アフターコロナとなっても好調な売り上げが続く焼き肉業界。競争が激化している福岡の焼き肉業界で、いま新店舗が続々オープンしている。その理由を取材した。

「福岡に住む常連客を作る」

新型コロナウイルスの5類引き下げなど、アフターコロナへ移行し、外食業界が回復基調にある中、高い人気を集めているのが「焼き肉」だ。

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子どもも大人も大好きな焼き肉だが、実は、福岡は「焼き肉激戦区」だということを知っているだろうか?現在、福岡県内では「牛角」や「ワンカルビ」「ウエスト」など焼き肉チェーン店がひしめき合い、その様相はまさに「焼肉戦国時代」とも呼ばれている。

そんな群雄割拠する福岡で、6月8日に新しくのろしを上げた新勢力がある。それは、福岡市・大名にオープンした福岡焼肉「KINTAN」だ。

川崎健太キャスター:
これはすごい。落ち着いていて高級感がありますね。ぱっと見、焼き肉店には見えない

「KINTAN」がある場所は、6月21日に開業した5つ星の高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン福岡」が入る「福岡大名ガーデンシティ」なのだ。

日本一の「サーロイン・ユッケ」
日本一の「サーロイン・ユッケ」

KINTAN・草野聡美店長:
日本一の「サーロイン・ユッケ」でございます

糸島産のネギソースと福岡銘菓「にわかせんぺい」をトッピングしている「サーロイン・ユッケ」の食べ方は、箸で豪快にすくうようにして食べるという。

川崎健太キャスター:
最高ですね。月並みですけど、本当にとろけます

「KINTAN」は、この名物ユッケなどで売り上げを伸ばし、関東で21店舗を展開する。なぜ、初めて福岡に出店したのだろうか?

KINTAN・鳴坂竜一社長:
福岡の大名地区というのは、まず法人がある。企業が多い。それから小売りも非常に盛んで百貨店もある。そういった条件が、(現在)我々が出店しているエリアで成功している店舗で非常に数字的にも近い状況でしたので、「このエリアだったら」と選びました

「焼肉戦国時代」とも呼ばれているこの状況下で、どのように勝ち残ろうと考えているのだろうか?

KINTAN・鳴坂竜一社長:
1回だけじゃなくて、日々のランチで週に1回、5年、10年、通うようなお店を作りたいと思っている。正直、「インバウンド狙って」とか、一切やっていないです

戦略は「地元福岡に住む常連客を作る」ということ。そのためにランチでは、独自のルートで仕入れた上質な牛肉を安くリーズナブルに提供している。また、店舗をオープンした「大名ガーデンシティ」という立地も戦略の1つだ。

KINTAN・鳴坂竜一社長:
今回、「天神ビッグバン」のランドマーク的建物であり、リッツカールトンが入る「大名ガーデンシティ」に入居すれば、まだまだ知名度が少ない福岡においても、分かりやすくお客様に知って頂けるのではないかと

コロナでリスクを覚え他業界へ挑戦

関東の人気店の参入で熾烈(しれつ)を極める焼肉戦国時代に、福岡の有名店が新たに焼き肉業界に進出した。福岡市に6月2日、オープンした「焼肉長介」だ。

NEW ORDER・玉置康雄代表:
うちは、元々うどん居酒屋しているのがベースで、今回、焼き肉屋を出店した。そのうどん居酒屋の名前が「二○加屋(にわかや)長介」なので、それをとって「焼肉長介」という名前にしております

実は、福岡にうどん居酒屋ブームを巻き起こした人気店「二○加屋長介」が手がける店なのだ。なぜ、うどんから焼き肉に、全く違った業態の店を出したのか?

NEW ORDER・玉置康雄代表:
コロナを経験して、僕らも1つの業態に縛られるっていうことに、ある意味リスクを覚えた。だから他業界をしっかりやってみるっていうのも、すごくチャレンジの中で必要じゃないか。単純にやってみたいというのも、もちろんあるんですけど

コロナ禍では、居酒屋の売り上げが、9割以上減った月もあり、アフターコロナでの経営の多角化を狙う中で、焼き肉店をオープンさせたと話す。

焼き肉業界で勝ち残るための3つの戦略

全国の居酒屋の売り上げは、コロナ禍となった2020年から2021年にかけて、それ以前と比べて、よくても6割程度と感染の波の影響をずっと受けてきた。一方で、焼き肉業界は、影響を受けている月はあるものの、2020年11月には、コロナ禍前を上回る売り上げを記録している。

好調の理由は、飲食店の利用回数が減る中、ちょっとのぜいたくとして家族で焼き肉店を利用する人が増えたことが要因とみられている。

そんな背景もあり、どんどん店舗数を増やしている福岡の焼き肉店。そこで勝ち残るため、「焼肉長介」では、これまで居酒屋経営で培ったノウハウを生かす戦略をとっている。その1つ目が、接客の仕方だ。

焼肉長介の店員:
ビールは、まだあるんですよ。いろいろ見ます?

客:
どっちか言うと「エール系」がいい。これは「ラガー系」ですもんね

居酒屋のように客と会話をしながら、できるだけ客の要望に応じる「おもてなし」スタイルなのだ。

そして、2つ目は「メニュー」である。

焼肉長介の店員:
41歳のための「牛焼肉5種盛り」です

客:
41歳のため、とはどういうこと?

焼肉長介の店員:
うちの店長の井上が、41歳でちょっと脂がきつくなって、脂が少ない、胃もたれしない焼き肉の盛り合わせを作りました

従業員の意見を取り入れて生まれたメニューは、赤身のカルビやイチボなど脂身が少ない5種類の盛り合わせなのだ。

そして3つ目は「〆のメニュー」だ。

焼肉長介の店員:
お待たせしました「ユッケジャンうどん」です。焼き肉店のテールスープと「二○加屋長介」のおだしをかけ合わせたこの店のオリジナルです

2つの「長介」がコラボしたスープに自家製麺を合わせた、この店でしか味わえない「ユッケジャンうどん」は、うどん居酒屋が手がけるオンリーワンの商品だ。

NEW ORDER・玉置康雄代表:
「これを食べてくれ」っていうことじゃなくて、お客さんが何をしたいのかに合わせる店っていうのがテーマなので、これをしっかり具現化できる焼き肉屋さんをやりたい

激化する福岡の「焼肉戦国時代」。アフターコロナになり、新たな局面を迎えようとしている。

(テレビ西日本)

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