岸田首相が連日行っている重要人物との会合。

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その狙いについて、政治部の福井慶仁記者がお伝えする。

岸田政権“危険水域”に

7月にFNNが行った世論調査では、岸田内閣の支持率が41.3%と大きく下がった。一方で、一部新聞社の調査では、支持率が28%と3割を切る結果が出た。

永田町では、支持率が3割を切ると「政権の危険水域」と言われるため「岸田政権は大丈夫か?」という空気が広がっている。

マイナンバー問題については、自民党幹部からも「大きな影響を与えている」と指摘が出ている。特に2024年秋に健康保険証を原則廃止とする政府方針については反発が強く、萩生田政調会長や世耕参院幹事長ら自民党幹部からも延期を求める声が出るほどだった。

27日、岸田首相も「現場の意見を聞いて対応する」と述べ、延期する可能性に含みを持たせるなど、柔軟な対応をとる雰囲気を醸し出している。

“夏の全国行脚”がスタート

岸田首相は持ち前の”聞く力”を発揮するため、現場の声に耳を傾ける「夏の全国行脚」をスタートさせた。これは様々な政策について、国民と直接意見を交換するものだ。

その初回である21日に、こう意気込みを語っている。

岸田首相:
引き続き、こうした政権発足の原点の姿勢、これを大事にしていくためにも、積極的に様々な声や現場の声を聞かせていただこうと。

さらに、この10日間は岸田首相にとって「会合の夏」ということで、重要人物との会合でも“聞く力”を発揮。自民党の重鎮や公明党の山口代表、自民党の有力な支持団体のトップや元会長など、有力者と一通り会談し、基盤固めや支持固めに動いている。

起死回生の鍵は“人事”と“解散”

安定した政権を維持していくために、岸田首相の側近が起死回生策の鍵として挙げているのが「内閣改造・自民党役員人事」と「衆院解散」の2つだ。

まず、一つ目の「人事」。
閣僚や党幹部に新たな顔を起用することで、支持率アップを狙うのはこれまでの政権もやってきたが、リスクもあり簡単ではなかった。

今回の人事で特に注目されているのが、茂木幹事長の処遇だ。
”党の要”である幹事長を交代させれば、フレッシュな印象を打ち出せるとの見方がある。一方で、茂木氏はポスト岸田の有力候補とされていて、2024年秋の自民党総裁選挙で再選を目指す岸田首相としては、敵に回したくない存在だ。

そのため、岸田派内には「(茂木さんは)味方につけてファイティングポーズを取らせない方がいい」と、幹事長続投を推す声もある。

ポイントは「人事での”聞く力”にリスク」

さらに、女性や若手などを抜擢するのも支持率UPの手段だが、以前FNNの取材で岸田首相に、人事の際のポイントを聞いた際には「党内のバランスは大切だ」と語っていた。

そのため、次の人事を巡っても党内の各派閥のトップなどから「入閣待機組の議員を入れろ」と言われ「聞く力」で受け入れる可能性が十分ある。

ただし、岸田首相には人事で苦い経験がある。

2022年8月の内閣改造で、山際前経済再生担当大臣を留任させた。そして、自分の派閥の入閣待機組の葉梨前法務大臣と寺田前総務大臣を入閣させたが、統一教会問題や、失言や政治と金の問題で相次いで辞任した。

この「辞任ドミノ」によって、支持率が急落したトラウマがあるだけに、今回はどこまで派閥の意向にどこまで配慮するか難しい判断になりそうだ。

続いて、二つ目の「衆院の解散総選挙」。
内閣改造が上手くいけば、その勢いで衆院の解散総選挙に打って出て、長期政権へのお墨付きを得たいとみられている。

ただ、そもそも支持率が低い状態で解散すれば敗北し、首相の責任論になりかねないリスクがある。そのため、自民党内でも「当分選挙はできない」といった声が大きい。

また、岸田首相は健康保険証を2024年秋に原則廃止する方針についてこう話した。

岸田首相:
現場の声や意見は大切にしなければいけないと思っている。関係者の声や意見を聞いて対応したい。不安への対応は丁寧に説明を尽くす。

(「イット!」 7月28日放送より)