食事をする際、欠かせないのが「うつわ」だ。
「最近は男性もうつわに興味を持っている人が増えている」と語るのは、一般社団法人テーブルウェアスタイリスト連合会(TWSA)の代表理事・二本柳志津香さん。
今年5月、今の時代のうつわに関する知識を確認するため民間検定、うつわ検定をスタート。公式テキスト『うつわ検定公式テキスト 今の時代のうつわ選び』(主婦の友社)も出版。
この記事の画像(11枚)二本柳さんは受験者の多くを女性と想定していたが、「月2回検定をしていますが、毎回7割ほど男性がいます」と男性の関心度に驚いたようだ。
男女問わず興味を持つことでき、食卓を華やかに彩ることができる「うつわ」。特に奮発して手に入れたものや、お気に入りのものは、長く大切に、丁寧に扱いたい。
そこで、二本柳さんにうつわの取り扱い方、収納方法、集め方を教えてもらった。
ライフステージで変わる「うつわ」
まず、二本柳さんはライフステージやライフスタイルで求める、うつわが変わると話す。
「私が東京に上京した頃にワクワクしながら購入したうつわはまだ家にありますが、40代になろうとする今は簡単に洗えたり、食洗機に対応しているものがいいと考えたりします。
TWSAが主催する講座の受講生で、70代の方は重いガラスのものは持てないから軽いものがいいと話していたりして、ライフスタイルやライフステージで変わるものだと感じています」
また、食事のスタイルも床に座り座卓での食事から、テーブルでの食事が主流に。ライフスタイルが変わることで、食卓に並ぶうつわの種類や枚数などの変化も生まれた。
さらに、食事スタイルもご飯と汁物が必須の和の食事がほとんどだったが、パンやパスタなど多種多様に変化し、それに応じて使ううつわもさまざまになった。
生活も変化し、食事を用意する際は電子レンジを使ったり、食洗機を使って洗うことも増えている。
そんなとき、ふと「この食器は大丈夫か…?」と疑問に思ったこともあるかもしれない。
電子レンジや食洗機はOK?
基本的に「高価なうつわは電子レンジも食洗機もNG」のようだが、具体的にはどんなうつわがダメなのだろうか。
二本柳さんは「陶器や磁器のものでプラチナの線や金線・銀線で囲っているものは、電子レンジに入れると火花が出てしまいます。最近は火花が出ない金・銀の絵付けが開発されていますが、今世の中にある大半のものは火花が出るのでNGです」と指摘する。
またメラミン製のものも電子レンジに入れてはいけなものもあるようだ。
食洗機についても、金線や銀線、プラチナ線が描かれているうつわは、はげてしまう可能性もあるため避けたく、漆器類も入れてはいけない。
最近では食洗機なども使えるものもあるようだが、漆器類の場合は、洗い方も注意が必要だと二本柳さんは言う。
「スポンジの柔らかい部分で丁寧に洗いましょう。今、若い方に和食器ブームがあるようで、漆器類を手にする機会があるかと思います。
本音を言うとスポンジも使ってほしくない。さらに言えば水も。ではどうするのかというと、食べ終わったら布で拭いてキレイにする。特に本格的な漆は注意してください。せっかく買ったのに、はげてたり、かびてしまうこともあります」
大切なうつわ、どう収納すればいい?
お気に入りや大切にしたいうつわは、適切な収納もしておきたい。
「頻度の高いものは目線の高さに。季節ものは下や上の段にしまう」ことを基本として、グラスやうつわの収納方法も教えてもらった。
まずグラスは、上向きに置くこと。食器棚に収納する際、伏せておくことや下に布を敷くことはNGだという。
「日常的に使うのであれば伏せていても問題ないのですが、グラスが曇る原因になります。最適な収納方法としてグラスラックに掛けておくことが一番ですが、難しいこともあると思うので、なるべく伏せずに収納してください。
破損が心配な場合は、グラスラックやすべり止め効果のあるシートの上に並べましょう。ワイングラスに限らず、すべてのガラス製のグラスやマグカップにも言えます」
次にうつわは、なるべく重ねずに収納することがベストだという。
「特に大切な、思い入れのあるうつわは、傷がついてしまうこともあるため、重ねないようにしてください。例えば立てかけるなどして収納するのがベストです。スペースに限界はありますから、大切なうつわだけでもそうしてみてください」
最低限持っておきたい、うつわ5つ
イチから食器をそろえる際、最低限持っておきたいうつわは、5つ。
「お茶碗」「おわん」「ボウル」「小皿」、そして「25センチのミート皿」(肉や魚、つけ合わせを盛るための直径約23~25センチの丸皿)の5つだ。
それぞれの選び方にもコツがあると二本柳さんは言う。
「お茶碗を選ぶ際は、手のサイズで決まるため、実際に両手や片手で持ってみて、重さやサイズ感など、自分の手に合うものを選んでみてください。
おわんは、お味噌汁やスープ、そうめんなども対応できます。木目や手触り、色もさまざまあるので、お気に入りを探してみたり、夫婦で話し合って揃えるのも楽しいと思います。
ボウルは海鮮丼も牛丼もシリアルも、麺類も食べられます。そして25センチサイズのミート皿は、洋食や和食、ワンプレートなどで使えるのでとても万能です」
特に25センチのミート皿は収納面でも利便性が高いようだ。
二本柳さんいわく、日本の食器棚は25センチのミート皿が収まるように設計されていることが多いため、キレイに収納したい場合、このサイズのお皿を揃えてみると良いとのこと。
最後は、失敗しないうつわの選び方を教えてもらった。
ポイントは自宅のインテリアと合うか、だ。
はやり物で集めてはダメ
「うつわ集めでやってほしくないのが、はやり物で揃えることです。はやりのうつわを買いたくなる気持ちもわかります。
うつわを購入する際に、まずは自宅のインテリアと合うかどうか、自問自答してください。
はやりに乗るのではなく、好きなものを購入しましょう。うつわは毎日使うので、自宅の雰囲気と合うことがとても重要なのです」
何か挑戦したいときは、25センチサイズのミート皿で挑戦すると良いという。
「やはり、収納の面から考えても25センチのお皿はスッキリと収まります。食器棚に収まりきらなかったりすると、お気に入りでも不便を感じてしまうことがあると思います。ビビッドなカラーや柄物は25センチから挑戦するのがオススメです」
うつわを揃える際、大切なのが「高いからいい、安いから悪いということはありません。作家の方が作ったうつわでお気に入りのものがあれば、その背景などを調べてみたり、聞いてみたりして楽しんで欲しいですが、一番は持ちやすくて、使いやすいことです。毎日使う上でそこが大切です」と語った。
二本柳志津香
プロップスタイリスト・VMD・商業空間プロデューサー。商品装飾展示技能士。2014年、日本で最初にできた食器のスタイリング資格「デーブルウェアスタイルスト」を育てるTWSA代表。現在、日本全国、世界7カ国に2100人以上の受講生がいる
イラスト=さいとうひさし