支局の葛西友久特派員:
お茶を買いに行った時に、店員の方から「日本の汚染水大丈夫か?」ということを聞かれました。僕も「汚染水じゃないんだよ」という話を説明して「科学的には問題ないんだよ」ということ伝えて、そこは納得していたのですけれども。中国の主張としては、科学的根拠に基づかないことを話しているので、それに対して日本がしっかり腰を据えて、諦めずにずっと説明をしていくということが大事なんだと思います
(東海テレビ)