今回取材したウクライナにある研究所では、ロシア製の極超音速ミサイルを調査・検証した結果を軍などに提供している。その後、ウクライナ軍はこのミサイルの撃墜に成功しているという。
一方、研究所長はイラン製ドローンに日本製の部品が多く使われていることについて、私たちに「ありがとう」と皮肉を言った後、スマホの画面をかざし証拠を見せてくれた。

ロシア軍の兵器を分析…110年前に設置された秘密の研究所

ウクライナの首都・キーウにある「犯罪科学研究所」。
詳細な場所がわかるとロシア軍の攻撃対象になるため、外観の他、近くの建物が映り込む映像は撮らないという条件付きで取材が許可された。

110年ほど前に設置された「犯罪科学研究所」は、犯罪が起きた際に科学的に調査・検証する研究機関だ。
これまでは国内で起きた事件・事故の調査などを行ってきたが、ロシアの軍事侵攻後は分析の対象が一変した。

犯罪科学研究所に保管されているロシア軍の兵器
犯罪科学研究所に保管されているロシア軍の兵器
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ウクライナの各地から、ロシア軍のミサイルやドローンなどの残骸が研究所に集められ、威力や装甲の堅さ、またどこから発射されたか、などを分析。
その結果から得られた「戦争犯罪の証拠」や「兵器の性能」などの情報を軍や検察などに提供している。

「どんな防空システムでも打ち落とせない」は嘘だと判明

迎撃が難しい極超音速ミサイルとされている、ロシア製の「キンジャール」。
プーチン大統領が「どんな防空システムでも打ち落とせない」と豪語していた「キンジャール」だったが、アメリカなどから提供されたパトリオットミサイルで、ウクライナ軍が5月に初めて迎撃に成功する。
研究所に保管されているキンジャールには、パトリオットミサイルで開けられた大きな穴がはっきりと分かる。

撃ち落とされた際の大きな穴が開いている「キンジャール」
撃ち落とされた際の大きな穴が開いている「キンジャール」

その後、研究所でミサイルを分析した結果、ロシアが主張しているほどの性能がないと判明。軍に詳細なデータを提供した後、キーウを狙った「キンジャール」は全て迎撃できているとのことだ。研究所の所員は、分析が役立ったはずと胸を張る。

ドローンに部品提供している日本に「ありがとう」と言いたい

犯罪科学研究所 オレクサンドル・ルビン所長:
研究所には400人以上の専門家がおり、97の研究分野で分析を行っている。私たちは使用された兵器、それがどこから発射されたのか、その特徴を明らかにする。また可能であれば、誰がこれらの行動を指示したのかを特定する

発射された場所は占領されているウクライナ領か、ロシア領か、もしくはベラルーシ領なのか、またどの戦闘機から発射され、戦闘機のパイロットは誰なのかまで分析できることもあるという。
分析した情報によって戦局を有利に展開できるだけでなく、戦争が終わった後にミサイルなどで多くの市民が亡くなったことを、戦争犯罪として立件できるように証拠を集めることも重要な使命と話す。

犯罪科学研究所 オレクサンドル・ルビン所長
犯罪科学研究所 オレクサンドル・ルビン所長

ルビン所長は研究所の役割などを話した後、「シャヘドを知っているか」と聞いてきた。「シャヘド」とは、ウクライナ取材中、首都・キーウを何度も襲ったイラン製の自爆ドローンで、毎日のように空襲警報が鳴っていたのでもちろん知っていた。
しかし我々、日本の取材班に聞いてきた所長の真意は別の所にあった。

ルビン所長は「シャヘドに多くの日本の部品が使われている」「ありがとうございます」「その証拠を日本国民に見せよう」と言うと、スマホの画面を見せてきた。
そこには、「シャヘド」のエンジンのスパークプラグがあり、はっきりと「JAPAN」の文字が見える。

どのようにして日本製の部品をイランが入手したのかは分からないが、ドローンによりウクライナで多くの人が亡くなり、負傷している現実を考えれば、日本人として謝罪の言葉しか出なかった。
イラン製ドローンの分析の結果、ほかにも日本製の部品が多く使われていることがわかった。

左: イラン製自爆ドローン「シャヘド」 右: 部品に「JAPAN」の刻印
左: イラン製自爆ドローン「シャヘド」 右: 部品に「JAPAN」の刻印

今回の取材中、ウクライナを支持したNATO首脳会議(7月11日~12日)に反発したのか、ロシア軍によるドローン攻撃は首都・キーウに3夜連続で行われた。
ウクライナは今のところ、キーウにおいてはドローンの迎撃にほとんど成功しているが、迎撃できたからといって市民は安心できていない。

迎撃したドローンの残骸で破壊されたキーウ市内のマンション
迎撃したドローンの残骸で破壊されたキーウ市内のマンション

7月13日未明、襲ってきたドローンをウクライナ軍が迎撃に成功。
しかし、その残骸がマンションの25階部分に衝突した。その時の惨状を捉えたのが上の写真だ。
衝突した部屋は内部が見えるほど破壊され、周辺の部屋の窓は爆風などによって全て吹き飛んでいるのが分かる。このマンションでは1人が負傷した。
仮にドローンが迎撃されず、そのまま突っ込んでいたら、どれほどの被害がでていたのか…考えるだけで恐ろしくなる。
街の人に話を聞くと、「戦争がある日常」に慣れたという人も多いものの、こうした恐怖に怯えながら毎日、過ごしている人が多いことを肌で感じた。

犯罪科学研究所には今も毎日、各地からロシア軍が使用した兵器が送られてきていて、分析待ちの兵器は1500ほどあるという。
さらにロシア軍は戦況が厳しくなれば、新たな兵器を投入してくる可能性があり、ロシアの侵攻が終わらない限り、研究所の戦いも終わらない。

(フジテレビ・イスタンブール支局長 加藤崇)

加藤崇
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国際取材部
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