長野県下諏訪町の「サンコーパン」のロングセラー商品「ババロアパン」。その名の通り、ババロアをはさんだパンだ。1980年代半ばに大胆かつシンプルな発想で生まれた商品は、“思い出の味”として地域に親しまれている。およそ40年にわたって人気を維持している理由に迫った。
味が変わって好き
下諏訪町の大門通りにある「サンコーパン」。
下諏訪町や岡谷市の学校給食用のパンを手掛けながら、およそ200種類のパンを作っている。
その中でおよそ40年にわたり、不動の人気ナンバーワンとなっているのが「ババロアパン」だ。

諏訪市から:
もう何回も食べてます、おいしいので。モチモチしていておいしいです、ババロアが
岡谷市から:
祖母がよく買ってくれていました。(パンとババロア)別々に食べるのと一緒に食べるので、全然味が変わって、不思議な感じが好きです。(おばあちゃんの思い出の味?)そうですね
思い出の味ともなっているババロアパン。現在、作っているのは2代目の佐々木竜一さん(59)。
サンコーパン 2代目・佐々木竜一さん:
まぎれもなくナンバーワンなので、うちの店では。私が高校生くらいの頃から人気があったパンらしいので、それを絶やしてはいけないというプレッシャーもある反面、やりがいを感じています

“幻のパン”とも
「サンコーパン」の創業は60年ほど前。
別のパン店で働いていた小沢良三さんと、岩﨑光男さんの同僚2人で立ち上げた。
店の名は2人の名前から一文字ずつ取って「三光パン(※現在は、サンコーパン)」とし、岩﨑さんが店主になった。

小沢さんはその後、岩﨑さんの妹と結婚し、2人は義理の兄弟に。二人三脚で営む中、1980年代半ばに「ババロアパン」が誕生する。
考案したのは小沢さん、現在89歳だ。
ババロアパンを考案・小沢良三さん(89):
当時、ケーキなんかも作っていましたからね、ババロアのケーキを作っていましたのでね。ババロアをパンにはさんだら、おいしいんじゃないかと。そういうことでもって始めたんですけどね、これはうまくいったと思いましたね。(すぐ売れた?)売れました、売れました(笑)
大胆かつシンプルな発想で生まれた「ババロアパン」。
店は、1980年から2000年ごろまで近くの下諏訪向陽高校で出張販売もしていて、「ババロアパン」は高校生にも人気だった。
ババロアパンを考案・小沢良三さん(89):
いつも足りないくらいでね。買えない子ども、いっぱいいましたので「幻のパン」だなんて、みんな言っていましたよ

作り方は今も変わらず
その後、店主の岩﨑さんが他界。
小沢さんも10年ほど前に現役を引退した。
2代目として店を受け継いだのが、小沢さんの娘婿の佐々木さんだ。
サンコーパン 2代目・佐々木竜一さん:
地域の人に愛されてますので、それは先代から今までやってくれていた方が頑張ったおかげだと思いますので、(自分も)喜んで買ってもらえるように頑張ります

作り方は今も変わっていない。
まず、パン作り。
円盤型に生地を成形し、その上に薄力粉、マーガリン、砂糖を混ぜてそぼろ状にしたものをまぶす。
こうして焼き上げると表面はカリッと、中はフワッとした食感になり、甘さも出るという。

一方、ババロアの仕込み。
水、イチゴジャム、砂糖を混ぜたものにお湯で溶かしたゼラチン、生クリームを加え加熱しながら、さらにかき混ぜる。
その後、型に流し込み、常温で5~6時間ほど、固まるまで待つ。
冷えて固まったババロアを、焼き上げたパンにはさめば完成。
パンの内側にはマーガリンが塗ってあり、これがパンの食感を守っている。

愛され40年 これからも多くの人に
(記者リポート)
ババロアのプルプルモチモチとした食感とパンが絶妙にマッチしています。ババロアはイチゴ風味で、甘さ控えめでとてもおいしいです
町内から:
もう30年とかそのくらいは食べていると思います。うちの妻も大好きなので、2つ買って。パンもフワフワしているんですけど、ババロアもすごくおいしくてマッチしているのではと
岡谷市から:
若い頃、下諏訪に勤めておったもんで、そんな頃から買って(食べていた)。きょう孫が具合が悪いもんで、「ばあちゃん買ってきて」って言うもんで。(ババロアパンを食べれば治る?)どうかね、治ってくれるといいけどね(笑)
店は2022年8月から営業時間外にも購入できるようにと、パンの自動販売機を設置。「ババロアパン」も、もちろん販売している。

長く愛され、今もファンを増やしている「ババロアパン」。
考案者の小沢さんは、これからも多くの人に味わってもらいたいと話している。
ババロアパンを考案・小沢良三さん(89):
いまだにこうやって長く続けてやっていられるのは、本当にありがたいと思います。売れる期間はいくら長くてもいいからね、ずっとやってもらいたいですね
(長野放送)