天井からこぼれ落ちる雨水に、原型をとどめないほど剥がれた壁。照明器具が外され、むき出しになった配線。

天井の隙間から落ちる雨水
天井の隙間から落ちる雨水
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埼玉県にある久喜中学校は、今、深刻な“老朽化問題”に直面しています。

久喜中学校 木村信之 校長:
市には写真とか図をつけて(修繕の)要望書を提出しているんですけども、大規模な工事になるので、すぐには手がつけられないということなんだと思います。

ボロボロに剥がれた壁紙
ボロボロに剥がれた壁紙

修繕がなかなか進まないのは、学校だけではありません。
市内では今年3月、久喜駅前のロータリーで、老朽化により重さ130kgのコンクリート片が落下する事故も発生しています。

人々の安全にも関わる、公共施設の老朽化問題。一体、久喜市に何が起こっているのでしょうか?

壁の塗装は剥がれひび割れも…修繕がされない中学校

久喜中学校 木村信之 校長:
人を育てる環境としてよくないですよね。命とか健康とか安全っていう面でも。

「めざまし8」の取材に、不安の声を訴えたのは、埼玉県久喜市・久喜中学校の木村信之 校長です。

築35年以上という校舎を案内してもらうと、壁の塗装が剥がれ、所々にひび割れも見られます。

山なりに波打つタイル
山なりに波打つタイル

トイレの壁のタイルは、山のように盛り上がり、木村校長が説明のためにタイルを軽くたたくと、「ミシミシ」と嫌な音を立てます。

さらに、案内してくれた廊下には、雨漏りの水をためる容器が置かれ、雨の日には容器の半分ほどまで雨水がたまることもあるといいます。

雨漏り対策の容器
雨漏り対策の容器

しかも、この容器は校内の至る所に置かれています。

校内の至る所に置かれた容器
校内の至る所に置かれた容器

久喜中学校 木村信之 校長:
「全然慣れますよ」って、子供たちは言ってましたけど。慣れていい環境と、慣れちゃいけない環境があると思います。

学校側は、2020年度から久喜市に対し、修繕の要望を出しているといいますが、市の回答は「多額の予算が必要な大規模改修工事が見込まれるため、すぐには取りかかれないのが現状」というものでした。

市役所や公園など老朽化問題が深刻化

久喜市といえば、「めざまし8」が今年3月にも築約40年の市役所庁舎内の配管が詰まり、ほとんどのトイレが使用不可能になった事態を取材したばかり。

当時、トイレの入り口が巨大なブルーシートで覆われていましたが、4カ月たった今でも状況は変わらず、18カ所中15カ所のトイレが使用不可のままです。

4カ月たった今でもブルーシートがかかったまま
4カ月たった今でもブルーシートがかかったまま

担当者によると、4月から仮設トイレを設置して対応しており、修理の工事が完了するのは2024年3月の予定とのことでした。

老朽化の波は、学校や市役所だけではなく、街の至る所に広がっています。

公園には、老朽化のため使用禁止になった滑り台。ブルーシートで覆われてはいるものの、子供がうっかり中に入ってしまうこともあるといいます。

公園を利用する保護者:
ついうっかり(子供が)友達とふざけて盛り上がって、間違って入っちゃった時とか。ちょっと怖いなって思ったことがありました。

めざまし8の取材に対して、久喜市の財政課は「施設を管理する各担当部局から、維持補修費を増やしてほしいとの要望を受けています。今年度の維持補修費の予算は大幅に増える見込みです」と話しており、今後本格な対策に乗り出す構えです。

減り続ける公共事業費…どうやってインフラを保持すればいいのか?

めざまし8でコメンテーターを務める、ジャーナリストの岩田明子氏は、「公共事業費」が減少していることに触れてこう話します。

ジャーナリスト 岩田明子氏:
全体の公共事業費というのは落ちてきていると思うんですけど、それはやっぱり社会保障費が伸びているからという部分があると思うんですが、やはりこれは安全面というものを考えた予算立てというのは必要だと思うんですね。

ジャーナリスト 岩田明子氏
ジャーナリスト 岩田明子氏

ジャーナリスト 岩田明子氏:
お隣の韓国を見てみると、80年代から90年代までインフラの建築ラッシュが続いていたので、今になって道路の陥没だとか、水道管の破裂だという事案がすごく増えているわけです。それを見てしまうと、大型の目立つものを作る予算があるのならば、事前にこまめにチェックをしたり、耐震のチェックをするなどすれば、予算もある程度相談できますので、こまめなチェックというのはもう少し力を入れた方がいいんじゃないかなと思いますね。

公共事業関係費の推移を見てみると、1998年に14兆8555億円あった公共事業費は、2022年には6兆575億円まで減少しています。

歳出予算を詳しく見ると、総額88兆円だった1998年に比べて、2022年は総額110.3兆円と予算自体は増えているものの、社会保障費などの増額に伴い、公共事業費が減少傾向にあるのです。

予算が限られる中で、どのようにインフラを保持していけばいいのでしょうか?東洋大学の根本祐二教授によると、短期的な対策と、長期的な対策があるといいます。

短期的な対策としては、「新しいインフラはつくらず、現存のインフラ修繕にお金をかける」こと。そして長期的な対策としては、「公共施設の機能の多くを学校に集約させ、修繕するものを減らす」このような視点が必要ではないかといいます。

フジテレビ解説委員 風間晋氏
フジテレビ解説委員 風間晋氏

フジテレビ解説委員 風間晋氏:
東洋大学の根本先生が、「朽ちるインフラ」という本をお書きになって、それが2011年なんですけど。それから12年たって、状況は全然良くならないわけです。悪くなる方だけなんですよ。
お金がないということを言うことは簡単なんです。特に社会保障費が増えているからというと、誰も意見も言えないし、批判もできなくなってしまうと、そういうところがあるんですけども、でも決められない。無為無策、それが続いていると、日々このような残念な状況を目にすることになるわけじゃないですか。そうすると、それって自分が暮らしている社会とか、あるいは行政とか。もう少し大きく言うと、民主主義みたいなものに対する不信感というか、いかにマイナスに働くのかという所も、考えた上で対応していかなくてはいけないと思うんです。

今年3月 久喜駅前のロータリーで老朽化により落下したコンクリート片
今年3月 久喜駅前のロータリーで老朽化により落下したコンクリート片

谷原章介:
雨漏りやトイレが詰まるなどは不便で済みますけども、建物自体がもしかしたら壊れてしまうと言うのは命の危険に関わることなので、その前の段階でなんとか止めてもらいたいものですね。

(めざまし8 7月6日放送)