愛媛・松山市沖の中島で3年前に閉店したスーパーがリニューアルして再建された。その復活物語には「高齢化が進むふるさとの島を活気づけたい」という熱い思いが紡がれていた。
小さな島にリニューアルオープン
松山市沖の中島にあるスーパー「フレンド8」は、松山からフェリーで約1時間20分、柑橘栽培が盛んな人口約2,800人の小さな島に、2023年8月にオープンしたスーパーだ。
「フレンド8」の経営者・俊成りんこさん：
もう朝はバタバタですよね
地元で採れた野菜を使った煮物や、揚げたてのあんドーナツが自慢の店だ。
「フレンド8」の経営者・俊成りんこさん：
どれを喜んでくれるかなとか思いながら並べるのも楽しいんですけど、ギリギリになると大変
午前10時の開店と同時にお客さんが詰めかける。
「フレンド8」の経営者・俊成りんこさん：
いらっしゃいませ、どうぞ
開店前から並んでいた男性：
おでんとお総菜とあんドーナツを食べようと思って
買い物客（女性）：
あんドーナツがおいしいって言うんで、みんなで食べようと思って。今までそんなんなかったから楽しみです
実はこのスーパー、前のオーナーが高齢のため、3年前に一度閉店した店なのだ。
「フレンド8」の経営者・俊成りんこさん：
2020年の夏に、スーパーのフレンドさんがなくなるっていうことを聞いて、すごく私の心の中でショックを受けた。中島がもしかすると20年後には本当に誰もいない島になるんじゃないかということを思うようになった
俊成りんこさんは、今回の「スーパー再建プロジェクト」のリーダーだ。中学生まで中島で生まれ育ち、高校進学を機に島を離れてから30年以上、松山市内で生活している。20年近く美容関係の仕事をしていたが、今回、新たに会社も設立し、クラウドファンディングで資金を募るなどして、スーパーの再建を一大決心した。
目指すのは、中島を「楽しくする」スーパーマーケットだ。
「フレンド8」の経営者・俊成りんこさん：
ただ買い物に来るのではなくて、買い物がなくても来たくなるような、そういうお店を目指したい。中島の人たちが不便だと思っているところを解消して、みんなが楽しく集える場所を作ることによって、さらに外の人に島の魅力を伝えることができるんじゃないかなって思ったんですね
再建を支える“島民の絆”
6月28日。この日、俊成さんの姿は中島にあった。この日は内装工事の真っ最中。
「フレンド8」の経営者・俊成りんこさん：
この色良かったね、真っ黒ではなくて。ちょっと明るく見えるね
社員の高橋さん：
ね、良かったですね
スタイリッシュな雰囲気もありつつ、昔ながらのフレンドの良さもしっかりと残したい…。そのために、地元の人ともアイデアを出し合う中で、長く離れていた故郷・中島の人との絆が深まっていく。
「フレンド8」の経営者・俊成りんこさん：
大人になってから中島出身っていうだけで、なぜか家族みたいなね
中島の工事関係者：
親近感、湧きますよね
年々、高齢化が進む中島地区。前身のスーパー「フレンドショップ」は、島の人が連日訪れる、島での生活にはなくてはならない場所だった。
中島の高齢者：
やっぱりさみしいね。（フレンドショップが）なくなってから、それこそさみしかったんよ
ただ買い物に来るだけでなく、みんなが集える場所を目指して…。島の人からも期待の声が上がる。
地元の高校生：
すごい楽しみな気持ちがありますね。イートインがあったら、そこで過ごせる時間も落ち着ける。夏だから外も暑いし、中は涼しいと思うので、楽しみです
中島の高齢者：
しょっちゅう来たいと思いますが。2日に1回、3日に1回、1週間に2回は来たいですね、最低でも
スーパーをきっかけに“中島の魅力”発信
「フレンド8」の目玉の1つが、地元の新鮮な食材を使った手作りのお総菜。その数10種類以上と、充実のラインナップだ。
買い物客：
おいしい！
買い物客：
若干ピリ辛なんですけども、奥行きがすごくあって、コクもあって…
買い物客：
私の好みはニラレバとエビチリ、ちょっとピリッとしておいしいです。これはすごい島の人喜ぶと思うな
8月13日、店がオープンして初めて迎えるお盆。久々に島に帰省してきた人たちにも「フレンド8」をお披露目だ。
2人組の買い物客：
お盆で帰省してて新しくオープンするってことで、都会でしか見たことのないイートインコーナーがあったりとか、すごく今風に作られてるなって思います
買い物客：
お総菜が種類が多かったっていうのを聞いたんで、あるうちに来ようかなと思って
買い物に来た島民同士で会話が弾み、店内が笑顔であふれる。俊成さんもうれしそうだ。
「フレンド8」の経営者・俊成りんこさん：
あたふた、あたふた。まだまだね、これからなんですけどね。できるだけ皆さんの要望に応えながらやっていけたらなと思っている感じですね
俊成さんが目指す「フレンド8」の形とは…。
「フレンド8」の経営者・俊成りんこさん：
ここ来たら楽しいんよとかっていうようなお店作りっていうのが、まずはここを作った目的の1つ。目標にはなるんですけども、大きく言ったら、スーパーを皮切りに中島っていう場所を発信していきたいっていうのが、私の最初からの思い
一度は離れた故郷・中島。しかし、スーパー再建をきっかけに紡がれた新たな絆は、俊成さんが愛する中島を発信する大きな力になるはずだ。
（テレビ愛媛）
