2025年には高齢者の5人に1人が患うとされる「認知症」、21日まで開かれていた国会で「認知症基本法」が成立し、早期発見や病気への理解を進めるよう求められている。
「ようやくココからスタート」認知症患者への理解どこまで進むか
京都市に住む下坂厚さん。4年前、46歳の時に若年性認知症の診断を受けた。
若年性認知症を患う下坂厚さん:
やはり緩やかではあるんだけれど、進行しているのかな?と。忘れるだけではないのですけど、最近特にネットで検索しようとしても「何を検索しようとしていたのかな…」とすぐに思い出せなかったりとか、そういうのがすごく増えてきましたね

働き盛りでも発症する認知症。医師は、認知症患者について、今後ますます増えると話す。
近畿大学病院 花田一志医師:
人数的には高齢社会が進んでいけばいくほど増えていくでしょうね。2025年になると団塊の世代が高齢になってくるのでだいたい約700万人が認知症というふうな数になるのかなと思いますね

実際、警察庁の発表によると認知症を理由として行方不明になっている人は、10年前と比べ、ほぼ倍増している。
こうした中、国会では先週、認知症に特化した初めての法律が成立した。
認知症の人が希望をもって暮らせるよう、適切で切れ目のない保健医療サービスの提供や、家族への支援など国や自治体の取り組みが定められている。
岸田首相は認知症への対応について「政府を挙げて、そして国を挙げて先送りせず挑戦していくべき重要な課題である」と述べた。
若年性認知症を患う下坂厚さん:
ようやくココからスタートかなと思う。建前論だけで終わってほしくない。より認知症への理解が広まって、認知症の方の暮らしが少しでもいいものになったら…と思う

認知症の根本的な治療法は見つかっていませんが、薬で進行を遅らせられることができる。
若年性認知症を患う下坂厚さん:
やはり早く受診して明らかにする。家族だけで抱え込むのではなくて、色々な方に公表することで新たなつながりができたり、理解していただける機会が増えるので公表することは大事かなと思う

“わずかな兆候”に周りが気づくことが大切
医師は認知症のわずかな兆候に周りの人が気づくことが大事だと指摘する。
近畿大学病院 花田一志医師:
毎年お節を作っているお母さん、お父さんがいらっしゃったとして、そのおせちの種類がいつもより少ないであったりとか、いつも絶対大事に作っていた料理を作っていないだったりとか

また兆候はこんなことにも…
近畿大学病院 花田一志医師:
お財布のなかに小銭がいっぱいたまってきたっていう話、お母さんなんかの財布を見ていると小銭がパンパンになっているという財布を見た時に、札ばっかり出しているんじゃないか…とか思ったりするわけですね
症状が出て計算が苦手になると、お札ばかりで会計をしてしまいお釣りの小銭がたまっていくことがあるそうだ。

最新の技術で期待される「早期発見」
近畿大学病院 花田一志医師:
普段の生活はしっかりされているのだけれど、そういうささいな変化に気付くことによって早めに見つけられることができる
認知症の治療に重要な“早期発見”に向けて新たな技術の開発が進んでいる。
記者リポート:
こちらの手のひらサイズの機械を、このようにおでこに貼るだけで、認知症かどうか調べることができるんです

大阪大学・産業科学研究所が開発した「パッチ式脳波計」。この機械を額に貼り付けると専用のアプリで脳波を調べることができる。
大阪大学 関谷毅教授:
認知症の人とそうじゃない人の脳波は違う。病院ではそれを検査するのですが、それが自宅で簡単にできるので、いち早く認知症の兆候をつかむことができる

病院や専門施設にある大型の脳波計と同等の信号を自宅でも計測することができる。
現在、出てきたデータを病院などで調べてもらう必要がありますが、今後は、利用者が自身で異常を判断できるよう開発が進められている。
大阪大学 関谷毅教授:
薬や治療方法など医学的な研究も必要だけれど、科学でも認知症への対策ができればいいなと開発した。ゆくゆくは体温計や体重計などと同じような感じで、脳のセルフケアを自宅でできるようになればいいなと思う

いつ、誰がなってもおかしくない認知症、どのようにすれば共に支え合う社会が実現するのか。
(関西テレビ「newsランナー」6月21日放送)