奈良市の複数の保育園などで、給食を食べた園児40人以上が食中毒になっていたことが分かった。原因はこの時期に要注意だという「ヒスタミン食中毒」。どうすれば防ぐことができるのか。

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気温や湿度が上がり、食中毒が増える季節。

6月13日、奈良市にある4つの保育園などで、食中毒が起きた。保健所によると昼の給食を食べた43人の園児に、口の周りや背中・腹部などに発疹の症状が出た。幸い、全員症状は軽く、現在は回復しているということだ。

今回、食中毒の原因となったのが、サバから検出された「ヒスタミン」。ヒスタミンとは、サバのほかマグロやサンマなど赤身の魚などで生成される化学物質で、ヒスタミンが多く含まれる食品を食べると、直後にじんましん・頭痛・吐き気などの症状が出ることがある。

13日の給食には「サバの塩焼き」が出ていた。当日に給食業者が生のサバの切り身を納入し、園の中で調理して提供したが、調査の結果、調理する前のサバから症状が出る濃度のヒスタミンが検出されたということだ。

奈良市保健所 保健衛生課 南田修係長:
奈良市でもあまり経験のない食中毒だったと思っています。(給食業者が)室温に長く放置される状況は確認できなかったので、今回どこで(ヒスタミンが)発生したかは特定できなかった

Q.発生源を見つけるのは難しい?

奈良市保健所 保健衛生課 南田修係長:
難しいですね

再発防止のため、保健所は給食業者に対し衛生管理や温度管理を徹底するよう指導した。今回はサバが原因だったが、実は他にも色々な食べ物で「ヒスタミン食中毒」は起こり得る。

「ヒスタミン食中毒」とはどんなものなのか?どうすれば防げるのか?

「ヒスタミン食中毒」とはどのようなものなのか?どうすれば防げるのか?小児科医でアレルギーを専門とする、「おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長」に聞いた。

Q.まず「ヒスタミン食中毒」という病名をあまり聞いたことがなかったのですが、昔からあったのでしょうか?

おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長:
過去10年でも毎年200件ぐらいの報告があります

まずヒスタミン食中毒がどのようなものか、みていく。症状としては、じんましん、頭痛、発熱などだ。多くは6~10時間で回復する。発症しやすいのは2~5歳ぐらいの幼い子供だ。

おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長:
症状について、重症化するケースはほとんどないと言われています。大人について、頻度は少ないとはいえ、成人も発症しますので注意が必要です

ヒスタミンが含まれる食品は、今回の事例にあったサバ、さらにカツオやマグロなど主に赤身魚やその加工品、その他にチーズやヨーグルトなどの発酵食品、そしてナスやホウレンソウなどの野菜、うどんだしパックに含まれていた事例もあったということだ。

おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長:
アレルギーとの大きな違いで、ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが増えた食品を食べた場合にのみ、食中毒が発症します

加熱しても既に作られたヒスタミンは減らない!保存がポイント

ヒスタミンが増える注意すべき季節は、年間を通して注意が要るが、特に気温が高い夏に注意が必要だ。

おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長:
食中毒全般に言えることですが、暖かくなってくるこの時期には特に要注意です。湿度より温度がポイントになると思います

さらにやっかいなのが、加熱してもヒスタミンは減らないとのことだ。

Q.食中毒は加熱である程度防げると思いがちですが、ヒスタミンは加熱してもダメなんですね?

おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長:
加熱してもダメなのは、ヒスタミンが熱に強いからです。加熱することで、新しく産生されなくなりますが、もう既に作られてしまったヒスタミンは加熱しても減りません。保存の仕方がポイントになるかと思います

ヒスタミン食中毒を予防するポイントは、

・魚のエラや内臓を除去
・そして速やかに冷蔵庫へ入れる

Q.エラや内臓といった部位でヒスタミンは増えるのですか?またヒスタミンが増えた魚の見分けはつくのですか?

おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長:
エラや内臓にはヒスタミンを産生する細菌が多く含まれていますので、ヒスタミンが増えやすい場所になってます。ヒスタミンが増えた魚を、 見た目や匂いで判別することは難しいです。見た目以外では、口にした時に舌先にピリッとした感覚とかがあったら要注意だと思います。ちょっとでも味がおかしいと思ったら食べずに処分してほしいと思います。はっきりピリっとするかどうかは、量によりますね。多量に含まれたら分かるかもしれませんが、少量では味でも分からないことはよくあると思います

Q.アレルギーとヒスタミン食中毒の判断は難しいのですか?

おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長:
そうですね、この2つは本当に間違いやすいものです。アレルギーと診断されてしまうと、その食品をもう食べないようになってしまう方もいるので、やはりしっかりとした診断が大事になります

ここで、関西テレビ「newsランナー」視聴者からの質問。

Q.発症したらどう対応すればいい?

おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長:
発症した場合、お薬である程度症状が軽くなりますので、病院を受診する方がいいと思います

Q.ヒスタミン食中毒が出やすい体質はありますか?

おかもと小児科・アレルギー科 岡本光宏院長:
確かに今回の事例でもそうですが、症状が出る人は2割とか3割とかです。逆に7割とかの人は症状が出なかったりもするんですね。体格や体質、いわゆる代謝能力によって、ヒスタミン中毒が出やすい人・出にくい人というのはあると思います

あまり知られていないことが多い「ヒスタミン中毒」だが、特徴を理解して、対策を取っていただきたい。

(関西テレビ「newsランナー」2023年6月16日放送)

関西テレビ
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