専門分野で活躍しながら、自分の知見を日々SNSなどで広め、人々に多大な影響を与える知的なインフルエンサーたちがいる。その生き方や博識に憧れたファンがオンライン上で巨大なコミュニティに集まり、悩み解決や人生のヒントを得る。

最強の「知的インフルエンサー」

フォロワーが100万人を超えるとトップインフルエンサーと言われるが、日本と中国で、二人のトップ「知的インフルエンサー」の女性がいる。勝間和代さんと李一諾さんだ。

李一諾さん(左)、勝間和代さん(右)
李一諾さん(左)、勝間和代さん(右)
この記事の画像(4枚)

二人は似ている。

日本で広く知られている経済評論家の勝間和代さん。慶応義塾大学卒、早稲田大学MBA(経営学修士)。マッキンゼー・アンド・カンパニーやJPモルガンなど大手外資系金融機関を経て独立。SNSのフォロワーは100万人以上。著書約50冊、販売部数は計約400万部。オンラインコミュニティの「勝間塾」は5000人弱の会員をもつ。

李一諾(Li Yinuo)さんは中国出身。中国の清華大学卒、アメリカのUCLAで博士号取得。マッキンゼー・アンド・カンパニーの元グローバルパートナー、ビルゲイツ財団の元中国トップを経て、今は独立して学校を運営中。世界中の中国人女性を中心にSNSのフォロワーは230万人以上、著書は4冊。オンラインコミュニティの「諾言」は2万人強の会員をもつ。(李一諾はどんな人?彼女についての記事はこちら

似て非なる二人

二人とも華々しい経歴を持ち、3人の子供を育てながら、世界的な一流企業を経て独立し、大活躍している。また、二人とも毎日のようにSNSに動画をアップし、生活や人生の知恵を共有したり、疑問に答えたり、またその飾らない性格でファンに熱烈に愛されている。

勝間さんが李さんより9歳年上で、年齢的には近い世代だ。

李一諾は中国版の勝間和代で、勝間和代は日本版の李一諾、といってもいいと思うが、二人にはまた、似て非なる部分もある。

そんな二人が、李さんが東京に訪問留学している今、対談することになった。

早口の二人だが、対談は通訳を挟んで1時間半にも及び、痛快、豪快なものだった。女性の経済的自立や時間管理、子育てなど幅広い話題で大いに盛り上がった。勝間さんがいまの考え方を持つようになった、知られざる裏話も明らかになった。

対談動画の全編を文末に載せているのでご覧いただければいいが、参考になる話が多いので前編と後編にわけて、対談内容を一部抜粋する。

なぜ女性に経済的自立が必要なのか

勝間さんの著書「お金は銀行に預けるな」が中国語に訳されており、中国でも経済評論家として知られていることから対談は「お金の話」から始まった。

勝間さんの著書「お金は銀行に預けるな」中国語版
勝間さんの著書「お金は銀行に預けるな」中国語版

李:
勝間さんはいつから、女性は経済的に自立することが重要だとお考えになったのですか。

勝間:
日本で女性の立場が弱いのは、基本的に男性に依存しているからだと、小さい頃から親や姉を観察してきました。
女性の賃金レベルは大体男性の7割しかない。加えて、 「M字カーブ」で女性が出産するとほぼ正社員を離れ、パートタイマーになってしまう。結果として男性が理不尽な状態、例えば DV(家庭内暴力)、 浮気など上下関係ができたとしても、女性が離婚を申し出られないんですね。女性が社会的に自立していることで、結婚しやすくなると思ったんです。女性が子供を自分一人の力で大学教育まで終えられるぐらいの収入があれば、結婚も離婚の自由もあると思います。経済的な自立が必要だということを、10代、20代から考えていました。

李:
10代20代、早いですね。

勝間:
私には10歳年上と11歳年上の姉がいるんですよ。彼女たちが当時一般職と言われる職業につき、どんなに優秀でも出世できない仕組み、そして結婚退職をほぼ強要され、さらにその後当時の時給1100円ぐらいの仕事につくのに苦労しているのを見ていたんです。正社員を辞める、経済的独立を手放すことはどれほどリスクが高いかを、10代後半から観察していたんです

李:
子供の人間関係や社会状況に関する観察力を過小評価してはいけないですね。大人たちの行動には、ポジティブなものもあればネガティブなものもあります。逆にネガティブな例から人生について学ぶことが多いという点は、非常に興味深い。

経済的自立をするためには

李:
若い頃にどのように自分の経済的未来を設計しましたか。

勝間:
まず日本の大企業に行ってはいけないことがわかったんです。大企業は、いわゆる男性上位の理不尽な社会で、女性がものすごく優秀であっても、ガラスの天井が存在する。男女が比較的同レベルか、もしくは女性が有利な職業はどれかと見回した時に、難関資格者がそれに当たると理解したんですね。具体的には医師、弁護士、会計士、あとは国家公務員のⅠ種。4つの中で調べて、最もリスクリターンが良いと思ったのが公認会計士だったので、公認会計士という道を選択しました。

李:
今の若い女性に経済状況をよくするためのアドバイスは。

勝間:
まず、収入に関しては年を取ればとるほど、キャリアがつけばつくほど儲かる仕事を推奨しています。例えば専門職。一方で、若い人しか稼げない仕事は、年を取ったとき不利になります。例えばモデルなど。
加えて、私が口を酸っぱくして言っているのは、収入の8割で暮らすこと。残りの2割をひたすらドルコスト平均法(※一定の金額を定期的に投資すること)で。私は世界株式インデックスを推奨していますが、世界株式インデックスで積み上げていけば大体、10年ぐらいで倍々に増えていくんですね。20代、30代が積み上げていれば、50代、60代ぐらいで、ある意味お金のために働かなくて済むになるんですよ。

李:
勝間さんはいつからお金のために働かなくてもよくなったのですか。

勝間:
40代の半ばから後半ぐらいだと思います。お金のためにどうしてもこの仕事を引き受けるということを、一切しなくて済むようになったので、自分がやりたい事だけをやれば良く、毎日が楽しくなったなと思っています。

女性に家事育児の負担がかかりがちな東アジアで、勝間さんと李さんは、子供を3人も育てながら競争が激しい世界的大企業のリーダーに上り詰め、経済的にも成功している。多忙を極めた二人はどうやって時間管理をして子育てしたのか、対談は後半へと続く。

崔 雋
崔 雋

フジテレビ 報道局国際取材部所属 中国杭州市出身。一橋大学卒業後、フジテレビで新卒採用された最初の外国人留学生に。報道局経済部記者(民間企業・農水・財務・経産…)を経て、国際局やCSR推進室など報道局外の部署も経験。東日本大震災発生時、経産省と原子力安全保安院担当であれだけ福島の原稿を書いた自分が最初に現地に行ったのは被災地支援のCSR活動だった。