福井の海水浴場で5月以降、野生のイルカに噛みつかれたり体当たりされたりして、けがをする被害が相次いでいる。民間で対策を講じても思うように結果が出ていない。行政での捕獲について調べを進めると、現実的には困難な状況が浮かび上がってきた。
手など噛まれ15針縫うけが
8月1日、富山市から海水浴に来ていた26歳の男性がイルカに噛まれた。
近付いてきたイルカの体をなでた後、海から上がろうとした際に手や足を噛まれ、計15針縫ったという。今シーズン、福井市内の海でイルカによるけが人が確認されたのは初めてだ。
この記事の画像(9枚)こうした被害を受け、福井市の職員が鷹巣海水浴場を訪れ、対策を講じた。
鷹巣海水浴場では2022年にもイルカによる被害が確認され、対策としてイルカが嫌がるとされる超音波発信器3個を設置している。この機器を倍増し、遊泳時間は発信機が連続して稼働可能な、午前8時から午後5時までに限定した。
また、鷹巣観光協会・小玉征子会長によると、「イルカに近づかないで、触らないで」といくら警告しても、触る人がかなりいてそういう人たちが被害にあっているという。
小玉会長はイルカが近づいてきたら速やかに砂浜に上がるよう注意を呼びかけている。
水晶浜のイルカが移動か?
一方、今年5月以降、イルカによる被害が相次いだ美浜町の「水晶浜」。
対策を強化した7月21日以降、イルカは現れておらず移動した可能性がある。
福井市の鷹巣海水浴場で撮影されたイルカと比べてみると、背びれの後ろ側にある特徴的な切れ込みが一致しているようにみえる。
イルカ見つけたらすぐ海から出て!
なぜ、イルカは海水浴場に頻繁に現れるのか?
越前松島水族館・松原亮一館長は「人間と遊ぼうとしているのか、逃げてきたのか、いろんな理由が考えられる。群れから離れるのは珍しいことではない」と語る。
越前松島水族館 松原亮一館長:
イルカが遊びのつもりで甘噛みしたり、体をぶつけたりするのは、イルカ同士でもある行動。人に嫌なことをされて反撃した可能性もある
松原館長は被害を防ぐため、イルカを見つけたらすぐに海から上がる行動を求めている。
越前松島水族館 松原亮一館長:
人に慣れているイルカだと、自分から寄ってきて衝突することがある。存在に気付いた時点で一刻も早く海から出ることしか身を守る方法はない
捕獲は基本的に「禁止」
そもそも、イルカを捕獲することはできないのか?
捕獲は法律に基づいて農林水産省が定めたルールがあり、基本的には禁止されている。ただ、例外として都道府県知事が認めた場合は捕獲することができる。それに基づき、岩手県や和歌山県ではイルカ漁が行われている。
しかし、水産庁によると、これはあくまで「漁業」について定めたルールであり、人への危害を防止する目的では適用できない。
つまり被害が出ていたとしても、現実的にはイルカを捕獲することはできない。
このため福井県水産課では、海上での監視強化や注意の呼び掛けなど、できる限りの対策を続けるしかないと話す。
(福井テレビ)