新型コロナが5類に移行してから2カ月が経った。日常が戻りつつあるが、一方で子どもの夏風邪とされる「ヘルパンギーナ」や、「RSウイルス」の感染者が急増しているという。

国立感染症研究所の発表によると、新型コロナが5類に移行する前の1週間(第18週)で全国約3000の小児科定点医療機関が報告した「ヘルパンギーナ」の患者は、1医療機関あたり0.28人だったが、6月26日から7月2日(第26週)の1週間では20倍を超える6.48人に増加。

「RSウイルス」も同じ期間を比べると、0.99人が3倍以上の3.17人に増えている。

5類移行直前からのヘルパンギーナとRSウイルス感染症の推移(編集部で作成)
5類移行直前からのヘルパンギーナとRSウイルス感染症の推移(編集部で作成)
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しかし「ヘルパンギーナ」や「RSウイルス」といっても、あまり聞き馴染みがない人も多いかもしれない。一体どんな症状があるのか?子どもの感染対策に親は何を気をつけたらいいのだろうか。

RSウイルス「2021年には7月に流行のピーク」

まずは東京都保健医療局・感染症対策部の担当者に聞いた。


――そもそもRSウイルス感染症とは何?

RSウイルス感染症は、乳幼児に多く認められる呼吸器感染症で、「RSウイルス」が病原体です。

かつては流行のピークが秋から冬にかけてでしたが、ここ数年は早まる傾向で、2021年には7月に流行のピークが見られました。ほぼすべての人が少なくとも幼少期に一度は感染すると言われています。

症状は軽い風邪様症状から重い肺炎まで様々ですが、生後6カ月未満に初めて感染した場合、特に低出生体重児や心臓や肺に基礎疾患がある場合には、細気管支炎や肺炎等の重症化のリスクが高くなると言われています。頻度は少ないですが重篤な合併症として脳症があります。

また、RSウイルスは生涯にわたって感染を繰り返し、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者においても感染による重症化のリスクがあると言われており、高齢者施設等での集団感染には注意が必要です。


――では、ヘルパンギーナは?

ヘルパンギーナは、主にエンテロウイルス属のウイルスによって引き起こされる感染症で、乳幼児を中心に夏に流行する感染症です。頻度は少ないですが、年長児や成人も発症することがあります。

主な症状は、38度以上の発熱に続き、口の中にできる水ほう(小さな水ぶくれで痛みを伴います)が1週間程度続きます。そのため、食事や水分がとりにくくなり、脱水症状をおこすことがあるため、水分補給を心がけることが大切です。

頻度としては稀ですが、無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することがあるため、頭痛や嘔吐が続いたり症状が長引く場合には注意が必要です。

家族でタオルを使い回すことは避けて

――どんな対策をしたらいい?親にできることは?

RSウイルスもヘルパンギーナも、接触感染、飛沫感染よって感染が拡大します。

基本的な感染対策として、こまめな手洗い、咳やくしゃみをする時には口と鼻をティッシュ等で覆う等の咳エチケットを心掛けていただくことが重要です。集団生活や家庭内で感染を拡大させないためにタオルの共有は避けましょう。

また、症状が治まった後も、患者さんの便の中にはウイルスが残っていますので、トイレの後やおむつ交換の後、食事の前には手洗いを心がけましょう。


――今年、「RSウイルス」と「ヘルパンギーナ」が増加しているのはなぜ?

新型コロナ感染症の流行により、各個人の感染予防意識が高まり、他の感染症の流行抑制につながっていた一方で、感染することにより免疫を獲得する機会が減っていたと思われ、保育園等の集団生活をする場で感染が拡大しているのではないかと推測されます。

しかしながら、正確な原因や背景は今後の調査や分析が待たれます。

ヘルパンギーナ「過去10年を上回る増加傾向」

一方、今年の感染拡大について、統計を発表している国立感染症研究所はどう捉えているのだろうか? また他にはどんな子どもの感染症に気をつけたほうがいいのか?

国立感染症研究所の担当者にも聞いてみた。


――RSウイルス感染症とヘルパンギーナの感染増加をどう捉えている?

RSウイルス感染症とヘルパンギーナは、感染研でも注視しており、毎週還元・情報発信しております。(https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2023.html)

現状の動向とレベルとしましては、RSウイルス感染症は増加傾向で、レベルもこの時期としては高く、2021年とほぼ同等です(2021年は、例年と比べて早期から増加し始め、レベルも大きく例年を上回りました)。ヘルパンギーナは、直近ですと過去10年を上回るレベルで増加傾向です。

RSウイルス感染症とヘルパンギーナは、新型コロナウイルス感染症の流行前もコロナ禍に於いても、夏~秋に報告数が最も多い傾向が見られてきましたので、発生動向の予測は困難ですが、今後、特に動向を監視する時期だと考えております。


――他に気をつけた方がいい子どもの感染症はある?

その他、小児の感染症としましては、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(この時期として例年よりは低いレベルだが高止まり)や、咽頭結膜熱(この時期としてほぼ例年並みのレベルで、直近数週間はまだ高止まり)等も注視しております。

(画像はイメージ)
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大切なのはこまめな手洗いと咳エチケットで、そしてタオルの共有を避けることもポイントだという。保護者の皆さんは感染者が増えている現状を理解し、子どもの感染対策に努めてほしい。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。